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【展示私記】ATAMI ART GRANT 2024

皆さんはATAMI ART GRANT(熱海アートグラント)をご存知でしょうか?
2021年から毎年熱海で行われているアートイベントです。
初回の開催は閉業中であったホテル ニューアカオが会場として活用されたことで話題を呼びましたが、ニューアカオの営業再開後も熱海全域に会場を広めて毎年開催が続けられています。

初開催から共通して会場は美術館やイベントスペースではなく、熱海に昔からある建物を活用した展示となっているのが特徴です。
作品を観れるだけでなく、普段入ることのできない建物の中を見ることができるのも個人的にはかなり気に入っています。
かつての営みの気配を残す建物に作品が鎮座する光景は、現実離れした不思議な魅力を湛えており、熱海という日常と一歩離れた立地と相まって、作品に没入できる特別な時間を提供してくれているように感じます。


石崎朝子さんの作品「CITY OF A/M/P」
逆向きに設置された階段のようなオブジェが不思議な存在感を放つ作品でした。


(O)Kamemochiさんの展示会場「惡いけど、これはあなたの物(じゃない)です。」
人々の物語を交換する架空の「質屋」をイメージした展示。
ショーケースには何やら幼虫のようなものが。
上階へと続く歴史が刻み込まれた階段。


石山未来さんの作品「温泉の脳葉」
古びた和室に鎮座する様子が強いインパクトを放っていました。


熱海浴槽遺構群「尾崎ランドビル浴槽遺構」
ビルの最上階には小さな浴室がありました。


みょうじなまえさん、林航さんの展示会場「渚を編む」
熱海の海の歴史を巡るインスタレーション。
青い光が差し込む様子が海中にいるかのように錯覚させてくれます。


高橋穣さんの展示「Sculptural Surveying -Atami-」
古びたビルの中の住居がそのまま展示会場として使われています。
室内には所狭しと模型が並べられており、かつてここで暮らしていた住人の趣味への情熱を感じさせます。
ダイニングテーブルには組み立て前の模型が置かれていました。
この部屋の主人は今どうしているのでしょう。



無数のZINやアートブックが置かれている空間。


Monica Hapsariさんの展示会場「ガルバ(子宮)」
遊郭跡の建物が利用されています。
寂れた和室に鎮座する作品はある種の神々しさを感じさせると共に、どこか生々しく恐ろしくも思えます。
薄暗い廊下が会場の奥へと誘います。
2回の部屋にはかつての名残か、部屋名を示すプレートが掲げられていました。
誰もいなくなった廊下。


早崎真奈美さんの展示「Fluctuation」
主人を失った空き家が自然に還っていくかのような作品。


戸田健太さんの展示会場「Altantis」の外観。
住宅地の坂を登った先に、古いガレージのようなものが見えた。
壊されたガレージの壁の向こうには浴室が。
壁が取り払われ外界と通じているのに、隔絶された異空間のように感じられました。


加藤広太さんの作品「ATAMI_BB」
中央に設置されたモルタル製の箱にはサイレンが入っているらしい…?
部屋に足を踏み入れると何やら機械が動き出し、これから何が起こるのかとても不気味でした。


展示会場の一部、ATAMI ART VILLAGE。
村内(?)には不思議なオブジェや標識が。


Object "wall" painting [熱海]
絵巻物のように右から左に物語が展開していくように描かれているとのこと。


田中勘太郎さんの作品「固斂する風景」
柔らかな自然光が差し込む室内に、およそ似つかわしくない巨大な木のようなオブジェとこんもりと盛られた土が印象的でした。
吊られたライトは盛土の袂にある押し花を照らしています。


Ignasi Monrealさんの作品「LLAR」
人間にとってなくてはならないが脅威にもなり得る「火」をテーマにした作品。


長嶺慶治郎さんの作品「Blow Up a House」
一見ただの住居ですが、長く敷かれたレッドカーペットがただならぬ物語を想起させます。


ご紹介したい作品はまだまだあるのですが、長くなり過ぎてしまうので特に強く印象に残ったものだけピックアップしてご覧いただきました。
正直なところこのイベントはまだまだ有名ではないようで、有名な美術館などの展示と比べると客足は少なめです。
2024年12月1日までの開催でまだ会期には多少の余裕があるので、この記事を見て興味を持ち、足を運んでいただくきっかけになれば嬉しいです。


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