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移動/機嫌

移動が好きである。

いつであったかは忘れてしまったが、「旅行すると、私が好きなのは旅行ではなく移動なんだ、と気付く」というような内容のツイートを見た。それ以降、事あるごとに「移動」を意識するようになった。

そんな中、友人2人と長距離移動を伴う旅行をする機会があった。
旅の第一段階として高速バスに乗って空港に向かったのだが、バス車内では会話することなく、それぞれにそれぞれのことをした(沈黙が心地良い関係性とはとても有難いものである)。そんな中、私は吉本ばなな『キッチン』の最終章を読み終えて涙を流したり、奇奇怪怪のPodcastを聞きながら外の景色を眺めたりと、ベストオブ一人時間を過ごした。

そして空港到着後。
異様なほど上機嫌に友人に絡んだ自分がいて、驚いた。驚きながらも上機嫌を保ち、そのエネルギーを発散し続けていた。
底辺レベルに機嫌が悪い時の自分が、落差を感じて多重人格を疑ってしまうようなレベルの上機嫌だった。不機嫌な時の私が埃っぽい床だとすれば、この時の私は天井を突き破って雲の合間にフワフワと漂っていた。

そう、間違いなくこの移動は自分史上最高の移動ランキングに入る。そして私は「移動好き」だと自覚したのである。

正直旅そのものよりも、この新たな自分の一面を知ったインパクトが強すぎた。本当に私はどこまでも自意識過剰だ。


⚪️


そういえば、好きだった世界史の予備校講師がゲルマン民族大移動について教えてくれた時、「人間には本来『移動欲』が備わっているのかもしれませんねえ」と言っていた。

人類が普遍的に抱く「移動欲」。興味深い。
そして私はこれから20数時間の移動をする。楽しみでならない。

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