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2024~2025 3歳クラシック血統分析(第15週) 2024/09/14~09/16

(有料noteですが、無料で最後まで読めます。内容が気に入った、応援したいという方のみご購入下さい)

今週は土・日・月の3日間開催でした。
野芝の質を変えたことで堅固になった中京の芝もさすがに今週は大きく荒れ、先週までは軽々と超えていた直線の坂も各馬が苦闘する姿が見られるようになりました。

タイムは当然ながら落ちるので、今までのように上がり1ハロンタイムなどで能力を把握するのが難しくなります。であればどこを判断基準にするかと言えば

どれだけ一瞬で相手を突き放したか


これにつきます。爆発力はロングスパートと違って馬場の影響を受けません(ダートでも可能)。なので開催後半で強い馬を見分けるには、レース映像をしっかり見ることが重要となるのです。


◆9/14 中山 ダ1200m未勝利戦

・アルデショワ(ブリックスアンドモルタル×トラディション) 評価B

デビュー戦は福島の芝だったが、外目いっぱいを回って一気に追い込んでくる内容。いかにもブリックスアンドモルタル産駒らしい「もまれなければ強い」を体現したレースだったが、今回はダートに変わって一気に逃げて突き放す強い競馬だった。

ただし大きくリードして手綱を緩めたとはいえ、前半のリードで相手を潰す大味なレースだったことも事実。相手強化で良くなる感じもない。

配合も母の内容に乗っかっただけで特に大きな特徴はない。

上がり1ハロン:13.3秒
残400~200m:12.3秒
ラップ:34.8-38.0(超前傾)

ブリックスアンドモルタル:産駒に与えるスピードセンスは非常に優秀だが、とにかくもまれ弱い。広いコースで少頭数なら抜群の能力を発揮できるので非常に強く見せるが、ちょっとでも気に入らない条件になるとすぐレースを投げ出す。よほど恵まれないと重賞では常に人気を裏切るタイプ。

◆9/14 中山 ダ1800m新馬戦

・バギーウィップ(ナダル×トーコーユズキ) 評価A

ナダル産駒の勝ち方は「直線で爆発的な脚を使って一気に突き放す」のですぐ分かる。だがこの馬はそこまでの爆発力は見せず、むしろ最後の最後まで粘り切る感じに見えた。

ただし上がりタイムはダートにしては速く、ここでナダル産駒らしい脚を使っていたことが分かる。

血統は非常に優秀。特に祖母ピンクプルメリア、曾祖母ティグレスダムールへの血の集中が完璧で、ナダルの血を完璧に使い切ったと言える。配合の見本とさえ言えるもの、勝ち方自体はそこまででもなかったが伸びしろはあるはず。

上がり1ハロン:12.1秒
残400~200m:12.8秒
ラップ:39.0-38.4(フラット)

ナダル:今のところ短距離戦に実績が偏るが、先行だけでなく中断から差す競馬もできているように、Kris S.系の闘争心は強く受け継いでいる模様。最大の長所は一発の爆発力で、瞬時に相手を突き放すレースをして光るタイプ。ダート向き種牡馬ということもあり先行さえできれば我慢が効くタイプ。

◆9/14 中山 芝2000m新馬戦

・イブニングタイド(ドゥラメンテ×イブニングジュエル) 評価A+

直線に入ってサトノラポール(サートゥルナーリア産駒)とずっと一緒にびっしり競り合う競馬になり、最後の最後で振り切った。特に苦しい戦いをしていないように思える内容だったが、タイムを見るとラストの2ハロンが非常に速く、一発の爆発力のある2着馬を相手のスパートに合わせてそれ以上の脚を使っていたことになる。

ドゥラメンテ産駒らしい闘争心にあふれた内容で、これならば頭数がもう少し多くなっても問題なくこなすだろう。

Mr. Prospector×Nureyevを共に持つことからKingmambo≒Northern Afleetとも言える配合で、父と母父の相性がこの馬の能力の源泉となる。母系も配合自体は普通だが質が高く、上位でも戦えるだけの内容は保持している。

上がり1ハロン:10.7秒
残400~200m:11.2秒
ラップ:38.7-33.5(超後傾)

ドゥラメンテ:多頭数でもまれる展開に強く、一瞬見せる爆発的な脚もトップクラスという現代の最強種牡馬。闘争心とはまさにこの馬の産駒のためにある言葉。ただし弱点といえば長く脚を使わされる展開で、相手が弱くストレスが少ないレースになると他馬の後塵を拝することがある。だが本番では逆転する。

◆9/14 中京 ダ1800m未勝利戦

・メルキオル(ナダル×サングレアル) 評価A+

芝を二度使って期待に応えられなかったが、ダートに替わった瞬間に大差勝ち。ナダル産駒は決して芝がダメなわけではないが、ダートでこそ最大の能力を発揮できることがはっきりしてきたか。

ダートの圧勝劇と言えばスタートから飛ばして他馬のスタミナを奪い、「相手が勝負を諦めた結果」として起こることが多い。本当の意味での実力を反映しないので、ダートの圧勝は決して信用してはならない。だがこの馬はスローペースからのダッシュの速さで圧勝しており、これは芝レースと同じ評価が必要になる。

ビワハイジの牝系でもちろん内容は優秀だが、その祖母ビワハイジ内Caerleonにすべての血を集めた形となり、シンプルかつ緻密にまとまった内容。ダートだけを走らせるのがもったいないと思わせる血統だが、来年のダート戦線においては有力馬の一頭となるのは間違いない。

上がり1ハロン:12.1秒
残400~200m:11.8秒
ラップ:38.4-36.6(後傾)

ナダル:前述

◆9/14 中京 芝1400m未勝利戦

・ナムラクララ(アドマイヤマーズ×サンクィーン2) 評価A+

姉が重賞馬ナムラクレアで、もちろんその母系の質が悪かろうはずがない(そもそもMachiavellianと同じ牝系)。それだけでも十分なアドバンテージがある。

ナムラクレアの良さは多頭数にもまれる展開を苦にしないことで、逆に欠点はそこから鋭く抜け出す脚を持たないこと。父がミッキーアイルからアドマイヤマーズに変わり、その辺りは多少の改善が見られた感じがある。中京の芝もさすがに荒れてきたことを考えると、タイムもまずまずだろう。

血統については姉よりも上。強調点が分かりにくく散漫な印象があった姉と比べ、母サンクィーン2の持つ要素を近親交配ギリギリの線で攻め、徹底的に絞りつくすような構成。同じ母系の出世馬であるMachiavellian≒Coup de Genieの全きょうだいクロスも効いている。血統だけで評価を押し上げる。

上がり1ハロン:11.6秒
残400~200m:11.1秒
ラップ:36.1-34.1(後傾)

アドマイヤマーズ:闘争心が豊富だったダイワメジャーの系統だが、産駒にどこまでそのメンタルが伝えられるかが最大の鍵。ややぬるいレースで好走する傾向があるだけに格上げでは不安もある。スピード、爆発力に関しては申し分ないレベル。

◆9/15 中山 芝1200m新馬戦

・ヴァージル(ビッグアーサー×ストームイメージ) 評価B+

終始一貫して速いラップで流れ、いかにも開幕当初の中山と言う感じのレース。ビッグアーサーというかサクラユタカオーの系統は一瞬だけ鋭い脚を使い、それで抜けだすのが真骨頂。今回は先行していいタイミングで脚を使えたのが勝因。粘り腰も見せた。

父ビッグアーサー内Kingmamboと母父ダンスインザダークは相性が非常に良く、ここが能力の源泉となる配合。スケール感はそれなりにあるので、特筆すべき点は少ないが決して悪い配合ではない。長所も欠点もない感じ。

上がり1ハロン:11.2秒
残400~200m:11.4秒
ラップ:34.9-34.1(フラット)

ビッグアーサー:スプリント特化型なのは父の血を継いでいる感じだし、多頭数内枠でも力を落とさずに走れるだけの瞬間的な脚も備えている。それでも上位が相手になると脚が止まるのは、いい脚を長く維持できないから。G3クラスまでは行けるがその先が厳しい。

◆9/15 中山 芝1600m新馬戦(牝)

・レイユール(キズナ×レイカーラ) 評価S

大きく内外に馬群が広がるレースだったが、その最内を鋭く突いて一気に相手を突き放す内容はサートゥルナーリア産駒っぽいものだった。だが見てみれば長く脚を使うのが特徴のキズナ産駒。こうした勝ち方ができるのは非常に珍しく、それだけでも価値がある。

配合内容は見事の一言。父母ともに祖母カーラパワー内のCaerleonに血を集める内容で統一感があり、Storm Catやサンデーサイレンスに頼らない形としては珍しいぐらいに強調点がはっきりした配合。母の生かし方の良さこそがこの馬の良さ。

シンリョクカの下で母系の内容が悪かろうはずもなく、これは今後に大きな期待を持てる一頭。上がり1ハロンのタイムも11秒を切り優秀。

上がり1ハロン:10.8秒
残400~200m:11.8秒
ラップ:36.6-34.2(後傾)

キズナ:多頭数での安定感は抜群だが、上位クラスでは前の馬を抜こうとしない気性の弱さがネック。直線で邪魔をされなければ凄い差し脚を見せることもあるが、あくまで下級条件限定と言える。クラシック路線で勝つためには前が崩れる展開が必須。

◆9/15 中京 ダ1200m未勝利戦

・オトメナシャチョウ(Speightstown×Mylady Curlin) 評価B

湿ったダートとはいえタイムは優秀。最後も大きくバテたわけではなく、スピードを維持できていたのは実力勝ちの証明。1000mで好走した馬が200m伸びても強い勝ち方ができるのは評価されるべき。

ただし誉めるところはそこまで。血統的には父Speightstown内のGone Westだけを強調する形で、インティのような大味な先行馬。母の血もぱっとしない。これ以上の上積みは厳しいと言わざるを得ない。

上がり1ハロン:11.8秒
残400~200m:12.5秒
ラップ:34.5-36.1(前傾)

Speightstown:Gone West系の特徴である「行ききって初めて良さが出る」性質を強く受け継ぎ、スタートから飛ばして粘るレースに良さがある。それだけに馬場が軽くて走りやすいレースではいいが、日本の重いダートでは今一つ本領を発揮できない。結果的に短距離専用になる。

◆9/15 中京 ダ1800m新馬戦

・キタノサワヤカ(イスラボニータ×サワヤカブラン) 評価C

快調に飛ばしていたテイエムライダーが落馬(予後不良)し、結果的に勝利が転がり込んできた。ラスト2ハロンがともに13秒台でまったく実力は問われていない。

血統も単なる近親交配馬。何も評価できない。

上がり1ハロン:13.3秒
残400~200m:13.7秒
ラップ:38.0-38.0(フラット)

イスラボニータ:多頭数のごちゃつくレースでもまったく苦にしないメンタルの強さと安定感はあるが、そこから抜け出す脚が全くないのが弱点。フラットな流れで相手がバテるのを待つなど完全な他力本願(本来の意味とは異なる)でないと勝ち切れないため、結果的に距離適性が短くなる。キズナの下位互換的存在。

◆9/15 中京 芝2000m新馬戦

・スリーキングス(エピファネイア×ヒムノティック) 評価A

道中変なところでペースが上がったために完全に脚が上がった先行馬を直線入り口で捉えたまでは良かったが、そこからは自らも完全に脚が止まり、いつ下がってもおかしくない状態だった。だが2着馬が横に並んでからはさらに闘争心をむき出しにしてゴールまで激走、最後は止まることもできずに外ラチに激突するという豪快なレースぶりだった。

このファイティングスピリッツはさすがエピファネイア産駒と賞賛したいところだが、無理してでも走る性質からして怪我がないことを願う。レース内容がメチャクチャなのでタイムは当然遅い。

配合は非常にレベルが高い。父母相似配合となっている母ヒムノティック(グランアレグリアの母と配合イメージが近い)に対し、当馬は母内A.P.IndyのSeattle SlewやSecretariatを引き出した配合となり、うまく配合内容を転換している。サンデーサイレンスのインクロスがないのも好感。

上がり1ハロン:12.7秒
残400~200m:12.0秒
ラップ:36.9-36.9(フラット)

エピファネイア:持続する末脚がないために上がりタイムでは他の種牡馬よりも見劣りするが、一瞬で爆発的な脚を使えること、もまれる展開でも脚を使えるメンタルの強さがあるため多頭数の格上げ戦に強い。そのため格下では取りこぼすし、勝ち上がり戦自体は平凡なこともある。

◆9/16 中山 芝1600m新馬戦

・レーヴブリリアント(スワーヴリチャード×リリレフア) 評価B+

母がリスグラシューの近親に当たり、そこにロードカナロアをつけたことで高い血の質を確保している。現役馬としてはイマイチだったが、繁殖牝馬としては良い。

少頭数の競り合いの中から鋭い脚で馬群を割って突き抜けてきたように、レース運びは上手。父スワーヴリチャードの長所である闘争心の高さも発揮できているし、父の産駒にありがちな操縦の難しさもなさそう。

ただし配合的には母の血に乗っかったような感じで、強いアピールポイントがないのも事実。突出した能力を見せられないと厳しくなる。

上がり1ハロン:11.0秒
残400~200m:11.8秒
ラップ:37.1-34.0(後傾)

スワーヴリチャード:旺盛な闘争心を持ち、インから鋭く差す走りも得意。ただしメンタルが不安定で狭いコースでごちゃごちゃするとやる気をなくすので、基本的には広いコースか大外振り回し向き。人気を背負ってマークされる展開になった時の信頼性は低い。

◆9/16 中山 芝1800m新馬戦

・ブラウンラチェット(キズナ×フォエヴァーダーリング) 評価A

4コーナー外目を楽に回り、もまれずにすっと抜け出して突き放す競馬。最後は2着馬に接近されたが危なげはなかった。フォーエバーヤングの妹、さらにはゼンノロブロイの近親でもあり、母の血の質は非常に高い。母の配合を余計なインクロスなどで邪魔しなければ普通に強い馬が出る血統。

配合は「優秀な母の血を邪魔しない程度の味付け」に留めており、父母間における特筆点はない。だが母の良さを素直に引き出しているので血統レベルは高いと判断できる。ただし配合そのものは兄フォーエバーヤングよりは劣るのも確か。

ラップタイムはそれなりに優秀。ただ今の中山を考えるともう少し速くても良かった。いい馬なのは間違いないが、多少奥歯にものが挟まった感あり。

上がり1ハロン:11.2秒
残400~200m:11.6秒
ラップ:37.9-34.3(超後傾)

キズナ:多頭数での安定感は抜群だが、上位クラスでは前の馬を抜こうとしない気性の弱さがネック。直線で邪魔をされなければ凄い差し脚を見せることもあるが、あくまで下級条件限定と言える。クラシック路線で勝つためには前が崩れる展開が必須。

◆9/16 中京 ダ1400m新馬戦

・ミリアッドラヴ(ニューイヤーズデイ×レディバード) 評価A

それなりに速く流れるペースを先行追走し、最後はダノンフィーゴと競り合いになりながらも振り切って勝ったレース。上がりもダート戦の割にはかなり速く、2着馬ともどもポテンシャルの高さを証明できるレースになった。能力は間違いなく高い。

ニューイヤーズデイ産駒は今一つ目立たないが、スピードが不足している上にMachiavellianが強い馬特有の「まったりしたペースじゃないと走れない」が出てしまうのが難点。Mr. Prospector系の闘争心が失われているので、一本調子で速すぎないレース、つまり1400mがベストポジションになる。

HaloやTurn-toをうまく生かしてそこだけに集中させた配合はシンプルで美しく、特筆すべき点こそないものの及第点は十分にクリアしている。

上がり1ハロン:12.2秒
残400~200m:12.1秒
ラップ:35.4-36.7(前傾)

ニューイヤーズデイ:Machiavellian産駒はMr. Prospector系ではあるがHaloなどのスピード系の影響が強く、闘争心をむきだしにして走るようなスタイルではない。軽い芝、軽いダートを楽に走れた時に最大の能力を発揮するような感じになる。相手関係を見ながら走るようなタイプ。

◆9/16 中京 芝1600m新馬戦(牝)

・ゴージャス(ゴールドシップ×サトノジャスミン) 評価B

距離が伸びてこそというより、ペースが緩んでこそというゴールドシップ産駒がマイル戦で勝ち上がるだけでも驚き。母がアメリカ系で固められた配合で、その結果として短距離向きの気性をプラスされたというところだろう。

マイル戦にしてはペースが緩めだったのはゴールドシップ産駒には幸運だったはず。上がりタイムは今の馬場状態にしてはそれなりに速いので、決して恵まれ勝ちではない。ただし上位に入っても通用するレベルかと言えば疑問。

配合は「とりあえず母の白毛を再現したい」という程度のコンセプトだと思われ、質は高くない。

上がり1ハロン:11.0秒
残400~200m:11.5秒
ラップ:37.6-34.0(超後傾)

ゴールドシップ:気性の強いステイゴールドよりも、母父メジロマックイーンの影響を受けてかなり気性が穏やか。そのせいもあってスタートから飛ばしていくようなレースは全く不向き。多頭数は意外に我慢するが、スピードが求められたらその時点で終わり。人気過剰になりやすいので馬券的には美味しくない種牡馬。

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「競馬最強の法則」にて血統理論記事を短期連載しておりました。血統の世界は日々世代を変えてゆくものだけに、常に新しい視点で旧来のやり方にとらわれない発想をお伝えしたいと思います。