ファッションショーフィッターの仕事
こんにちは、まやです。
パリでは今日からファッションウィークがスタートします。
2020年秋冬のプレタポルテコレクションです。
私はワーキングホリデーでパリに来てから7ヶ月が過ぎようとしているところで、
9月に春夏プレタポルテ、1月に春夏オートクチュール、そして今回の秋冬プレタポルテのコレクションに携わり、
製作もですが、ショーの当日はフィッターに入ることもしばしばあります。
フィッターとは、ショースタッフの役割のうちの一つで、モデルにコレクションピースを着せつけるお手伝いをする仕事です。
私は既に日本で働いていた時、ウェディングドレスのファッションショーで年に数回フィッターをやっていましたが、今まではそのブランドでしか経験がなく、その他のブランドのショーはパリに来て初めて参加することとなりました。
複数のブランドのコレクションに参加してわかったのは、フィッターの仕事は、ブランドによって多少なり差はあれど基本的にやることは同じということ、
そして驚きだったのは、アパレル業界に関係ない人でも、当日のみアルバイトで集められ、参加しているということでした。
実際に、フィッターの仕事はそんなに難しいものではないので、アパレルの知識がない人でも、未経験者でもほとんど問題はありません。
難しいスタイリングや気をつけなればいけないピースの担当には経験者が割り当てられることが多いからです。
そして更に驚いたのは、ファッションウィーク毎にフィッターのアルバイトに参加して、アパレル業界ではないけどフィッターはベテランです!という人がいることでした。
早着替えがある場合のショーではこれほど心強い人はいません。
そんな方たちがいるのも、コレクションショーが年に何度も行われる国ならではですよね。
ということで、色んな人がいるフィッターですが、製作側(ブランドスタッフ)の事情を知っている且つ、複数ブランドのフィッター経験がある私から見て、
予めフィッターの仕事について予備知識がある方が未経験者でも参加しやすいかなとか、経験がある人でももっとこうしたら良いのではないかと思うこともあるので、
フィッターの仕事を細かく紹介しつつ、私が心がけていることを書いていきたいと思います。
(本来仕事内容はブランドスタッフが当日細かく説明してくれるものですが、ブランドスタッフは連日コレクション準備で夜中まで作業してそのまま本番を迎え、朦朧としている人もいるので、伝え忘れてしまうことがあったり、説明している時間がないほどバタバタしている場合は、十分な説明がないまま本番〜なんてこともあるので、事前に予備知識があった方がいいだろうなぁと思うことがよくあるというのもあります。笑)
単純にフィッターって何するの?と、興味がある方もぜひ読んでみてください。
舞台裏のプロフェッショナルを少しでも感じていただけるかなと思います。
*服装・身嗜み*
服装は基本的に全身黒で動きやすい服。
黒がいいのは、バックステージにはカメラが入ることもあるので、コレクションピースを目立たせるため、自分が悪目立ちしないため、舞台袖までモデルを誘導した時にうっかり客席から見えてしまっても暗闇に溶け込めるため、などの理由があります。
要するに黒子です。
化粧は薄め、赤の口紅はNG。
着替えさせる時にコレクションピースに自分のお化粧がついて汚れてしまわないようにするためです。
マスクをするとより安心ですが、実際は早着替えでめちゃくちゃ動いて息苦しくなるので、マスクしてても辛くなることの方が多いです。笑
爪は短めに切っておく。
モデルの着替え手伝いの時はもちろん、早着替えとなると動作も荒くなるので、モデルの体や、繊細な生地のコレクションピースにも傷をつけないよう、爪はきちんとケアしておいた方がいいです。
*持ち物*
持ち物は実際何もなくても大丈夫で、指定されることもほとんどありませんが、これがあった方がいざという時に便利!と思うものを書いておきます。
・黒のミニバッグ(ショルダーかウエストポーチ、両手が自由になり身動きとりやすいもの、貴重品を入れるためにもあると良い)
・簡単な裁縫道具(縫針、糸、ピンクッション、目打ち、糸切りバサミ、メジャー)
・工作バサミ
・マーカー
・安全ピン
・絆創膏
基本的に必要なものはブランドスタッフが用意していますが、だいたい袋や箱にまとめられて邪魔にならない場所に置かれています。
その位置を把握していなかったり、他の人が使用していたり、いざ緊急に必要になった時にわざわざ取りに行く時間がないということもあるので、最低限の用具は自分の手元に用意しておくと便利です。
ショー中は突然何が起こるかわかりません。
コレクションピースが破損するということも本当によく起こります。
もちろん、破損したら必ずブランドスタッフに報告してから直しますが、そこでスッと針と糸を用意できたらとても素晴らしいです。
*フィッターの仕事の流れ*
荷物を全て会場内に運んだら、開封作業を行う
(ウェディングドレスのファッションショーは、裾を引きずるものが多く、白で繊細な生地も多いので、荷物を解く前に床全面に生地を敷き、完全土禁にする)
ハンガーラック(一つにつきモデル1〜2人が使用)・椅子・全身鏡をフィッティングルームに配置し、汚れていたら拭く
ハンガーラックにモデルのネームプレートを貼る
各モデルのハンガーラックに、スタイリングされたコレクションピースやアクセサリーなどの小物、靴を振り分けていく
同時に、モデル用のガウンとスリッパ、必要な下着(インナー、ニップレス、肌の色のショーツなど)もセットする
服にかかっているビニール袋を取り外し、小さく折り畳んでまとめる
小物や靴も全て袋から出す(小さな小物で、なくなりそうなものは袋に入れたままでも良い)
コレクションピースをアイロンする
※これは扱いに気をつけなければならないもの、とても繊細な生地のものなどがあるため、素材や作品にきちんと理解のある人のみができる仕事で、製作に関わっている人か、フィッター兼アイロナーとして雇われた人が主に担当する
スタイリングカードをコレクションピースのハンガーに掛ける
※スタイリングカードとは、モデルの名前、顔写真、ルックの服・小物・靴の写真が貼られてスタイリングの詳細が書かれたもの
※スタイリングカードは各ルックごとに用意されている場合と、各モデルごとに用意されている場合がある
****ここまではブランドスタッフがセットしていることが多く、単発のフィッターバイトであれば、ここから先が主な仕事です****
スタイリングカードに記載されているピースが全て揃っているか、服・小物・靴にシワや汚れ、破損箇所がないか確認する
大きいイヤリングで落下の恐れがあるものにはイヤリングの内側に強力両面テープを貼っておく
スタイリングカードを見ながら、服の着せつけの予習をする(前後ろ、空きはどこにあるか、どうやって閉めるか、など)
※複雑なデザインのものや特に繊細に扱わなければならないものは、製作チームから説明があることが多い
ヘアが先か、着替えが先か確認しておく
※ヘアがとても大きいものだったり、頭かぶるタイプの服の場合は、着替えの後にヘアをセットすることもある
モデルのヘアメイクが終わって、着替え開始時刻まで余裕があればガウンに着替えてもらい、時間がなければすぐに着せつけに入る
※この際、透ける素材のルックで、モデルがもともと履いているショーツが肌の色ではない場合、用意したショーツに着替えてもらう
モデルの着替え手伝いとは、服の前後がわかるように渡したり、被り物は頭と腕をどこから出すか誘導したり、ボタンやファスナーはフィッターが締めてあげる
靴を履かせる際は、モデルに自分の肩に手をつくように言ってあげると親切
※基本的に、コレクションピースは綺麗にアイロンがかけられているので、モデルに無理な姿勢をさせて服にシワがつかないようにする(座らせるのもNG)
着せつけ終わったら、スタイリングカードに記載されているのと同じようにスタイリングされているか最終チェックをする
バックステージは狭いので、トレーンの長いドレスや大きいコレクションピースのものは、モデルが動きやすいよう、裾を持ってあげたりサポートしながら舞台袖まで付き添う
早着替えがある場合、
次のルックのピースを着替えやすいようにセッティングしておく(ファスナーを開けておくなど)
ランウェイからバックステージまで距離があり、モデルが走らなければならない場合、舞台袖まで迎えに行き、場合によってはその場でヒールを脱がせ走らせたり、動きやすいようサポートする
早着替えでは迅速に動き、モデルの着替えを手伝う
靴の変更がない場合は靴を履いたまま着替えさせることもある(どちらが効率が良いかはショーが始まる前に決めておく)
早着替えかつ、ヘアチェンジがある場合はヘアと着替え同時進行になることが多いが、複雑な服・ヘアで同時進行できない場合、どちらが先にやるか話し合っておくとスムーズ。
※着替え後はヘアさんが椅子に登ってヘアセットをし、着替え前ならモデルが椅子に座ってヘアセットをする。ヘアセット中にアクセサリーや靴をセッティングすると効率的。
モデルは一人ずつバックステージに帰ってくるので、自分の担当モデルがいない間、時間があるようであれば、隣のフィッターの着替えを手伝うと尚良い。
早着替えは早ければ早いほどいいので、とにかく手が入る限り率先して手伝いに入り、モデルを早めに舞台袖に送り出すことが大切。
着替えが大変なコレクションピースであれば、事前に複数人でフィッターをやることが決められているが、そうでない場合は予め隣のフィッターと話し合って、助けが必要かどうか、手伝いに入れる余裕があるかどうか、リハーサルの段階にでも話し合っておくと良い。
モデルがフィナーレを終え、ランウェイから戻って来たら私服に着替えてもらい、脱いだコレクションピースに破損や紛失がないか最終確認する
****ここまでが単発フィッターバイトの仕事で、片付けは主にブランドスタッフが担当することが多いです****
コレクションピースは元々かかっていたビニール袋に入れ、いくつかのラックにまとめてかけるようにする。
※空いたラックは1番低い位置に下げ、まとめておく
アクセサリーや靴、下着などはそれぞれまとめて、元々入っていた箱にしまう。
スタイリングカードやモデルのネームプレートなどもそれぞれ回収する。
順次、搬出トラックに荷物を運ぶ
お仕事終了!!!お疲れ様でした!!!!!
フィッターのお仕事、いかがでしたでしょうか?
ずいぶん長々と書いてしまったのですが、私はずっと自分の経験を言葉で整理したいと思っていたのでスッキリです。笑
これから初めてフィッターをするという人にも、この記事を見せながら抜かりなく説明できますしね☺︎
この記事を書いたのはフィッター未経験の方への予備知識のため、というのもありますが、
全くアパレルに関係のない方でも、ファッションショーの裏にはこんな仕事をしてる人もいるということを知っていただき、関心を持っていただけたら嬉しいです。
それでは、私は今日もフィッターをしに行ってまいります。
2020.2.24 まや