見出し画像

過去10年のデータから種牡馬を見る(ダート競馬編)

これまでは2回にわたって芝競馬(1400m以上)における「種牡馬別ラップ適性」を取り上げてきたが、今回はダート競馬を分析してみます。

ただし芝競馬と違ってダートではディープインパクト(芝)のような明確な基準馬がいないのが難点。芝でのディープインパクト産駒は他の馬の3倍の勝ち数を誇っていたものの、ダートではそこまで突出した成績の馬がいないのが実情。

よって今回はダート勝ち数上位3頭の平均を「判断基準」とします。その3頭はキングカメハメハ、ゴールドアリュール、ヘニーヒューズです。便宜上KK(キングカメハメハ)値という名前にしました。

2015~2025 ダート1300m以上の競馬におけるラップタイム推移(勝ち数21位まで)

平均で取った以上は上位3頭のKK値は(偏差値)50となるべきですが、意外に大きく差が付きました。

<キングカメハメハ>
序盤⇒中盤KK値:50 
(KK値50超はダート基準馬よりタイムが速くなっている)

中盤⇒終盤KK値:51.40 

距離KK値:56.07
(KK値50超はダート基準馬より平均勝ち距離が長い)

平均的なダート馬と比べて上がりタイムが速い特徴がありますが、それ以上に驚異的なのが距離適性。この後でも述べますが、ダート戦においては芝適性のある種牡馬の産駒がより長い距離適性を示す傾向にあります

<ゴールドアリュール>
序盤⇒中盤KK値:48.40 
(KK値50未満はダート基準馬よりタイムが遅くなっている)

中盤⇒終盤KK値:50.28 

距離KK値:49.69
(KK値50未満はダート基準馬より平均勝ち距離が短い)

ほぼ平均的な数値を出している中、キングカメハメハよりは上がり勝負への適性が低く、また距離適性も中庸になっていることがわかります。

<ヘニーヒューズ>
序盤⇒中盤KK値:46.83 

中盤⇒終盤KK値:48.32 

距離KK値:44.24

序盤から中盤にかけて緩む展開が得意というより、この距離適性数値を見る限りは「中盤にかけてラップが速くなる競馬」の方に適性があると考えるべきでしょう。

芝では中盤にかけて速くなるケースはなかなかないものの、ダート、特に短距離戦においてはスタートをゆっくり入って徐々に厳しく流れることがあるため、そこに適性が高いことがわかります。

<シニスターミニスター>
序盤⇒中盤KK値:50.97 

中盤⇒終盤KK値:48.63 

距離KK値:49.42

ゴールドアリュールと似た数値ではあるものの、やはり純粋ダート馬のシニスターミニスター産駒は上りが早い勝負ではやや分が悪い感じです。ただし序盤から中盤にかけて厳しく流れた場合は強さを発揮していることもわかります。

<ハーツクライ>
序盤⇒中盤KK値:50.90 

中盤⇒終盤KK値:50.04 

距離KK値:55.83

すべてにおいて平均を上回る数値を出してきたのがハーツクライ。これはダートの平均的な流れに対応しつつも、特に距離対応力が優れていることを意味します。つまりキングカメハメハと同じような適性です。

中でも距離対応の数値が高いことが注目で、後半に速くなる展開だと芝ラップにも適性がある種牡馬が強い証拠と考えていいでしょう。

<パイロ>
序盤⇒中盤KK値:48.58 

中盤⇒終盤KK値:47.16 

距離KK値:45.95

ハーツクライとは逆にすべての数値がマイナス。こうした傾向は純粋なアメリカ系ダート馬に見られる特徴で、上がりが早いレースは苦手で、距離延長にもあまり適性を示さない証拠となります。

<ディープインパクト>
序盤⇒中盤KK値:54.37 

中盤⇒終盤KK値:51.28 

距離KK値:58.24

あらゆるケースで高い数値を出したのがディープインパクト。上りの適性を示す中盤⇒後半の数値が高いのに、それでも序盤⇒中盤の数値が高いのがポイントです。

これはハイペースでなおかつ後半も速いという無理のある展開ではなく「序盤がスローだったために結果的に中盤が速い」と考える必要があります。そうでなくては距離適性が短く出るはずです。

それにしても距離が伸びてこれだけ高い数値を出すのは、やはり芝適性のある種牡馬は「ためて伸びる」本格的な競馬の流れに強い証拠だと言えるでしょう。

いいなと思ったら応援しよう!

浜栗之助
「競馬最強の法則」にて血統理論記事を短期連載しておりました。血統の世界は日々世代を変えてゆくものだけに、常に新しい視点で旧来のやり方にとらわれない発想をお伝えしたいと思います。