シン・エヴァンゲリオンをもう観ることが出来ない人へ
1995年に生まれた私がエヴァにハマった理由
シン・エヴァンゲリオンが3月8日に公開される。前作の新劇場版Qの冒頭部分でエヴァキャラの中で1番好きな伊吹マヤが「これだから若い男は」と呟くところで「違う、こんなの私が知っているマヤちゃんじゃない」と涙を流した。ただ呆然と席に座っているだけになってしまった。一緒に観に行った高校の同級生は「カヲルくんかっこよかった〜」とはしゃいでいたが私はショック過ぎて言葉が出なかった。ただ少し当時の旧劇場版をリアルタイムで観て衝撃を受けた人達の経験を追体験出来たようで、嬉しかった記憶がある。
私がエヴァンゲリオンという作品のファンになったのは親戚のおじさんの影響が大きい。父の従兄弟に当たる人で自分から見たら関係がイマイチ何なるのか分からないが、中学2年生の時にそのおじさんが住む家に家族で行ったことがあった。私の父は北海道の道東出身でおじさんも同郷であり、おじさんから見たら両親、私から見たら大叔父と大叔母が神奈川に来るとのことだったので会いに来た。
おじさんはいわゆる独身貴族というやつで大きなテレビにスピーカーにレコードプレーヤーを所有していたり、絵を描いたりギター弾いたりとにかく多趣味な人であった。大人が話している間、子供たちは暇だろうとおじさんがテレビで流してくれたのは何を思ったのかエウレカセブンでそれがきっかけで後にエウレカセブン好きにもなってしまったのだが…アニメのDVDもたくさん持っていた。今度あのおじさんに会えたらエウレカセブンの話ができるね、と弟と話していたのだが、その1日が最後になってしまった。
実はそのおじさんは糖尿病を患っていて、尋ねた半年後に自宅で倒れてしまったのだ。会社に出社しないことを不審に思った同僚が見つけて病院に搬送されたものの、一命は取り留めたのだが話が出来なくなってしまった。それから大叔父と大叔母が住む北海道にある病院に入ることが決まって、父が部屋や携帯電話の解約や会社への書類の記入などの作業を手伝っていた。病気の話は聞いていたもののこないだ会った時は元気そうだったのにととても悲しくなったのを覚えている。そして、おじさんが集めていた大量のDVDとCDは大叔父は父に預かっていて欲しいと頼まれて我が家に来ることになった。
「面白そうなのがあったら自由に観ていいよ」
と言われたので、なんか無いかな〜と探していた時に発見したのが、新世紀エヴァンゲリオンの1巻だった。1巻観終えるごとに次を大量のDVDの中から漁って見つけるという作業を繰り返して3日足らずで旧劇場版まで観てしまった。そこからはフィギュアを買いに行ったりウエハース買い占めたり特典の台本を読み込む完全なオタクになってしまったというわけだ。
今だったら全巻揃えるくらいファンだったおじさんと互角に語り合うことが出来るんだろうな、とエヴァンゲリオンを観る度に思う。おじさんは今も北海道の病院に入院しているが、話をすることも出来ない状態が続いている。1日しか顔を合わせたことがないのにも関わらず、私の人生に大きな影響を与えているとは夢にも思っていないだろう。
これだけ長い期間引っ張ってきた作品だからこの新劇場版を観ることが出来なかった人は私の親戚のおじさん以外にもたくさんいるはずだ。だから早く完結、続編なんていらないと思わないことも無いのだが。
2021年の今、もしおじさんが元気だったらシン・エヴァンゲリオンをどう観るのか。そういった観ることが出来なかった人たちの分もしっかりとエヴァンゲリオンがどのような結末を迎えるのか見届けようと思う。