2024~2025 3歳クラシック血統分析(第23週) 2024/11/2~11/3
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今週は中央のG1開催がなく、アメリカのブリーダーズカップが実質的にメインとなる特殊な週でした。
19頭出走して勝ち馬ゼロ、2着がローシャムパークのみという厳しい結果になりましたが、比較的小回りとなったダートではウシュバテソーロやデルマソトガケといった今までの実績勢が力を出し切れず、芝では「日本の競馬では苦しい」ハービンジャー産駒が最も健闘。
コース形態は馬の能力を発揮するために最も重要なファクターとなりますが、ドバイなどの大回りコースを得意とするウシュバテソーロをデルマー競馬場で出走させたのは正直プラスとは思えませんでした。
また函館2歳Sの勝ち馬サトノカルナバルも、キタサンブラック産駒にとってプラスとは言えない小回り競馬でのレースを強いられて力を出し切れずに終わりました。少し陣営が迷走している感じがあり不安が残ります。
◆11/2 福島 芝1200m新馬戦
・クロユキ(モーリス×チカリータ) 評価B
福島開幕週で、まだインコースの状態が良い。その良い場所を高杉騎手が非常にうまいタイミングで追い出して突き抜けた内容。高杉騎手は若いが仕掛けどころの上手さが光り、今後とも注目しておくべき騎手。
モーリス産駒にとって前につけて軽く仕掛ければ勝てるレースはまさにもってこいなので、開幕週だったのは非常に幸いした。後半の馬場になると厳しくなっただろう。
母内のNureyevからの連続クロスが良くできている。鋭さはある血統構成。
上がり1ハロン:12.0秒
残400~200m:11.8秒
ラップ:35.4-35.5(フラット)
モーリス:オーストラリアでの成功を考えれば日本での実績がやや物足りないが、使える脚の長さが短いので長い直線を差し切る芸当ができない上に、ごちゃついた競馬を苦手にするのが原因。意外にスムーズに脚を使えるので「前にいる馬が少ないときに」軽く抜け出すのは得意。爆発力には欠ける。
◆11/2 東京 芝2000m新馬戦
・アロヒアリイ(ドゥラメンテ×エスポワール) 評価A+
飴委の影響もあって上がりタイムは少し遅め。だがここに騙されてはいけない。今年の東京秋開催はもともとタイムが遅い上にインが異常に強い状態が続いた。
今回のレースは逆にインが止まり、その外にいた馬が素直に脚を使えるレースとなった。こういう馬場、流れでないと本当に強い馬は選抜できないことは知っておくべきだろう。
父の母アドマイヤグルーヴ内のサンデーサイレンス、トニービン、ノーザンテーストをすべてインクロス状態にして「完全再現」した一点集中強調型の血統。同じ母父オルフェーヴルのドゥラエレーデと類似する内容だが、こちらの方が父母の生かし方が優れている。良馬場で見てみたい馬。
上がり1ハロン:11.6秒
残400~200m:11.4秒
ラップ:37.6-34.3(後傾)
ドゥラメンテ:多頭数でもまれる展開に強く、一瞬見せる爆発的な脚もトップクラスという現代の最強種牡馬。闘争心とはまさにこの馬の産駒のためにある言葉。ただし弱点といえば長く脚を使わされる展開で、相手が弱くストレスが少ないレースになると他馬の後塵を拝することがある。だが本番では逆転する。
◆11/2 東京 ダ1600m新馬戦
・ボルトテソーロ(サンダースノー×カメリアローズ2) 評価B+
ダートとは思えないほどに上がりタイムが速いレース。芝2000mとほぼ変わらない上がり2ハロンタイムなのは凄いが、ペースがかなり遅い上に重馬場で走りやすくなり、これは馬場バイアスによるタイムと考えないとダメだろう。
インをベタに使った競り合いでもあり、今後「通常の」流れになってこの走りができるかどうかは疑問がある。もちろんこれだけのタイムが出せる以上は能力はあるのだろうが、過信は禁物。
デインヒル、Sadler's Wells、Shirley Heightsと母内の近い世代の血をすべてインクロスさせた濃厚な血統で、祖父Helmetと母カメリアローズ2の相似性を生かした配合となっている。近親度がややきつい感じもあり、おそらくは早熟タイプ。
上がり1ハロン:11.7秒
残400~200m:116秒
ラップ:38.3-35.6(超後傾)
サンダースノー:デインヒル系ということもあり単純にもまれて弱い種牡馬化と思いきや、ダートの多頭数戦をものともしないだけのメンタルの強さを兼ね備えているようで、意外に面白い馬かもしれない。ただ粘り強さを持つということはスピードの不足も意味する。完全なダート向きで、芝は不良まで行かないと走れないかもしれない。
◆11/2 京都 ダ1800m未勝利戦
・レイナデアルシーラ(ナダル×アンデスクイーン) 評価B+
前走は同じナダル産駒のマテンロウブレイヴがあまりに強すぎての2着だったが、3着以下は10馬身突き放しており、この馬も十分なポテンシャルを秘めている。今回はその通りに勝ち上がった。タイムは遅いが追う必要性がなかっただけの話。
不良馬場になったこともあってナダル産駒特有の「瞬時に相手を突き放す猛烈な末脚」を発揮することはなかったが、明らかに馬のレベルが違ったために問題にならなかった。ただし上位クラスでは不良馬場はあまり得意にしないだろう。
母の血統に良さがあり、タートルボウル内への血を集合させる形態。ただし父母間ではキングカメハメハがメインであり、そこに少しズレがある。
上がり1ハロン:13.7秒
残400~200m:13.3秒
ラップ:36.7-39.8(前傾)
ナダル:ダートと短距離戦に実績が偏るが、先行だけでなく中断から差す競馬もできているように、Kris S.系の闘争心は強く受け継いでいる模様。最大の長所は一発の爆発力で、瞬時に相手を突き放すレースをして光るタイプ。ダート向き種牡馬ということもあり先行さえできれば我慢が効くタイプ。
◆11/2 京都 ダ1200m未勝利戦
・アメリカンステージ(Into Mischief×Warrior's Reward) 評価A
2着に2.4秒差をつけた今回の強烈な勝ち方を見ると、なぜこれまで3連敗してきたのかと疑いたくなる。だがこれはInto Mischief産駒の特徴である「飛ばした時に良さが出る」に由来するもので、1400m以上ではスタートからの流れが遅すぎたのだろう。
こうした馬が本気で飛ばせば後続はなしくずしに脚を使わされて失速する。よってこれぐらいの大差になる。ただしクラスが上がって簡単にばてない馬が相手になると話が違ってくるので、強いことは強いが「ダートの大差勝ちを鵜呑みにするな」と考えるべきだろう。ちょっと不良馬場での変わり身が激しすぎるのが気になる。
父の母Leslie's Lady内の血がびっしりとインクロス状態となっており、ここが能力の源泉なのが明確。近親度が薄い割にきめ細かく構成された配合は見事の一言で、血統だけなら間違いなくA級馬。
上がり1ハロン:12.4秒
残400~200m:11.6秒
ラップ:34.8-35.9(前傾)
Into Mischief:Storm Catの系統だけあってかなり気性は強い。それだけに好調期にはいいレースを見せるし、ペースの速い短距離ダートであれば多頭数もこなす。逆に言えばペースが緩んだ時に弱点を見せるタイプ。もまれてこその馬。
◆11/2 京都 ダ1400m新馬戦
・ストップヤーニング(サンダースノー×アルトゥーナ) 評価B
直線に入ってから一気に加速、長く脚を使って差し切ったように見えるレース。だが実際はラップを見れば分かる通りの前崩れ戦。
サンダースノーはオーストラリアで実績のあるデインヒルの系統だが、直線が短いコースで急加速するレースで良さを見せる。だがその脚はまさに一瞬で、長い直線を伸び伸び走らせると良さが出ない。ダート1400mで不良馬場での勝利と言うのはプラス視する要素にならない。
ただし父と母の血の相性は抜群。レース内容はともかくここは評価したい。
上がり1ハロン:13.1秒
残400~200m:12.6秒
ラップ:35.9-36.9(前傾)
サンダースノー:前述
◆11/2 京都 芝1600m新馬戦
・サウンドサンライズ(モーリス×マハーバーラタ) 評価B
京都はさすがにインが荒れてきたが、それでも多少は前が残れる馬場状態。この馬はある程度先行馬がバテたところを軽い末脚で差し切ったという感じ。強さはない。
モーリス産駒は先行してほんのちょっと脚を使うレースが得意で、開幕週の馬場なら長い直線をこなす。だが馬場が異常でない限りは決して上位では通用しない。
サンデーサイレンスとSpecialの血を父母共に持っており、そこがこの配合のポイント。悪くはない。
上がり1ハロン:12.4秒
残400~200m:12.0秒
ラップ:36.5-36.1(フラット)
モーリス:前述
◆11/3 福島 ダ1700m新馬戦
・シーソーゲーム(Daaher×Bear Now) 評価B
前半が速かったために中盤が大きくたるみ、直線に入ってからは大きく展開が変わるレースとなった。
いかにもアメリカ系血統、特にフラットな流れでダラダラ走らせて強いAwesome Againの系統だけに、この流れが幸いした感じ。
祖母に意識を集中した配合内容は父母で共通性があり面白い。
上がり1ハロン:12.9秒
残400~200m:12.8秒
ラップ:37.4-38.9(前傾)
Daaher:Deputy Minister系は鋭い切れ味や爆発力に欠けるが、前が崩れる流れや後ろが止まる流れでも「マイペースで走り切れる」のが特徴。楽に先行して押し切るか前崩れの流れを待つか。いずれにしてもダート馬で、芝で良くなる要素はあまり感じられない。
◆11/3 東京 芝1400m新馬戦
・カラヴァジェスティ(Caravaggio×Tonahutu) 評価B+
1400m戦にしてはスローペースの流れとなったが、2ハロン目で急加速するラップでスローの割には前が楽にはならなかった。その結果として最後は先頭争いが激しくなったが、最後は闘争心が強めの馬2頭(もう1頭はブリックスアンドモルタル産駒)で決まった。
こうした流れで「他より前に」行こうとする性質を与える種牡馬は貴重で、Scat Daddy系Caravaggioの良さを遺憾なく発揮したレースと言えよう。
上がり2ハロンは非常に速く優秀だが、配合そのものは平凡。時計の速い芝である程度のクラスまでは通用する。ダートの方がいけそう。
上がり1ハロン:11.1秒
残400~200m:10.9秒
ラップ:37.8-33.3(超後傾)
Caravaggio:アメリカで有力系統になりつつあるScat Daddy系で、ダートでも芝でも直線で鋭く脚を使えるのが特徴。闘争心に富み前の馬をしっかり追いかけることができる馬で、ヘネシーの系統と似た特徴を持つ。直線が長いコースで良さを発揮できるダート馬としては異色のタイプ。
◆11/3 東京 芝1800m新馬戦
・レイニング(サートゥルナーリア×クルミナル) 評価B+
超スローの流れとはいえ上がり2ハロンで11.0を二度出すのは並の能力で出来る芸当ではないし、楽に先行していた前の2頭を素早く交わす爆発的な末脚は魅力的。まさにサートゥルナーリア産駒が得意とする「軽い馬場で一瞬の脚を生かす」流れになったのが大きかった。
サートゥルナーリア産駒は走りの質が軽く、厳しい流れになって浮上できる感じがあまりしないのがネック。ただし少しでも流れが緩めば無双できるだけの良さを秘めている。
父母共に名のある馬だが、残念なことに配合内容がやや平凡。重賞級のポテンシャルはあるのは間違いないが、トライアルまでという感じが漂う。
上がり1ハロン:11.0秒
残400~200m:11.0秒
ラップ:38.7-32.9(超後傾)
サートゥルナーリア:ゴール前でひと頑張りする闘争心は父からきちんと受け継いでいた模様。問題はそれを多頭数戦で発揮できるかにある。こうしたタイプは距離が伸びてマイナスになるケースがあるので、そのあたりの見極めも重要か。ただし今のところの傾向として、爆発力はかなり優秀なものがあるが少頭数の方が向きそうな感じ。
◆11/3 京都 芝1200m新馬戦
・インブロリオ(アドマイヤムーン×プリディカメント) 評価B
1200m戦としてはやや緩んだ流れとなり、前に行った馬がレースをしやすかった。直線で軽く脚を使って抜け出した走りはあまり強さは感じられないが、一介の1200m馬ではない能力は見せていた。
ただし配合としてはやや漠然とした感じで、強い特徴までは伝わっていない。今後は短距離よりも1400mぐらいのレースをだらっと走る感じの馬になっていきそう。
上がり1ハロン:11.4秒
残400~200m:11.2秒
ラップ:36.1-34.3(後傾)
アドマイヤムーン:エンドスウィープ産駒としては得意的に長距離もこなした馬だったが、産駒には強い気性を生かした短距離適性が強く伝わった。厳しい流れや狭いコースでインを狙うだけの鋭さを秘めており、種牡馬としてのポテンシャルは高い。ただ現在の競馬ではスピードが不足するか。
◆11/3 京都 芝1800m新馬戦
・ウォータークラーク(ウォータービルド×クリアーパッション) 評価B+
直線に入って早めに先頭に立ってからは、長い末脚で押し寄せる後続をなんとか振り切ってゴール。鋭さは感じられないが粘り強さは見せていた。
マイナー種牡馬の産駒ではあるが、イクイノックスと同じディープインパクト(ブラックタイド)×キングヘイローという配合になり、相性は抜群に良い。と言うかこの配合でなければウォータービルド産駒で新馬勝ちするのは難しいはず。生物学的な根拠はさておき、血統的相性というものは厳然として存在すると言うのは覚えておくべき。
ただし勝ち方が決して理想的ではないので、ここから上位をうかがえるかは微妙。
上がり1ハロン:11.5秒
残400~200m:11.5秒
ラップ:37.0-34.4(後傾)
ウォータービルド:プライベート種牡馬で特徴の判別がしづらいが、ディープインパクト産駒のマイナー種牡馬ということで強い闘争心はなく、ある程度先行して馬体を合わせて軽く抜け出すような競馬が向くタイプ。母系がアメリカのスピード血統でもあり、ベストは1400mになりそう。
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「競馬最強の法則」にて血統理論記事を短期連載しておりました。血統の世界は日々世代を変えてゆくものだけに、常に新しい視点で旧来のやり方にとらわれない発想をお伝えしたいと思います。