AIに物語を書かせてみた
ぼくにはわからなかった。
「でも、なんでこんなことをしたの?」と、ぼくはいった。
「それは……」と、彼女は言葉を詰まらせた。「それは、あたしにもわからないわよ。だって、自分でもなにをしたいのか、よくわかっていないんだもの。ただ、なんだかこうしていたい気分になって……、それじゃあ駄目なのかしら」
そして、また泣き始めた。今度は本当に泣いていたのだけれど、さっきとは違ってとても悲しげな声だったので、それが妙に印象に残った。
ぼくは彼女を抱きしめたくなるような気持ちだったのだけれど、それをしたらいけないことのような気がして、ただじっとしていた。
「あたしって、どうして生きているんだろう」と、彼女がいった。
「そんなこといったって、仕方ないじゃないか」と、ぼくが答えた。
「でも、人間ていうものは死ぬために生きているわけでしょう? みんなそう思って生きているはずだし……、それなのに生きていていいのかなあって思うのよね。ねえ、どうして人間は生まれてきたと思う?」
そんなことは考えたこともなかったから、「わからない」と答えた。すると彼女は少し考えてから、こんなことをいうのである。
「もしこの世界に生まれてくる人間が一人だけだとしたらね、生まれる場所は選べないし、親を選ぶことはできないでしょう? ということは、生きる場所だって選べやしないじゃない? だとすれば、生まれた瞬間から、その場所に縛られていることになるんじゃないのかな。もしもその場所で自分が嫌な目にあったりしたとしたら、そこが自分の運命だと思ってあきらめなくちゃならないんじゃないかしら。それでね、あたしはいつもそのことを考えているうちに不安になってしまうことがあるの。たとえば自分の人生とか自分の命というものがすごく軽薄なもののように思えてしまうことが、よくあるわ。そういうときに限って、誰かが悪い人みたいに見えてきちゃうんだけど、そういう人は、あたしの人生なんかどうでもいいと思っていて平気で他人を傷つけたり殺したりするようなことをしているわけだから、そういう人を好きになる必要なんてこれっぽっちもないってわかっているつもりなのに、いざ目の前にいるその人がそういうことをする姿を見たりすると、なんだか急に憎らしくなって許せなくなってしまうことがあるの。これはどういうことなのかしら。きっと理屈ではないんでしょうけど……、それにしても不思議ね」
そのときのぼくには彼女の言葉の意味がよくわかっていなかったのだけれど、いまではその意味が理解できるようになっていた。彼女もまた、自分の居場所を求めているということなのだ。だからこそ彼女は他人を傷つけることもできるわけだし、自分の生命を投げ捨てることだってできるというのだ。
それはおそらく彼女なりの考えであり、結論でもあるのだろう。
ぼくはしかし、そんなことを考えるのはもうよしにした方がいいと思った。なぜなら彼女は自分の生命を軽々しく扱うべきではないと思えるだけの心の余裕を持ってくれていたからだ。
だからあとはぼくの仕事だった。とにかく彼女の生命を守らなければならないのである。そのためにできることといえば、ぼくも同じような覚悟を決めるしかなかった。彼女に付き合って自殺をしようというのではなく、ぼくも自分から死を望むように努めればいいだけのことだと考えたのである。
そしてそれはうまくいきそうな感じだった。