2024年9月27日〜コロッケを揚げる伯母〜
道端で泣きそうになった。
病と戦う伯母の意識が、だんだんと朦朧としてきて、幻覚を見たりしているらしい。
その話を聞いたのは、母と次の見舞いの日程を電話で相談していたときだった。
母の姉である伯母は、6人きょうだいの長女。父と母を早くに亡くし、妹弟たちを支えるために家庭料理のお店を開き、必死に働いてきた人だ。
自分の家庭は持たなかったが、従業員や常連さんに愛され、親戚のような付き合いの人もたくさんいた。
私たち甥や姪もかわいがってくれ、旅行も一緒に行ったし、たくさんお小遣いもくれた。
そんな伯母は病室で、コロッケを揚げている幻覚を見ているらしい。
コロッケ屋さんなのかってくらい、たくさん揚げていたもんなぁ。
私が伯母の料理で1番好きなコロッケ。
母は「もっと楽しい思い出はないのかしら。働き詰めで、やっとゆっくりできると思ったのに…」
と、伯母を哀れむような声で言った。
母は妹として、もっと一緒に楽しい思い出を作りたかったのかもしれない。
でも、お店に立つ伯母の姿はかっこよかった。料理を作る姿も、お客さんとの絶妙な会話も。
仕事を愛していた伯母らしく、お店にいる夢を見て、幸せな気持ちで過ごしてほしい。
一生懸命だった時代の中に、できるだけ会いに行くからね。
私のことを思い出せなくなっても。