集え、相馬の地へ ~相馬野馬追い2012(前)~
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手綱さばきも一際目立つ 主の陣笠 陣羽織
相馬野馬追いとは、福島県の浜通り地方、相馬氏の領内(中村藩)にて脈々と行なわれてきた祭りで、現在の南相馬市近辺にあたります。
あの平将門が軍事訓練の一環として始めたのが起源とも言われていますが、戊辰戦争で敗れた後は一度消滅します。ですが明治23年に内務省(当時)の許可を得て再び行なわれるようになりました。
非常に長い歴史と伝統を持つ勇壮な祭りなのですが、残念ながら「福島県の浜通り地方」ということもあり、2011年の3月11日に発生した東日本大震災、福島第一原発事故以降、多くの人々が住む家すら失うこととなりました。
南相馬市は福島第一原発から25kmしかありません。市の南側は警戒区域に指定され、避難指示が出されることになりました。
2011年以降の相馬野馬追いは、そんな町で行なわれているのです。
美しかった海沿いの町は地震と津波で崩れました。そして今、相馬の空に横たわる放射能という目に見えぬ悪魔に飲み込まれようとしているのです。
※写真はいわき市久之浜町。
ならば私が行くしかない!
放射能? 知るか! 放射能が怖くてレントゲンが撮れるか! セシウムが怖くて深呼吸ができるか! 米や野菜を洗わずに食べるバカがどこにいる! 水を流して火を通せばバッチリ清潔、それが人間の知恵だ!
そんな訳で2012年7月29日、大震災と原発事故の影響で前年は大規模イベントが中止となった『相馬野馬追い』へ行って参りました。
交通機関の混雑を避けるため、前泊していた仙台を朝6時半に出たのですが……それでも亘理駅から相馬駅に向かう代行バスは大混雑、途中から乗ろうとした地元の学生さんなどを積み残していくという最悪の事態に。
旅行者は地元の人間に迷惑をかけてはならないという基本が守れませんでした。申し訳ありません。なお相馬駅から野馬追いの舞台となる原ノ町駅までは鉄道が仮復旧しています。
この特急列車は、本来は上野から仙台までを結ぶもの。運行途中で震災に遭い、前後の線路を津波で流された原ノ町駅から一年以上経っても出られないのです。ここにも一つの悲劇の形がありました。
駅を降りると、街には各家々の家紋を描いた幟、武者像、そして競馬ファンなら慣れっこのボロ(馬糞)の薫り! 南相馬市は馬の祭りの舞台であることを目、そして鼻に感じさせてくれる町なのです。
当日のメインイベントは甲冑競馬、そして神旗争奪戦なのですが、最初は競馬会場まで馬が街中を行列する「騎馬行列」から始まります。
私は後ほど合流する競馬仲間を待つため、地元では有名な解説のプロ(?)の人が陣取る商工会議所テント横に陣取りました。
地元の人々が沢山いる中、地元の人間は私のような見ず知らずの旅行者にすかさず椅子を用意してくれました。来て早々に相馬の人々の優しさを感じ、心から感謝です!
参加する神社別(相馬太田神社、相馬小高神社、相馬中村神社)に行列は行われます。次々と現れる甲冑姿の騎馬武者の姿、外国人なら「本当にここが2012年か!」と驚嘆すること請け合い。
勇壮な男の祭りと思われそうですが、騎馬武者には未婚女性や子供の参加も認められています。中には親子三代で出場という豪な一家も。
小さな女の子でも、小さな馬に乗ってしっかり騎馬武者行列に参加。これこそが相馬の伝統なのでしょう。
そして驚くべきことに、執行委員長を務める南相馬市長、そして総大将を務める相馬市長も自ら馬に乗って行列に参加しているのです!
馬に乗れない人間は市長にすらなれない、そして解説の方曰く「例え総理大臣の頼みがあっても総大将にはさせない!」と。
こんな伝統が息づく祭り、他にありますか?!
ですが私は競馬ファンなので、専ら馬に目が行くのも事実。以前は自宅で馬を飼育していた人が殆どだったようですが(20年以上前は普通だったらしい)、今は乗馬クラブから借りてくるのがメインとのこと。
乗馬訓練を受けているとはいえ、気性の荒いサラブレッドを子供や老人(最年少は4歳、最年長は79歳)が乗りこなしている訳です。しかも拍手喝采やカメラのフラッシュが飛んでくる中でも平気。馬は臆病な動物なのですが……これも伝統のなせる技、ということで。
ちなみにばんえい競馬に出てきそうな重種馬も見受けられましたが、そうした馬には位が高い人(神社の神主など)が乗っていました。なるほど、馬の種別にも位があるってことなんですね。
しばらく行進が続いた後、鳴らされる法螺貝の音。これこそが決戦の地、雲雀ケ原へ騎馬武者達が集合するための合図なのです。
そして馬も客も、真夏の炎天下に祭り本番の舞台へと集まっていくのでした。
いよいよ本番、甲冑競馬・神旗争奪戦の始まりです!
(以下次回に続く)
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「競馬最強の法則」にて血統理論記事を短期連載しておりました。血統の世界は日々世代を変えてゆくものだけに、常に新しい視点で旧来のやり方にとらわれない発想をお伝えしたいと思います。