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NiziU Mini Album 『AWAKE』通し聴きのススメ(後編)

*前編はこちら

こんにちは。
とあるマヤペンです。

前編に引き続き、『AWAKE』通し聴きストを増やすべく
活動を続けていきたいと思います。よろしくお願いいたします。



🦢前回までのあらすじ🦢

YOAKEとスイノンで完璧な自己紹介をしたNiziU一行は
ラジオ三部作を経て愛に気づき、人生を肯定するに至る。
最強のCメジャーで歌いあげるLife is Beautifulに
WithUはなすすべもなく膝から崩れ落ちるのだった。(尊すぎて)

『AWAKE』通し聴きのススメ

Life is Beautiful(Cメジャー)→CRUSH(Dマイナー)
お隣さんのヤバい一面

そんな最強のメジャー曲から、一気にマイナーのCRUSHへ。
2曲目のユニット曲の登場です。
CRUSHの名のとおりガールクラッシュ感満載。
新しい私への自信に満ち溢れた、自分を肯定する一曲です。

Life is Beautifulが、世界を愛することで自分の人生を肯定していくのに対し
CRUSHは世界に挑戦していくことで自分の存在を肯定していく
ベクトルは違いますが、実はどちらも「肯定する曲」という点では
似たような性質を持っているのかもしれません。

調性から見ても、この2曲は実はそれほど遠くない関係です。
♭の数は1つしか違わないので、お隣さんみたいな距離感ですね。
ただこのお隣さんが急にバットを振り回して「Crush Crush Crush」とか言い出します。怖すぎる。
実は言いたいことは少し似ていたりするので、何かの拍子でこの2人が仲良くなれたらいいですね。


超余談ですが、ライブツアーで振り回されていたバット、グッズ化されてほしすぎます。

CRUSH(Dマイナー)→Memories(F#マイナー/Aメジャー)
準備ができたら元気よく

始めに言ってしまうと、この2曲のつながりが今回のアルバムの中で一番好きです。
調性のつながりはあまり感じられない2曲ですが、
そんなことはどうでもいい、と言わんばかりの推進力を感じるつながりだと思いませんか?

事件を起こすのは、CRUSHの一番最後の不思議な和音です。
冷たく響くのに、ぐっと前に進むような
CRUSHの世界からはみ出てしまうような和音。
その推進力は、これまで住み慣れた世界を覆う幕を突き破ってしまう。
突き破った先の空間には、いままであった酸素がない!

瞬時に息を止める。


無音の静寂の中に


緊張だけが走る。




その空間を貫くかのように響く「Hi!」!
手をぐっと掴まれて一気にMemoriesの世界へ引き寄せられます。
ありがとうアヤカ。一人の人間があなたのお陰で救われました。

CRUSHで前に進んでMemoriesでぐっと引き寄せられるという
この一連の運動に、たまらなく惹かれるんです。

歌詞のつながりも最高です。

「You ready for the new me?」(新しい私を迎える準備はいい?)
「Hi!」(やっほー!)

超迎え入れてる。元気よく歓迎してる。
緊張と緩和ですね。
何度聴いても飽きない。大好きです。

Memories(F#マイナー/Aメジャー)→AlwayS(Aメジャー)
どっちつかずをそのままに

そんな陽キャな雰囲気で始まるMemoriesですが、表記のとおりマイナーかメジャーかをなかなか断定しづらい曲です。
Aメロやサビのコード進行は
F♯m→Bm→E→A→F♯m→Bm→E→A→…
をひたすら繰り返しているのですが
ご覧のとおりFm(Fマイナー)とA(Aメジャー)が出たり消えたりを繰り返しており、曲の印象が定まりません。
この2つは平行調の関係なので同じ世界観ではあるのですが
明るいのか暗いのか一概に言えない曲、ということですね。
ポップスはこういう曲が多くて本当に楽しいです。

YOAKEとスイノンは2曲が平行調の関係で対になっていましたが
Memoriesは1曲の中で対が生じている。
なんだか、卒業間近の春って感じですね。
嬉しくも悲しくもある。期待も不安もある。スタートでもフィナーレでもある。
どっちつかずで、どっちもある。そんな心持ちが、このコード進行に託されているようです。

とはいえ最後はキレイにAメジャーの響きで終わるので
同じAメジャーで始まるAlwaySにはバッチリつながります。

ただ。
AlwaySの始まり方も一筋縄ではいきません。
冒頭から「さみしくなる今日の夜」の最後の和音に至るまで
ピアノのベースライン(音が一番低い声部)にAが出てきません
ベースラインにAが出てくると「ああ、この曲の軸はAなんだな」と
ほっとできたりするんですが、それが少しの間留保される。
コードの進行自体はMemoriesとは異なりますが
実はAlwaySにもどっちつかずの気持ちが引き継がれています。

この不安はAlwaySの様々な歌詞に、音に、痛みを伴うような質感で描かれています。聴くのが少し辛いとさえ思うことがあるほどの重み。
この痛みは、どこかで報われるのでしょうか。
この痛みは、NiziUにとってどんな意味を持つのでしょうか。
NiziUの4年間とは何だったのでしょうか。

私は、最後のBメジャーへの転調こそが、その不安へのこたえだと感じています。

AlwayS(Aメジャー)→AlwayS(Bメジャー)
一歩また一歩の その先へ

調号の#が増えることを「精神性の深まり」と表すことがあります。
#も♭もないCメジャーは現実的な強さと表現しました。
そこから#が増えていくにつれて、精神世界や愛の世界が深まっていく
そんなことを、クラシック音楽の世界では考えることがあります。
AメジャーからBメジャーへの転調は、#が2つ増えます。

特筆すべきは、AlwaySではAメジャーからB♭メジャー(半音転調)ではなく
AメジャーからBメジャー(全音転調)が採用された点です。
きっと、♭の世界(B♭メジャー)に行くよりも#を増やして世界観を強めることで、NiziUの成長を、救いを描こうと思ったのではないでしょうか。

CRUSH、Memoriesと続いてきた、はみ出しやどっちつかずの不安定さが、この転調したBメジャーの世界で救われる。

濁った水だって、曇った空だって、霞んだ道だってきっと澄み渡る。
洗濯機に投げ込むようなインスタントな変化ではなく
澄み渡っていくことが「きっと」起こるんだと期待する。
傷は「いつか」癒えるんだと願う。
ここには祈りのような時間があります。

この祈りの時間があるからこそ、濁ったこと、霞んだこと自体が、はみだしどっちつかずだったこと自体が、大切な「私の思い出」に変わるときが訪れる。
このBメジャーへの転調は、その瞬間を捉えたものだと感じています。
この曲がこのアルバムの最後に据えられている意味が、なんだかわかる気がしてきました。


『AWAKE』の世界 
見落とした空にはさ

ようやく、アルバムの頭から終わりまで来ることができました。
私が感じている『AWAKE』の世界が、少しでも共有できていますでしょうか。

最後に、『AWAKE』全体を眺めたときに気づいたことに少しだけ触れます。それは、この『AWAKE』が虹に挟まれる形になっていること。

NiziUを描いた曲だけあり、終曲のAlwaySには「虹」が多く出てきます。
私は、曲の終盤にユニゾンで歌うメロディ自体も虹でできているんじゃないかと感じています。


Bメジャーの根音であるBから始まり、上がった後にゆるやかにアーチを描いて下がりまたBに戻って来る。
この形は、小さな虹ではないだろうか。

「濁った水だってほら」から「確かに歩いてきた」まで
6つの小さな虹がかかったあとには


1つの大きな虹がかかります。

さらに、このフレーズの「らにはさ いつもにじがある」は
移動ド(その調の根音をドとする考え方)で読むと
「ドシラソファミレド」の音階が見えてきます。

7つの7色の虹が、7つの音を使って描かれている。
虹を描くのに、これより美しい方法があるでしょうか。


終わりの虹を見つけることができたので
始めの虹を見つけて、長くかかったこの通し聴きのススメを結びたいと思います。

YOAKEとスイノンについて、YOAKEは下がり続け、スイノンは上がり続けることに着目し、前編ではそのメロディの形を並べて蝶のようだとお伝えしました。
このメロディ、逆に並べると

一転して、虹が浮かび上がります。

今のNiziUの大人と少女の両面性を表現したこの2曲は
潜在的に虹を含んでいるものなのかもしれません。


両端を大きな虹に挟まれるようにして存在する『AWAKE』
これがNiziUのアルバムでなくしてなんなのでしょう。

おわりに

書いたものを読み返しています。
絶対に書きすぎました。
キモいなぁ!

キモくあれるほどに熱中できるものがあり、私は幸せです。

一応書いておきますが
この一連の文章は完全に主観です。
平行調など、調と調のつながりの基礎的な部分は外していないと思いますが
#が増えることでの精神性の深まりなどは勿論諸説ある話です。
ただ、私はどちらかというとそういう教えやそういう感じ方を軸に自分の音楽観を持っているため、そう見たり考えることが楽しいんですね。
こんな見方もあるのかぁ、くらいにご笑覧いただければ幸いです。

書きながら『AWAKE』を聴いていて、今回の記事には関係ない些細な発見がいくつかありました。

Memoriesの「もしも君が傷ついたり挫けそうになったときは 私が支えるよ」って多分小学生の時に歌ったBelieveのパロディだよなぁだとか。
マリミそれぞれのエッジボイスが個性的でいいなぁだとか。
マヤはCメロのときに出番が多くて、とてもいいなぁだとか。
マヤの「基準はいつも胸の温度が上がるものがいい」が、ちょっと良すぎるなぁだとか。

少し関係あるところだと
アルバムの両端のYOAKEとAlwaySには「抱きしめたい」という歌詞がそれぞれ印象的に使わていますが
もう1曲、Life is Beautifulにも「Embrace 愛を抱きしめたら」という歌詞が出てきており、その歌詞の出てくる秒数がアルバムを通して再生した際のちょうど真ん中あたりだったりします。
多分偶然なんですが(笑)、「抱きしめる」という言葉が大事に使われている気がして、ちょっと好きな発見でした。

『AWAKE』がリリースされて2週間が経ちました。皆さんはいま、どんなふうに『AWAKE』を楽しんでいるでしょうか。


少しでも私なりの通し聴きを面白いと思ってもらえたなら
YOAKEとスイノンの両面性を
CRUSHとMemoriesの間にある静寂を
AlwaySの全てを肯定するBメジャーを
どうかじっくりと、抱きしめるように聴いていただければ幸いです。

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