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2024~2025 3歳クラシック血統分析(第12週) 2024/08/17~08/18

(有料noteですが、無料で最後まで読めます。内容が気に入った、応援したいという方のみご購入下さい)

台風が接近したものの、競馬にはほとんど影響がないままに日本を離れました。馬場状態が大幅に悪化することもなかったので、今まで通りにタイムが速いレースが続いています。

馬場が固いレースではラップが均一(フラット)になりやすく、普段のレースとは異なる馬が勝つケースが見られます。例えばCBC賞では1400m向けのメンタルの弱い馬がワンツー、札幌記念でも後半のラップが均一になったために鋭い差し脚のないモーリス産駒が勝利するなど、「特殊なレース」が見られています。

こうしたレースは秋競馬(主にG1)とはつながらないので、ラップを見ながら「これは今後につながるか」を考えるのは重要だと思います。

クローバー賞で敗れたS評価馬ミリオンローズも、終始11秒後半のラップが続く変則的な流れに脚を殺されていました。例外と考えていいと思います。

◆8/17 札幌 芝1800m未勝利戦

・ショウナンサムデイ(サートゥルナーリア×ショウナンパンドラ) 評価A

父サートゥルナーリアはどうしても産駒が近親交配に偏りやすい特徴を持つが、この馬はサンデーサイレンスのインクロスこそ持つものの、他に余計なインクロスを持たないために父にしてはシンプルな仕上がりとなった。

ジャパンカップ勝ち馬の母の血統が優れているのは当然として、この馬は母を生かすとまでは言えないが、決して邪魔をしない配合に留めたのが長所。

父の産駒特有の「少頭数における爆発力」は見られなかったが、珍しく長くいい脚を使って勝ったのは後々プラスになるだろう。上がり2ハロンタイムも優秀。

上がり1ハロン:11.2秒
残400~200m:11.3秒
ラップ:37.9-34.5(後傾)

サートゥルナーリア:ゴール前でひと頑張りする闘争心は父からきちんと受け継いでいた模様。問題はそれを多頭数戦で発揮できるかにある。こうしたタイプは距離が伸びてマイナスになるケースがあるので、そのあたりの見極めも重要か。ただし今のところの傾向として、爆発力はかなり優秀なものがあるが少頭数の方が向きそうな感じ。

◆8/17 札幌 芝1500m新馬戦

・メリディアンスター(モズアスコット×ニシノケイト) 評価B+

父モズアスコットは芝ダートともにマイル戦を制したように、決してスプリントに特化した種牡馬ではない。だが種牡馬となるとFrankelの強い爆発力よりもアメリカ系のダート質の走りが強く出るようで、闘争心はそれなりにありそうだが一本調子な走りになっている。

札幌1500mの2歳レコードを出したということだが、レースの質がフラットで変化に乏しく、ラストも大きくタイムを落としている。ペースに助けられて出したタイムと言う感じであまり価値の高いものではない。スプリントやダートの方が良さを発揮する馬。

血統内容はまずまずと言ったところ。Frankelとゴールドアリュールの相性の良さを生かした配合。

上がり1ハロン:12.1秒
残400~200m:11.4秒
ラップ:35.8-35.1(フラット)

モズアスコット:Frankelのイメージとして鋭い脚を使うマイラーというのがあるだろうが、Galileo系の本質であるスケール感(体力)で走る馬ということは変わらない。モズアスコット自身はほぼヘネシー系と考えてよく、気性の強さは備えているだろう。

◆8/17 新潟 芝1200m新馬戦

・エコロジーク(Twirling Candy×Lily Pod) 評価A+

新潟の内回り短距離戦ではあったが、フラットなラップを先行して後続を潰して突き放す強い競馬。一介のスプリンターではないという内容だった。

アメリカ系の血で固めた血統構成は緻密かつ濃厚で大変に出来がいいが、特に母父Bernsteinへの血の集中は見事で、十分にAクラスの配合内容を示している。

ただしダートや硬い芝の短距離に特化した血統構成でもあるので、マイルまで行くと相当馬場状態に恵まれないと厳しいか。1,400mぐらいまではこなす力はあるはず。

上がり1ハロン:11.5秒
残400~200m:11.1秒
ラップ:34.3-34.6(フラット)

Twirling Candy:Fappianoの系統は強い闘争心を示していたが、世代交代が速いこともあり徐々にその強い心を失いつつあるのは気になる。現状ではフラットラップでメリハリのないレースをしたときにベストの能力を発揮するタイプに落ち着いていそう。ベストは1400mとなりがちなタイプ。

◆8/17 新潟 ダ1800m新馬戦

・ジャナドリア(ゴールドドリーム×ターシャズスター) 評価B

父ゴールドドリームは複雑なインクロスを多用した緻密な構成が売りの馬だったが、それだけに下手にSpecialなどの血を生かしてしまうと近親交配の弊害を受けやすい馬でもある。そういう意味ではFappianoやRelaunchを組み合わせてコントレイルっぽい配合を狙うのは大正解と言えるだろう。

血統構成はまさにコントレイルのような感じで、母が能力の源泉。父母間に強い特徴こそないが、安定した及第点の血統と言える。

ただしレース内容そのものは割と平凡で、相手が強くなると脆さを出しそう。

上がり1ハロン:12.7秒
残400~200m:12.4秒
ラップ:38.4-38.2(フラット)

ゴールドドリーム:ゴールドアリュールはサンデーサイレンス×Nureyevらしい強い気性を受けてダートでも良さを発揮できた馬だが、ゴールドドリーム自身はフレンチデピュティのまったりしたスケールを受け、どちらかと言えば広いコースのぬるいレースで良さを発揮した。その特徴が産駒にも受け継がれる感じ。

◆8/17 中京 芝1400m新馬戦

・ラヴェンデル(キンシャサノキセキ×ターシャズスター) 評価B+

父キンシャサノキセキはサンデーサイレンス系でもスプリントに特化した系統だが、その母ケルトシャーンの持つ強い気性を受けてのもの。

ただしこの馬は母ターシャズスターのGalileoやMachiavellianのスケール感を強く受けた感じで、おおらかな気性であまり闘争心を持たないタイプに仕上がっている。フラットなラップの1400mで好走するのがその証拠となる。

父の産駒らしくトライアルまでは頑張れるだろうが、その先がない感じ。ただし父母相似の構成を持つ母が優秀なので、頭数が少ないレースであれば一発の可能性も秘めている。

上がり1ハロン:11.7秒
残400~200m:11.7秒
ラップ:35.5-34.7(フラット)

キンシャサノキセキ:フジキセキ自身も気性の強さとコントロールの難しさを持つ種牡馬だったが、さらに気性を強めたのがキンシャサノキセキ。平坦コースや少頭数なら馬群を突き抜けるぐらいの走りも出来るが、トップクラスでは限界を見せるタイプ。相手が強くないレースなら重賞でも頑張れる。

◆8/17 中京 ダ1800m新馬戦

・クァンタムウェーブ(ナダル×クァンタムミス) 評価A

ナダル産駒はデビュー当初から強い闘争心を持つ種牡馬として高く評価してきたが、この馬も4コーナーを回り切ったところで爆発的な脚を繰り出して相手を突き放す強いレースを見せてくれた。長く脚を使えるタイプではないだろうが、一発の脚で相手を置き去りにできるのは重賞で求められるポテンシャル。

母がアウトクロスの血統構成ということもありシンプルなクロス状態になっているが、必要最低限の血はきちんと抑えているためにバランスの良い構成となった。特に母父Smoke Glackenへの血の集中具合は素晴らしい。広いコースのダートオープンで見たい。

上がり1ハロン:12.1秒
残400~200m:12.6秒
ラップ:38.6-37.4(後傾)

ナダル:今のところ短距離戦に実績が偏るが、先行だけでなく中断から差す競馬もできているように、Kris S.系の闘争心は強く受け継いでいる模様。あとは多頭数での気性のコントロールがどうかだが、ダート向き種牡馬ということもあり先行さえできれば我慢が効くタイプ。

◆8/18 新潟 芝1800m未勝利戦

・シルバーレイン(エピファネイア×ノームコア) 評価A

最終コーナーを立ち上がってもだらだらした展開でそのまま流れこむレースが多い新潟だが、一頭だけ目の覚めるような末脚を発揮して差し切り、しかも大差をつけたこの馬が弱いはずがない。

父エピファネイアの特徴である瞬間的な爆発力(ただし長く脚を使うことに関しては劣る)というより、むしろ母父であるハービンジャーが強く出たような脚の使い方だった。父の良さと母父の良さの両方が発揮できればそれに越したことはないが、おそらくは母を強く出したタイプだろう。エピファネイア産駒らしさはやや薄い。

配合はそのハービンジャーがほどよくサンデーサイレンスを薄めており、結果的にはプラスとなる配合。青葉賞のようなレースで面白くなる馬、プラダリアに似ている。

上がり1ハロン:11.4秒
残400~200m:11.2秒
ラップ:37.5-33.2(超後傾)

エピファネイア:持続する末脚がないために上がりタイムでは他の種牡馬よりも見劣りするが、一瞬で爆発的な脚を使えること、もまれる展開でも脚を使えるメンタルの強さがあるため多頭数の格上げ戦に強い。そのため格下では取りこぼすし、勝ち上がり戦自体は平凡なこともある。

◆8/18 札幌 芝2000m新馬戦

・ショウナンバルドル(ブリックスアンドモルタル×アウェイク) 評価B+

レース映像を見た後で血統を調べて大変に驚いた。私が知る限りブリックスアンドモルタル産駒がこのように「馬群の中でもまれながらレースをし、そこから抜け出して後続を抑えて粘る走りをしたのは見たことがない。

この父の産駒は母型の血統が強調されやすく、父母間では父方がスカスカになっていることがほとんど。そのせいもあって配合としては評価できない馬が多かったが、この馬は祖母の血が父とうまく呼応することによって、十分に能力を引き出すことができている。

これまでの父の産駒とは違うタイプ。レースそのものは平凡だったが、評価はしたい。

上がり1ハロン:12.5秒
残400~200m:12.1秒
ラップ:37.8-36.3(後傾)

ブリックスアンドモルタル:産駒に与えるスピードセンスは非常に優秀だが、とにかくもまれ弱い。広いコースで少頭数なら抜群の能力を発揮できるので非常に強く見せるが、ちょっとでも気に入らない条件になるとすぐレースを投げ出す。よほど恵まれないと重賞では常に人気を裏切るタイプ。

◆8/18 新潟 芝1800m新馬戦

・パッションリッチ(ドゥラメンテ×セーヌコローナ) 評価B+

ドゥラメンテ産駒と言えば猛烈な闘争心と爆発力で長い直線を駆け抜けるイメージがあるが、この馬は「本当にドゥラメンテ産駒?」というまったりした流れを先行して押し切るレースを見せた。本来ならばこれはマイナスと言ってもいい。

ただしタイトルホルダーの初期はこんな感じで、これはこれで一つのパターンを示しているか。

血統構成は父内のHaloに血を集めた形で、それなりに優秀。ただし距離が伸びて良くなる感じもしない。

上がり1ハロン:11.6秒
残400~200m:11.3秒
ラップ:37.5-34.5(後傾)

ドゥラメンテ:多頭数でもまれる展開に強く、一瞬見せる爆発的な脚もトップクラスという現代の最強種牡馬。闘争心とはまさにこの馬の産駒のためにある言葉。ただし弱点といえば長く脚を使わされる展開で、相手が弱くストレスが少ないレースになると他馬の後塵を拝することがある。だが本番では逆転する。

◆8/18 中京 芝2000m未勝利戦

・サラコスティ(エピファネイア×サロニカ) 評価A

相手が圧倒的に弱くなった関係で、普通に走っているだけで逃げる形になってしまったケース。こういうレースは能力の判定が難しい。

ただし上がり2ハロン目で出したタイムはなかなかのもので、その場面の映像を見てもぱっと前に進んでいることが分かる。エピファネイア産駒に必要な爆発力は兼ね備えていると判断可能。

近親のサラキアやサリオスと違い、この馬はシーザリオと母サロニカの相性の良さを中心に組み立てたタイプ。今までとかなり性質が異なるが、この母らしい良い産駒に仕上がっている。

上がり1ハロン:11.6秒
残400~200m:11.0秒
ラップ:37.0-34.0(後傾)

エピファネイア:前述。

◆8/18 中京 芝1600m新馬戦(牝)

・ビップデイジー(サトノダイヤモンド×ローズベリル) 評価B

前半が速くもなく、後半に加速するわけでもないラップを「フラットラップ」と私は呼称してるが、このようなレースの特徴として「メンタルがもろい馬が強い」ことがある。

厳しい流れを叩きあって先行するのも、馬群から鋭い一瞬の脚で抜け出すのも、いずれも「前に出よう」というメンタルの強さがあってこそ。精神的な強さが求められないレースになれば、精神力が不足した種牡馬の子でも勝てるようになる。

今回のレースはまさにその典型。豪快な差し脚に見えるが完全に前崩れ戦。見た目の脚で評価はできない。配合としては父母間は悪くないが、母の血が弱い。

上がり1ハロン:12.0秒
残400~200m:12.0秒
ラップ:35.8-35.0(フラット)

サトノダイヤモンド:重賞でも格負けしないだけの体力を伝えられるので決して悪い種牡馬ではないが、とにかくもまれるレースに弱い。広いコースや少頭数では無類の強さを見せるが、それが格上げ戦になると発揮できない。

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「競馬最強の法則」にて血統理論記事を短期連載しておりました。血統の世界は日々世代を変えてゆくものだけに、常に新しい視点で旧来のやり方にとらわれない発想をお伝えしたいと思います。