2024~2025 3歳クラシック血統分析(第15週) 2024/09/07~09/08
(有料noteですが、無料で最後まで読めます。内容が気に入った、応援したいという方のみご購入下さい)
今週から中山開催が始まりました。例年のことながらとんでもないタイムが続出する開催ですが、これは単に馬場状態が良すぎるだけで馬の能力を反映するものではない、ということは頭に入れておいてください。
特に中山は馬場状態の影響を受けやすく、状況によっては本来なら勝てそうもない馬が勝ってしまうこともあります。特に1600mや2200mのような外回り戦ではそれが顕著で、中山で強い馬はあまり過大評価をするのは避けましょう。
内回りコースでも第4コーナーの外側が高くなっているコース形状のために外回しがハマりやすく、多頭数でもまれて弱い馬が勝つこともしばしば。必ずレース映像と位置取りを見て、それから強弱の判断をするように心がけてください。
血統分析を希望する馬のリクエストも受け付けますので、コメントを頂ければ幸いです。
◆9/7 中山 芝1600mアスター賞
・ジャルディニエ(アドマイヤマーズ×ヘアキティー) 評価B+
※これまで評価がなかったためここで追加します。
開幕週ではあったが、中山1600mらしく最後は外から伸びた馬が差し切れる流れに。やや後傾のラップを鋭い脚を使って差し切った内容はアドマイヤマーズ産駒らしい爆発力を見せたと言える。
新馬戦や未勝利戦の勝ち内容はそこまで評価していなかったが、前が止まる展開なら良さが出る。夏競馬を見る限りあまり闘争心の高いレースを見せていなかったが、これぐらいの走りが出来れば極端にメンタルが弱い種牡馬ではないと判断できるだろう。とはいえ本質が出るのは今後。
祖母Be Silverの血が父内Medicianと呼応したことが能力の源泉。基本的に母の血で走っている馬。
上がり1ハロン:11.2秒
残400~200m:11.7秒
ラップ:35.8-34.0(後傾)
アドマイヤマーズ:闘争心が豊富だったダイワメジャーの系統だが、産駒にどこまでそのメンタルが伝えられるかが最大の鍵。ややぬるいレースで好走する傾向があるだけに格上げでは不安もある。
◆9/7 中山 ダ1200新馬戦
・コパノヴィンセント(コパノリッキー×ヴェアリアスローズ) 評価B+
多頭数のダート短距離らしく最初から飛ばす展開。前の馬が下がったところを力強く差し切った内容で、一見すると悪くはない。とはいえ特筆するほどの内容でもない。
血統表の字面通りのダート馬で、やや近親度は高めのため早い段階が勝負。だが血統の構造自体はしっかりしていて見どころはある。
上がり1ハロン:12.9秒
残400~200m:12.5秒
ラップ:35.7-37.6(前傾)
コパノリッキー:意外なほどにダートも芝もこなすが、いずれにせよ短距離にシフトした重厚な血統。ゴールドアリュールの旺盛な闘争心を最もよく受け継いでいる感じだが、前が止まる、もしくは猛然と追い込むような競馬が必要なタイプ。
◆9/7 中山 芝2000新馬戦
・ハードワーカー(ノーブルミッション×ヤマカツサファイヤ) 評価B+
開幕週で、しかも前半に3回も13秒台のラップが入るなどかなりのスローペース。それを利して流れ込み勝ちというマイナスは否めない。
タイムは決して悪くないので、長く脚を使って粘った内容はそれなりに評価しておく必要はあるだろう。ただ頭数が増えてさらに良くなる、流れが厳しくなっても強さを発揮できるという感じではなかったので、穴馬タイプになりそうな感じがある。
配合は上手い。Northern Dancerの近交が強めの父に対し、逆にNorthern Dancerが薄目の母は相性が良い。特に父内デインヒルと母内グラスワンダーは非常に相性が良いので、そこをうまく使っていることを評価したい。
上がり1ハロン:11.0秒
残400~200m:11.6秒
ラップ:38.7-34.2(超後傾)
ノーブルミッション:Frankelの全兄弟で、基本的には兄に準じる走りになると思われる。意外なほどに長く脚を使えるタイプではなく、最後の爆発力で勝負をつけるタイプなのでダートもこなしてしまう感じ。
◆9/7 中京 ダ1800未勝利戦
・メイショウハチロー(シニスターミニスター×メイショウミハル) 評価A
クァンタムウェーブがぶっちぎり勝ちしたレースで、3着以下を7馬身突き放した2着だったのがこの馬。今回は自身が3馬身差勝ちをしたのは立派。
中盤から一気にペースを上げて後続を振り切る内容は見た目以上の強さを感じさせるもの。最後は止まったがダート馬ならこれぐらいで問題ない。
天皇賞馬テーオーロイヤルの近親にあたる馬だが、どちらにしても祖母アルペンローズの使い方が上手い。楽しみな血統。
上がり1ハロン:13.4秒
残400~200m:12.4秒
ラップ:37.7-38.6(前傾)
シニスターミニスター:生粋のダート馬らしく上がり勝負になると弱いが、A.P.Indy系の「いい脚を早い段階から長く使える」良さを持ち、さらには多頭数でもひるまないだけのメンタルの強さも持っている。欠点は切れ味勝負。
◆9/7 中京 芝2000未勝利戦
・モルティフレーバー(キタサンブラック×チャイマックス) 評価B+
良血馬ディアナザールが勝ったレースで、後方からレース最速の上がりタイムで追い込んできただけに能力は申し分なし。今回は逆に逃げる競馬となったが、圧倒的人気のバズアップビートが爆発的な末脚を見せたタイミングで同じだけの脚を使って抑え込んだ内容は見事の一言。この馬もハイレベル。
キタサンブラック産駒の良さは他を圧倒する爆発的な脚を一発だけ使えること。そのタイミングが難しいので、少頭数やもまれないレースに良績が偏ってしまうほど。今回の少頭数はまさにベスト条件だった(逆にエピファネイア産駒のバズアップビートには最悪の条件)。
父母間の配合はそこまで凄さはないし特筆すべき個所もないが、母のバランスの良い血統構成は非常に美しい。
上がり1ハロン:12.2秒
残400~200m:11.1秒
ラップ:37.3-34.4(後傾)
キタサンブラック:外枠、少頭数、固い馬場と、とにかく「楽なレース展開」にならないとその能力を発揮できないのが最大の欠点。メンタルの弱さはどうしようもないレベル。だが長所を発揮できる場面になれば抜群の能力を見せるのも確か。諸刃の剣。
◆9/7 中京 ダ1800新馬戦
・トリポリタニア(ルヴァンスレーヴ×トリプライト) 評価B+
13秒台どころか14秒台のラップが存在する超スロー戦で、ダートとは思えないほどの上がりタイムが記録されている。業を煮やしたかのように道中から先頭に立って、最後は追いすがる馬を次々と潰しながらの実質逃げ切り勝ち。強い闘争心を感じさせるレースだった。
ダート戦でこのタイプの走りが今後通用するかがカギになるが、闘争心の高さは決してマイナスになることはないだろう。ルヴァンスレーヴ産駒が個のメンタルを持っているならば期待できる。
母は良質の血を多く持ち、特にHaloに血を集める形態。それだけにサンデーサイレンスのインクロスを薄く入れるのは配合方針として正しい。
上がり1ハロン:12.1秒
残400~200m:11.9秒
ラップ:39.5-36.5(後傾)
ルヴァンスレーヴ:父シンボリクリスエスだけにどこまで旺盛な闘争心を伝えられるかがポイント。父自身はネオユニヴァースやティンバーカントリーで多少丸さとスケール感を出した配合だっただけに、そこを生かせば良いダート馬が出る可能性も。
◆9/7 中京 芝1600新馬戦
・タイセイカレント(モーリス×アイリッシュシー) 評価B+
開催が1か月続いてもまだこれだけのタイムが出るのか、という今の中京。そこで前の2頭が止まらずに残ったとなればレース評価を下げざるを得ないはずだが、最後は2着馬を突き放そうとするだけの脚は見せており、意外に悪くない評価は可能。
モーリス内のグラスワンダーと母内のデインヒルの呼応を生かした配合ならばかなりの評価ができたが、惜しむらくはSadler's Wellsの余計なインクロスができたことで血統がぶれてしまった感がある。もう少し絞り込んだ内容が見たかった。
上がり1ハロン:11.3秒
残400~200m:10.9秒
ラップ:37.6-33.9(超後傾)
◆9/8 中山 芝2000未勝利戦
・パートオブワールド(ブラックタイド×ニコーズステージ) 評価B+
新馬戦はハイペースではなかったものの乱れたラップとなり、その結果最後に脚をなくすというレースだった。だが前崩れの展開で3着に残った内容は優秀。
ブラックタイドは弟のディープインパクトと比べてメンタルに脆さがあり、その産駒も厳しいレース展開では投げ出してしまう。ある意味キタサンブラックの父らしい種牡馬。今回はすんなりとした流れで走れたので良さを発揮できた。上がりタイムもまずまず優秀。
少し血統的に古くなったせいで前面に強いインクロスができやすいが、この馬は母の方が近交気味でバランスが取れている感。
上がり1ハロン:11.0秒
残400~200m:11.8秒
ラップ:37.2-34.3(後傾)
ブラックタイド:ディープインパクトの全兄だが、弟ほどの多頭数適性を持ち合わせておらず、もまれて弱い産駒を出す。キタサンブラックのような名馬も輩出したが、あれも逃げに徹したり大外を回すレースができなければ弱さを見せるタイプ。少頭数、上りの速いレース、もまれないレースじゃないとダメ。基本的にはクラシック向きではない。
◆9/8 中山 ダ1800新馬戦
・ウインハルモニア(サンダースノー×スリーアフロディテ) 評価C
最後の2ハロンはほとんど全馬が歩いているような状況のレース。スタミナが要求されるというよりは、たまたま生き残るのが誰かを競う感じだった。特に評価するポイントはなし。
血統は全面に多くのインクロスを持ちやや雑然とした感じ。母の血はすっきりしてバランスもいいだけに、中途半端な配合。
上がり1ハロン:14.3秒
残400~200m:14.0秒
ラップ:37.6-40.7(前傾)
サンダースノー:デインヒル系ということもあり単純にもまれて弱い種牡馬化と思いきや、ダートの多頭数戦をものともしないだけのメンタルの強さを兼ね備えているようで、意外に面白い馬かもしれない。ただ粘り強さを持つということはスピードの不足も意味する。完全なダート向きで、芝は不良まで行かないと走れないかもしれない。
◆9/8 中山 芝1600新馬戦
・ファンダム(サートゥルナーリア×ファナティック) 評価B+
レコードタイムが出たのは確かだが、今年の中山開幕週は異様に馬場が硬く、到底鵜呑みにしてはならないタイム。内容で見ていくべき。
先行したダイヤモンドを2番手で追って差し切った走りだが、そこでの抜け出すスピードはさすがにサートゥルナーリア産駒らしく爆発的で素晴らしいものがあった。上がり1ハロン10.8はきわめて優秀で、基礎能力の高さは認められる。
ただ配合としてはいかにも凡庸。配合の難しい母父ジャスタウェイの悪影響を引きずってしまい、祖母からのサポートも得られなかった。サンデーサイレンスのインクロスだけが目立つが、だからと言って何かあるわけではない。
上がり1ハロン:10.8秒
残400~200m:11.5秒
ラップ:35.6-33.4(後傾)
サートゥルナーリア:ゴール前でひと頑張りする闘争心は父からきちんと受け継いでいた模様。問題はそれを多頭数戦で発揮できるかにある。こうしたタイプは距離が伸びてマイナスになるケースがあるので、そのあたりの見極めも重要か。ただし今のところの傾向として、爆発力はかなり優秀なものがあるが少頭数の方が向きそうな感じ。
◆9/8 中京 芝1200新馬戦
・パンジャタワー(タワーオブロンドン×クラークスデール) 評価B+
さすがに硬い中京の芝でも超高速とまではいかなくなり、タイムも落ちてきた。超スローの短距離戦でびっしりと前に行った二頭が競り合う形となるレースで、そこまでレベルの高い感じはなかった。
ただしタワーオブロンドン産駒が今まであまり見せなかった「相手を競り潰す闘争心」は見せてくれたので、父の評価を変えるだけの走りはしていた。
血統はユニーク。Machiavellianの近交を持つ母、特に祖母である名牝ソニンクに父の血がぴったり合っており、そこが能力の源泉。スピードがやや不足してる感はあるが、距離が少し伸びると面白いかも。
上がり1ハロン:11.8秒
残400~200m:11.1秒
ラップ:35.5-34.2(後傾)
タワーオブロンドン:短距離を中心に走る馬を出しているが、アメリカ系の単調なスプリンターではなく、むしろヨーロピアンな「スローからの伸び脚」を見せるタイプのスプリンター。よって開幕週の硬い芝や1400m戦などのゆったりした展開も合う。逆に言えば厳しく流れるスプリント向きではないか。闘争心は意外に高い。
◆9/8 中京 芝2000新馬戦
・ゲルチュタール(ブリックスアンドモルタル×キラービューティ) 評価B+
ブリックスアンドモルタル産駒と言えば大回りコースでもまれずに走れば強い、という特徴というか「ほぼ欠点」がある。今回のレースも先行して軽く差し切るという負荷の少ないレースで、いかにも父の子という感じ。タイムは今の馬場にしてはそれなりに出た。
配合面でいえば、割とアウトクロスになりやすい父の産駒にしては前面に多くのインクロスが出て、母父内サンデーサイレンスを素直に生かした配合になっている。作りとしてはシンプルで好感が持てる。
上がり1ハロン:11.4秒
残400~200m:10.9秒
ラップ:38.1-34.1(超後傾)
ブリックスアンドモルタル:産駒に与えるスピードセンスは非常に優秀だが、とにかくもまれ弱い。広いコースで少頭数なら抜群の能力を発揮できるので非常に強く見せるが、ちょっとでも気に入らない条件になるとすぐレースを投げ出す。よほど恵まれないと重賞では常に人気を裏切るタイプ。
ここから先は
¥ 100
「競馬最強の法則」にて血統理論記事を短期連載しておりました。血統の世界は日々世代を変えてゆくものだけに、常に新しい視点で旧来のやり方にとらわれない発想をお伝えしたいと思います。