
2024~2025 3歳クラシック血統分析(第30週) 2024/12/21~12/22、12/28
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有馬記念、ホープフルS週の分をまとめてお送りします。
昨年のホープフルSは有馬記念馬となったレガレイラが制したように、冬の中山は馬場が堅い上に中途半端にコースの半ばが荒れ、インが粘るにもかかわらず外差しがハマる特殊な競馬となることが多いのが特徴です。
今年のホープフルSを制したクロワデュノールはキタサンブラック産駒で、直線入り口で外に出したことでその爆発力を素直に発揮できたのが勝因。ホープフルSは基本的に摩擦の少ないレースと考えていいと思います。

キタサンブラック産駒はもまれるとその爆発力を発揮できないので本来小回り多頭数の中山向きではないはずですが、中山コースは4コーナーに強い角度がついており、外を回すことが不利にならないので摩擦の少ないレースになるのが特徴。コース適性に合った走りと言えるでしょう。
2着は新馬戦勝利時にS評価をつけたジョバンニが入線。2着続きの馬ではありますが多頭数に強いエピファネイア産駒でもあり、G1の厳しい流れに入ったときはクロワデュノールを上回るだけのポテンシャルがあると見ています。
なお30週にわたってお送りした勝ち馬分析は、今週分をもって終了とさせていただきます。今までありがとうございました。
◆12/21 中山 芝1800m新馬戦
・ジョスラン(エピファネイア×ケイティーズハート) 評価A
エフフォーリアの全妹。となれば当然血統が悪かろうはずがない。緻密な配合というよりはHail to Reasonの血を徹底的に生かしたシンプルかつ日本適性の高さに良さがある。海外で通用する配合ではなく、あくまで日本スペシャルと考えるべきか。
中山Aコースは有馬記念ウィークになってもまだ硬さを保っており、スローで流れてしまえばそう簡単に差されることはない。とはいえ単なる展開恵まれでの勝利ではなく、優秀な上がり2ハロンタイムを叩き出した上での逃げ切り。クラスが上がってもまだやれるだろう。
マイル向きの馬ではないし、長い脚がないエピファネイアにとって東京コースもそこまでベストではない。オークス路線向きに見えてオークス向きではないのが厄介なところか。
上がり1ハロン:11.0秒
残400~200m:11.1秒
ラップ:38.8-33.7(超後傾)
エピファネイア:持続する末脚がないために上がりタイムでは他の種牡馬よりも見劣りするが、一瞬で爆発的な脚を使えること、もまれる展開でも脚を使えるメンタルの強さがあるため多頭数の格上げ戦に強い。そのため格下では取りこぼすし、勝ち上がり戦自体は平凡なこともある。

◆12/21 中山 ダ1800m新馬戦
・メリークリスマス(ルヴァンスレーヴ×ローゼクヴァルツ) 評価B
直線でいっぱいになった2着の逃げ馬を一気の末脚で交わして勝利。上がり2ハロン目のタイムを見ればわかるようにかなりバテていたので、そこを差し切るのは難しいことではない。だがこの馬が見せた末脚は上がり1ハロン目のタイム通り悪くないもので、前が止まったから差せた、というのは間違いだろう。
ルヴァンスレーヴ産駒はダート戦に限定すればかなり優秀な闘争心タイプで、相手が強くなった時にこそ良さを発揮するはず。ただこの馬の配合は平凡で、上位を狙うには力不足か。
上がり1ハロン:12.7秒
残400~200m:13.5秒
ラップ:38.6-39.0(フラット)
ルヴァンスレーヴ:父シンボリクリスエスだけにどこまで旺盛な闘争心を伝えられるかがポイント。父自身はネオユニヴァースやティンバーカントリーで多少丸さとスケール感を出した配合だっただけに、そこを生かせば良いダート馬が出る可能性も。

◆12/21 京都 芝2000m未勝利戦
・リンクスティップ(キタサンブラック×ダンスウィズキトゥン) 評価A
京都の芝もさすがに内側がかなり荒れてきて、土ほこりが立つレベルになってきた。だがそれでも外が極端に伸びるレベルには至っていない。しかもこのレースでは後方で落馬があり、そこに有力馬が数頭巻き込まれる形となった。多少の展開恵まれがあったことは否定できない。
とはいえキタサンブラック産駒特有の一瞬の爆発力を生かして直線でちぎった内容は悪くない。タイムは今一つだが、これは芝の影響と考えていいだろう。
BurghclereとCosmahという牝馬の血を共通で持つことから、ディープインパクト(ブラックタイド)と祖母Geisha Girlの相性が非常に良い。この部分が能力の源泉となっており、血統だけならばイクイノックスに次ぐだけのハイレベルにある。レース内容よりも血統を評価してA。
上がり1ハロン:11.8秒
残400~200m:11.6秒
ラップ:36.9-34.8(後傾)
キタサンブラック:外枠、少頭数、固い馬場と、とにかく「楽なレース展開」にならないとその能力を発揮できないのが最大の欠点。メンタルの弱さはどうしようもないレベル。だが長所を発揮できる場面になれば抜群の能力を見せるのも確か。爆発力は現役種牡馬でもトップクラスであり、諸刃の剣。

◆12/21 京都 芝1600m新馬戦
・フランクスピード(Frankel×インピード) 評価B
Sadler's Wellsとデインヒルの両方を強度の近親交配で入れたエグい配合馬で、ヨーロッパでは当たり前の手法とはいえ日本では違和感を覚える配合。
近親交配によるリスクは遺伝病の発現などがあるが、馬の競走能力を高める効果はないというのがすでに研究で分かっている。だが精神的にもろい馬を出したり、受胎しにくくするなどのリスクはまだ研究で判明していない。とはいえ経験則レベルではあるが「良くない」とされている以上、研究による成果が出るまでは避けるべき配合だろう。
最期に見せた瞬発力には魅力があるが、ラップが比較的フラットで、しかも先行した馬が最後は脚をなくしかけていた。今回の走りだけを見て大物扱いするのは微妙。
上がり1ハロン:11.9秒
残400~200m:11.6秒
ラップ:36.1-35.4(フラット)
Frankel:いかにもヨーロッパ的な配合で多頭数でもまれるレースがどうかと感じていたが、適切な配合をすれば多頭数でも戦える。ただしGalileo系らしく、最初からペースが速くなると弱さを出す。日本のスプリントにはあまり向かないタイプで、1400m以上でこその馬。

◆12/21 京都 ダ1400m新馬戦
・トウタツ(ダノンレジェンド×ショウナンダズル) 評価B
競馬においては馬の能力で勝つこともあるが、騎手の腕で勝つレースも多い。今回のレースはまさに「騎手の腕の差」で勝ったものと言えるだろう。ダート1400m戦なのに悠長に4コーナーで持ったまま構えていて仕掛けるタイミングを間違えた馬が続出する中、幸英明騎手だけは適切なタイミングで早めのスパートをかけた。
だが勝因はそれだけであり、馬の能力には起因しない。Blushing GroomとStorm Catを上手く使った配合は妙味があるが。
上がり1ハロン:13.3秒
残400~200m:12.8秒
ラップ:36.5-38.0(前傾)
ダノンレジェンド:異系の父らしく勝負弱い感じが漂うので、上位戦線に入ると単純なスピードで押し切れる産駒以外は苦しくなる。人気のない混戦での一発を狙うのがベストの種牡馬。下級条件では安定する。

◆12/22 中山 芝2000m未勝利戦
・ロジャリーマイン(エピファネイア×マリアライト) 評価B+
4コーナーでトラブルが発生。2着に入ったカーミングライツが外に寄れてイフルジャンスを突き飛ばしたが、勢いから言ってアクシデントがなければイフルジャンスが勝っていたレースであろう。
大外枠18番を引いたうえで、しかも外を回しながら差し切った内容は評価しないとならないか。ただし一瞬で相手を置き去りにするほどの脚ではなく騎手が懸命に追っての抜け出しだったが、ディープインパクトが母父であることから少し父の影響が弱まっているかもしれない。
母がG1馬マリアライトで兄がオーソクレースと字面としては超良血馬で、しかも父母間の配合も相似性がある。この母にはエピファネイアがベストだろう。
上がり1ハロン:12.2秒
残400~200m:11.9秒
ラップ:36.6-35.8(後傾)
エピファネイア:前述

◆12/22 中山 ダ1200m新馬戦
・シュヴァルボヌール(Ulysees×オアシスミラージュ) 評価A
父Ulyseesというのにまず驚き。Galileo系は日本ではスピード不足に陥りやすい系統とはいえ、まさかダート短距離で強い勝ち方をする馬を出すのは想定外にもほどがあった。
楽に持ったまま進出し、先行馬を潰しての大差勝ちなので能力にはまったく問題はない。果たして本当にダート馬なのか、能力の高さだけで押し切ったのかも分からない。次走、できれば1800mぐらいで見てみないと何も判断できない。こういうパターンは珍しい。
SpecialやMiesqueなどの名牝をクロスさせた配合内容は迫力十分で、これだけの馬ならどう考えても芝のマイラーにはなるはず。ダート戦以外で見たい。強いて言えばスプリンターズS勝ちのルガルと配合の類似性がある(牝祖Miesqueのクロスなど)。このクロスが短距離にシフトさせるという可能性も考えたい。
上がり1ハロン:12.7秒
残400~200m:12.8秒
ラップ:35.3-37.9(前傾)
Ulysees:Galileo×Kingmanboという配合からも、集団戦からの直線勝負に強いヨーロピアンタイプという判断以外はできない。良血の集合体なので強いクロスができやすく、産駒はおそらく少し短めの距離適性にシフトするはず。

◆12/22 中山 芝1600m新馬戦
・ディオデルマーレ(ロードカナロア×オアシスミラージュ) 評価B+
有馬記念仕様で硬めにインを仕上げた馬場ということもあり、騎手は一切外に未練を残さずにインに固執する競馬。その中を馬群を縫ってギリギリで差し切った渋いレース展開。ただし「馬群を突き抜ける根性」というのは基本的に競馬において評価対象にはならない。距離ロスの少なさに恵まれたと評するのが正解。
だが直線に入ってからもラップタイムが速くなり続ける中を差し切っているので、このタイプは東京コースに変わっても通用する。ロードカナロア産駒で母父の気性をダイレクトに受け継ぐので、Invincible Spiritのような気性が強めの種牡馬は適しているだろう。
KingmamboとDaylamiの相性の良さを使って緻密に構築したレベルの高い血統構成。ただ母の血が少し弱い感じ。
上がり1ハロン:11.6秒
残400~200m:11.7秒
ラップ:36.8-35.2(後傾)
ロードカナロア:距離を問わず強い馬を出している優秀な種牡馬だが、母父の影響をかなり受けるタイプ。闘争心はそれなりにあるし多頭数適性もあるのでG1路線でも通用するが、ドゥラメンテやエピファネイアと比較するとやや本番に弱い感じがある。ただしそれはトップクラスでの話。

◆12/22 京都 ダ1800m新馬戦
・タイセイドラード(American Pharoah×ミスベジル) 評価B+
フラットラップのマイペースで楽に飛ばして直線前でほぼ勝負を決めた。こうしたもまれない走りで圧倒的なパフォーマンスを見せるのが「超大味な」American Pharoah産駒の特徴。勝ち方の強さに騙されがちだが、強いから圧勝するのではなく「脆いから圧勝するしかない」と覚えておくべき。評価は次走以降で行うのが良い。
2着馬の方が終始大外の大外を回し続けて追い込んできたので見ている分には面白かった。American Pharoahとブリックスアンドモルタルのメンタル面での類似性がはっきりと分かる。どちらも「勝ち方と能力が比例しない」タイプだ。
血統は一流。特に母内Quiet Americanが父に必要な血をすべて持っており、ここにすべてのリソースを集中することが出来るのが最大の長所。
上がり1ハロン:12.6秒
残400~200m:12.4秒
ラップ:38.0-38.1(フラット)
American Pharoah:日本でもカフェファラオなどを出したように優秀な種牡馬であるが、その特徴として「自分勝手なレースをして、少しでも嫌気がさすとレースを投げる」というのがある。広いコースなら多頭数をこなすが、それ以外では少頭数の方がいいタイプ。よって格上げで脆さを見せることがある。

◆12/22 京都 芝1800m新馬戦
・マトラコーニッシュ(サートゥルナーリア×オアシスミラージュ) 評価B+
京都コースはさすがにもうインが限界で、大外を振り回して最後方からのレースでも届くようになってきた。この馬の勝ち方も「先週までなら届かないけど、今日は届くかも」と思う位置から一気に突き抜けたので、芝状態のアシストがあったのは間違いないだろう。
サートゥルナーリア産駒は東京コースなどで一瞬の爆発力で突き放すタイプで、京都コースのように長く脚を使う、特に外回りではあまりアドがないタイプ。今回の勝利は馬場の影響と考えておく方が無難かもしれない。
例によってサンデーサイレンスの強いインクロスを中心に、母父ジャングルポケットのNureyevやHornbeamも使いこなした少し近親度が高い配合。距離適性としては短めにシフトするし、やや早熟傾向も見せそう。配合の指針自体は良い。
上がり1ハロン:11.5秒
残400~200m:11.6秒
ラップ:38.0-34.0(超後傾)
サートゥルナーリア:ゴール前でひと頑張りする闘争心は父からきちんと受け継いでいた模様。問題はそれを多頭数戦で発揮できるかにある。こうしたタイプは距離が伸びてマイナスになるケースがあるので、そのあたりの見極めも重要か。ただし今のところの傾向として、爆発力はかなり優秀なものがあるが少頭数の方が向きそうな感じ。

◆12/28 中山 芝2000m新馬戦
・ブラックジェダイト(キタサンブラック×ウェルアウェイ) 評価B
中山の芝コースはインベタ部分こそかなり硬めに仕上がっているものの、その外がかなり荒れ気味。ラチ沿いぴったりを取れないなら外に出した方がはるかに伸びる状態で、ここは佐々木騎手がうまく対応した騎乗が光った。
硬い芝における一瞬の爆発力はキタサンブラック産駒の真骨頂で、ある意味サクラバクシンオー的とさえ言える。もまれる展開ではまったく良さを出せないものの、今日のように前がフリーであれば素晴らしい能力を発揮できる。ただし「前がフリー」なんて条件が上位クラスでそうそうあるわけではないが。
母がドイツ系血統で配合が実にシンプル。シンプル過ぎて強調点が分からないレベル。ソールオリエンスをさらに薄くしたような感じ。実績ある牝系ではあるので、そこに期待するほかない。要するに血統は良くない。
上がり1ハロン:11.8秒
残400~200m:11.6秒
ラップ:37.9-35.3(後傾)
キタサンブラック:前述。

◆12/28 中山 ダ1200m新馬戦
・ドルンレースツェン(ホッコータルマエ×メイショウアレーナ) 評価B
前後半の差が激しい、実にダート1200mらしいレース。というかこうじゃないと困る。
後方から二弾、三弾と追い込み馬が迫ってくる激しいレースとなったが、終わってみれば前にいた2頭が3着以内に残るレースだった。ダート短距離ではこうした「行ききった馬がバテながらも残る」競馬となるので、脚をためて突っ込むようなタイプはどうしても不利。
ホッコータルマエ産駒は地方での成績が良くそれなりに優秀なダート種牡馬だが、脚をためても伸びないという明確な弱点があり、しかも短距離ではスピードが不足するので上位では通用しなくなる。本来不向きな1200mで勝てたのは大きいが、この後はむしろ1400m以上にシフトすると思われる。
上がり1ハロン:13.0秒
残400~200m:13.3秒
ラップ:36.0-38.1(前傾)
ホッコータルマエ:決してもまれ弱いという訳ではないが、脚をためて爆発させるタイプではなく、とにかく前に行ききってようやく良さが出るのが特徴。芝もダートも前にさえ行ければどちらも苦にしないが、どちらも中途半端である一定ラインで止まってしまう。

◆12/28 京都 芝2000m新馬戦
・ムーンライトラガー(オルフェーヴル×オープンウォーター) 評価B
京都はDコース開催となっているが、それでも土煙がもうもうと上がる限界に近い馬場状態。こうなると大外振り回しでも通用するようになるし、そうした「大味で雑な競馬」を得意とする血統にとってはうってつけの舞台。
オルフェーヴル産駒は父の現役時代同様に気性の激しさがあり、まともに抑える正統派の競馬では良さを発揮できない。そのため逃げや追い込みなどの極端な競馬に戦績が偏る傾向がある。まさに今回の馬場にうってつけの馬だった。逆に言えばまともな馬場では不安。タイムはそれなりだが、あくまで楽に走っての結果。
母にアメリカ系の血を配するのがオルフェーヴル産駒の成功パターンではあるが、この馬は父母の相性が良いとは言えない。凡庸な血統。
上がり1ハロン:11.9秒
残400~200m:11.8秒
ラップ:37.8-35.0(後傾)
オルフェーヴル:闘争心の高さは現役種牡馬の中でもトップクラスで、前が崩れるレースに持ち込むか、人気のないレースで飛ばしていったときに粘りを見せるのが特徴。ただしコントロールが難しいので安定した走りができない。

それでは、今までご覧いただきありがとうございました。
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「競馬最強の法則」にて血統理論記事を短期連載しておりました。血統の世界は日々世代を変えてゆくものだけに、常に新しい視点で旧来のやり方にとらわれない発想をお伝えしたいと思います。