火薬の匂いと太鼓の音が響き渡る、深夜のバスターミナル【トルコ・ブルサ】
トルコの古都ブルサで3日間の滞在を終えて、パムッカレのあるデニズリに向かうため、夜のバスターミナルで時間を潰していた。
深夜0:00発のバスだったため、暇つぶしに仕事でもしようかなとカフェでカタカタしていたら、外がなにやら騒がしい。
スポーツでも歓声しているかのような大勢の男の人の叫び声と、どんどんっと響く大きな太鼓の音。
音がする方へ目を向けてみると、ターミナルの外に大きな人だかりができていた。
喧嘩してるのか盛り上がっているのかよくわからなかったけど、色がついた煙や花火のようなものも見える。太鼓を抱えている人たちが数人見えたので、喧嘩じゃないにしても「こんな場所で深夜にお祭り...?」と不思議に思っていたが、自分のバスの順番になってその正体がなんだったのか理解した。
定刻通りバスは来て、順番に乗り込む乗客。
私も荷物を降ろし寝る準備に入ろうとした時だった。
私たちが乗るバスの周りを、先ほどの賑やかな集団が「わー!」やって来て前方の方をぐるりと囲む。煙に包まれるバスと、耳元で響き渡る笛や太鼓の音。
「おぉおぉ....」ちょっと不安に思っていると、バスに一人の男性が乗って来た。
その男性はバスに乗り込むと、フロントガラスの向こう側の集団に向かって、帽子を取りビシッと姿勢正しく敬礼をした。そして一層高まる集団の歓声。
日本でぬるりと行きて来た私でもなんとなくわかる。
彼の美しくまっすぐな姿勢と、整えられた髪型や服装、その場の空気で、
「あぁ、この男の子は兵役に行くんだな」と理解した。
近くにいたおじさんが教えてくれた話だと(カタコト同士なので正確さは定かじゃないが)、トルコの兵役はただの訓練だけではなく、実際に戦場に行くことになるようだ。
平和な時代なら行く現場がないかもしれないかもしれないが、シリアを空爆したこともあるし、最近だったらもしかしたら。
「トルコで兵役に行くことは国を守れる名誉なことなんだよ。だからみんなでお祝いして送り出すのさ。」
そうおじさんは教えてくれた。
日本でも9条改正の話が時折出るけど、今の日本は国民が守りたい日本じゃないのかもしれない。国が変わったのか、国民が変わったのか、はたまたその両方なのか。
「守りたいものは、自分で守る」
家族でも、恋人でも、友達でも、大切な故郷でも。
家族や恋人、友達は守ってあげたいけど、
なんで国になるとそれが人ごとになるんだろうか。
自分には大きすぎる。果たして本当にそれだけ?
答えはまだ出ないけど、きっとシンプルなことなんだろうなって気がする。
そんなことを考えた夜だった。