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三秋縋『さくらのまち』感想

※当該作品のネタバレを含みます。










『さくらのまち』を読みました。
感想、結構難しいですね。
イメージ的には『いたいのいたいの、とんでゆけ』と『君の話』の中間くらいの作風だなと思います。三秋縋の作品は、すでに失われた関係がテーマになっていることが多いのですが、今作はかなり顕著ですね。なんたって、高砂澄香はもう死んでいる。ボーイミーツガールの重要な部分がもう消えてしまっていて、こっちの関係が主軸なのかな?と思えば、そちらも潰えてしまう。
ラストもちょっと作風が違って、今までの作品ってビターエンド、あるいはアンハッピーエンドで終わって、「他人から見れば不幸ないしはもっと幸せな未来があったが、当人たちは満足している」「物語としての着陸は悲劇だが、確かに幸福を得ている」という結論が多かったのに対し、今回はちょっと悲劇要素が強すぎる。結局のところ、尾上が物語を通して得られたことは、失ったものに比してかなり少ないのではないかなと感じます。
ただ、これまでと比して特徴的だったのは二つ、ミステリー要素の強さと、作者の思想が出ているところですね。三秋縋の作品は結構きれいに伏線が張られていて、主人公がそれに気づくあるいはテーマとして回収されるように構成されています。ただ、今回はわりと予期できる答えを各キャラクターのセリフに散りばめている。ちょっとミステリーに寄せていますが、一長一短な要素だと思います。二つ目の思想についても、三秋縋は常々物事の考え方をあとがきで話してくれる方なわけですが、今回の死生観がもろに出てくる作風はちょっと衝撃でした。「あとがきに代えて」で記されていた「ある種の恐怖」「死生観」「福祉」あたりでかなり誠実に作者なりの回答を出している気がします。
三秋縋のファンが求める儚いものの描写や甘酸っぱいボーイミーツガールとは少し異なっていましたね。

いったん思いついた感想はここまでです。

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