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2024~2025 3歳クラシック血統分析(第11週) 2024/08/10~08/11

(有料noteですが、無料で最後まで読めます。内容が気に入った、応援したいという方のみご購入下さい)

今週から中京開催が再開。暑熱対策が施されていないとはいえ夏の愛知は激暑で、タイムは相当良くなることが予想されます。新潟程ではないにせよ、速いタイムを出したからと言って鵜吞みにせず、血統内容、ペース、頭数をきちんと吟味した上で能力を言及してください。

「強い!」という言葉はレース直後に発するものではありません。競馬をまじめに見ている人間なら、どんなに早くてもレースの20分後ぐらいになるまでは出てくるはずがない言葉です。

札幌で行われた2歳オープン、コスモス賞では新馬戦直後にS評価をつけたアスクシュタインが圧勝。これで今年の2歳オープン勝ち馬3頭のうち2頭がこのサイトでのS評価馬となりました。(うち1レースはS、A評価馬の出走なし)

祖母に徹底して血を集めた配合内容で、非常にバランスの優れた馬。メンバーがかなり弱く到底負けるような相手ではなかったものの、それでも7馬身ちぎっての勝利は今後に向けて十分と言えるはず。S評価にふさわしい内容でした。

※注:未勝利戦については気になったレースのみ分析をアップします。

◆8/10 札幌 芝1800m未勝利戦

・テリオスララ(シスキン×シャンドランジュ) 評価B+

新馬戦ではキングスコールのレコード勝ちの2着。前に行った勝ち馬を交わせなかったが、それなりの脚は見せていた。

名牝ハルーワソングの系統で、当然ながら質は高い。となればあとはいかに母の良さを生かすかが鍵となるが、父に豊富なMr. Prospectorの血をまったく持たない母により結果的に母に血を集中させる形となったのがプラス。父を生かさなかったのが芝で勝ち上がれた要因か。

少頭数戦ではあったが2番手以降に抜かせないだけの長い脚を見せることはできたので好内容とは言える。だが切れ味がなさそうな走りという評価は変わらないので、上位に入ってどうなるかは微妙。

上がり1ハロン:11.6秒
残400~200m:11.4秒
ラップ:37.3-34.9(後傾)

シスキン:体力のあるUnbridled's Song系で、やや厳しめのラップを先行し、そのままの勢いでなだれ込むようなレースが得意。ただしもまれる展開ではまったく良さを発揮できない。芝は相手が弱い時限定。

◆8/10 新潟 芝1800m未勝利戦

・クライスレリアーナ(サートゥルナーリア×シユーマ) 評価A

新馬戦の1着がS評価のミリオンローズで、2着が未勝利戦レコード勝ちのエンブロイダリー。当然ながらこの馬もすぐに勝ち上がれるだけの素質を見せていたわけだが、ふさわしい勝ち方を見せてくれた。

血統構成は近親交配に陥りやすい父サートゥルナーリア産駒には珍しくサンデーサイレンスクロスがなく、この父にしてはアウトクロスと言える。これまでの勝ち上がり馬は「一瞬の爆発力」で突き放す走りに特徴があったので、アウトクロスだとフラットラップで押し切るスタイルに変わったのは血統の面白さと言うべきか。母に血を集中させた構成は優秀で、配合の難しい父のモデルケースとなるだろう。

新潟は上がり1ハロンよりも2ハロン目を見るべきだが、そこのタイムは11.2と極端に速くはない。とはいえ楽勝の展開で軽く追っただけなので、これぐらいで十分と言う判断だろう。

上がり1ハロン:11.8秒
残400~200m:11.2秒
ラップ:35.9-34.6(フラット)

サートゥルナーリア:ゴール前でひと頑張りする闘争心は父からきちんと受け継いでいた模様。問題はそれを多頭数戦で発揮できるかにある。こうしたタイプは距離が伸びてマイナスになるケースがあるので、そのあたりの見極めも重要か。ただし今のところの傾向として、爆発力はかなり優秀なものがあるが少頭数の方が向きそうな感じ。

◆8/10 札幌 芝1500m新馬戦(牝)

・クリノメイ(オルフェーヴル×クリノエリザベス) 評価B

先行馬を競り潰して突き抜けた走りはそれなりに見どころがあるものだったが、余裕のある抜け出しの割には最後に脚が止まってしまった感じ。

基本的には後傾ラップで長く脚を使っているように見えるが、オルフェーヴル産駒のスピード不足を札幌の洋芝で補ったような勝ち方。スピードが要求されると厳しくなりそう。

上がり1ハロン:11.7秒
残400~200m:11.5秒
ラップ:36.6-34.8(後傾)

オルフェーヴル:闘争心の高さは現役種牡馬の中でもトップクラスで、前が崩れるレースに持ち込むか、人気のないレースで飛ばしていったときに粘りを見せるのが特徴。ただしコントロールが難しいので安定した走りができない。

◆8/10 新潟 芝1800m新馬戦

・ジーティーマン(モーリス×オーロラエンブレム) 評価B

逃げ馬が粘るところを直線の中段でとらえ、軽い脚で抜け出して2着の追撃を抑えたレースと言えばいい感じにも聞こえるが、要するにそれだけのレース。競り合いもなければ特に苦しむ場面もなく、淡々と走っていたら勝っていたということ。

モーリス産駒、特に母父にディープインパクトが入る馬はこうしたぬるいレースをしなければ勝てないので、タイムがたとえ速くても参考にならない。そのタイムも速くない。

母の血統はいいが父母間を含めると内容は平凡。そもそもモーリス×ディープインパクトの相性は必ずしも良くない。

上がり1ハロン:11.7秒
残400~200m:11.4秒
ラップ:36.9-34.1(後傾)

モーリス:オーストラリアでの成功を考えれば日本での実績がやや物足りないが、使える脚の長さが短いので長い直線を差し切る芸当ができない上に、ごちゃついた競馬を苦手にするのが原因。意外にスムーズに脚を使えるので「前にいる馬が少ないときに」軽く抜け出すのは得意。爆発力には欠ける。

◆8/10 新潟 芝1400m新馬戦

・セナマリン(デクラレーションオブウォー×ユアスイスイ) 評価A

内回りコースとはいえ、新潟にしては珍しく速いラップで流れて後半に脚が残りにくいレース。前が多少崩れたとはいえ、3番手から一瞬の脚で後続を突き放した内容はかなり優秀。いかにもフラットな流れの芝レースを得意とするWar Front系らしい走りだった。

ヒシアマゾンと同じ牝系で母自身の血統構成は優秀。あとは父馬との相性がどうかになるが、父母間の相性はまずまず。タイプ的に距離延長は好まないと思われるので、1400mや馬場の堅いマイル戦でいい走りが出来そう。

上がり1ハロン:11.9秒
残400~200m:11.6秒
ラップ:35.3-35.3(フラット)

デクラレーションオブウォー:近年のDanzig系産駒らしく、芝コースですっと前に行ければ良い粘りを見せる。ただし使える脚がほんの一瞬なので、少しでももまれる展開になると終わり。人気が落ちれば落ちるほど怖さが増す穴馬タイプの種牡馬。

◆8/10 中京 芝1200m新馬戦

・エイシンワンド(ディスクリートキャット×エイシンフェアリー) 評価C

2024/9/2、下記の記事にて追記を行いました。

3着以下を大きく離してるのはいいかもしれないが、1200m戦としてはとんでもないスローペースの上に前に行った2頭だけでレースをしており、今後につながる何かは感じられない。

その分だけ上がり1ハロン、2ハロンタイムともに優秀。今後1200m戦には出ないというならばこれでもいいだろう。血統は平凡で特にコメントもない。芝1400m専用機になるはず。

上がり1ハロン:11.2秒
残400~200m:11.0秒
ラップ:35.7-33.5(超後傾)

ディスクリートキャット:東京1400m芝を非常に得意とするタイプで、一瞬だけ芝でも通用するレベルの鋭い脚を見せられるのが特徴。なので直線が短いオーストラリアでオオバンブルマイが勝てた。ただし日本ではその良さを生かせる重賞がない。1200mも決してベストではない、中途半端な芝馬。

◆8/11 札幌 芝1800m新馬戦

・マテンロウサン(Into Mischief×Miss Panthere) 評価B+

前の2頭が大きく飛ばす展開をとらえ、最後はバテた馬を振り切るような形でゴール。そこまで闘争心をむき出しにするような展開ではないものの、決して単調な馬ではない走りを見せた。

中盤が速かった関係で後半はかなりフラットな流れになり、アメリカ系血統が生きているこの馬には良い流れになった。ベストはこうした極端に上りの速くないレースとなり、どちらかと言えば中距離よりはマイル向きの馬。開幕週などの堅い馬場がいいだろう。

母父ダイワメジャーへの血の集め方は、特に牝系(名牝Boudoir)にかなり見どころがある。全体によくできた構成であり、ペースにさえ恵まれれば上位でもやれる。

上がり1ハロン:12.1秒
残400~200m:12.0秒
ラップ:37.1-35.2(後傾)

Into Mischief:Storm Catの系統だけあってかなり気性は強い。それだけに好調期にはいいレースを見せるし、ペースの速い短距離ダートであれば多頭数もこなす。逆に言えばペースが緩んだ時に弱点を見せるタイプ。もまれてこその馬。

◆8/11 札幌 芝1800m新馬戦

・マスカレードボール(ドゥラメンテ×マスクオフ) 評価B+

新潟にしては珍しく逃げ馬が止まる展開だったとはいえ、後方から長く脚を使って一気に差し切った内容は悪くなかった。タイムもまずまず優秀。

惜しむらくは終始外を回すレースで、馬群に入れてどうなるかが見られなかったこと。ドゥラメンテ産駒であれば特に苦にしないはずなのでそこまでこだわって欲しかったが、さすがに人気を背負っては難しいか。

ただし血統は単なる近親交配馬で、見るところがない。母系が近年よく走っているのでその分のアドバンテージで行けるだろうが、上位に入ると苦しくなる。

上がり1ハロン:11.9秒
残400~200m:11.2秒
ラップ:36.8-34.4(後傾)

ドゥラメンテ:多頭数でもまれる展開に強く、一瞬見せる爆発的な脚もトップクラスという現代の最強種牡馬。闘争心とはまさにこの馬の産駒のためにある言葉。ただし弱点といえば長く脚を使わされる展開で、相手が弱くストレスが少ないレースになると他馬の後塵を拝することがある。だが本番では逆転する。

◆8/11 中京 芝1800m新馬戦

・カムニャック(ブラックタイド×ダンスアミーガ) 評価B+

中京開幕週かつ超スローペースに恵まれたとはいえ、上がり2ハロンが共に11秒を切るタイムは掛け値なしで優秀と言える。

ただし問題はその鋭い脚、能力をレベルの高いレースで発揮できるかどうか。残念ながらブラックタイド産駒では「恵まれた条件でしか」高い能力を発揮できないので、弱いメンバーと戦えているうちはいいが、クラスが上がるごとに人気を裏切ることになるだろう。

キタサンブラックを意識した母父サクラバクシンオーに目が行くが、問題はサンデーサイレンスの2x4、これはさすがにやりすぎ。単なる近親交配馬に陥っている。

上がり1ハロン:10.9秒
残400~200m:10.9秒
ラップ:38.8-33.6(超後傾)

ブラックタイド:ディープインパクトの全兄だが、弟ほどの多頭数適性を持ち合わせておらず、もまれて弱い産駒を出す。キタサンブラックのような名馬も輩出したが、あれも逃げに徹したり大外を回すレースができなければ弱さを見せるタイプ。少頭数、上りの速いレース、もまれないレースじゃないとダメ。基本的にはクラシック向きではない。

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「競馬最強の法則」にて血統理論記事を短期連載しておりました。血統の世界は日々世代を変えてゆくものだけに、常に新しい視点で旧来のやり方にとらわれない発想をお伝えしたいと思います。