古代マヤ「ワイエブとは何か?」「マヤ新年」とはいつか?
2020年1月新年がはじまり、1月25日の中国春節を祝う頃からコロナウイルスの感染が始まりましたね。 古代マヤ暦では年の守護者が交代する伝統的新年と、ハアブ暦を祝う新年がやってきます。
今日はその違いや意味、成り立ちを知らない方のために基本をしっかりお伝えできるようやや詳しく説明いたしましょう。
1.古代マヤ暦に「新しい始まり」はいくつあるか
古代マヤ・アステカ文明史や文化人類学、マヤ民族や生活の史実などをしっかりと学んだことのある方であれば、古代マヤ暦が「占い」がメインなどでは全くなく「誰かによって認識が変えられるものではない」ということがきちんと理解されているはずです。
立派な「古代メソアメリカ文明」としての生きた歴史と叡知があって、「スピリチュアル」や「現代風のオカルト」として宗教観や精神世界の系譜の仲間に入れられるようなものではないということをまずはっきりと認識しておかなければいけません。
と同時に、古代マヤの写本や遺跡に書かれている内容やマヤ文字を学んだことがあれば、マヤ先住民たちの間では神話や神話素が生きていて、世界観が壮大で、宇宙観や天体観測によって天の知恵を授かっている、類まれな文明の叡智をもつ森の民であることがわかります。さらにシャーマニズムや生きた精霊、精神の成長や大いなる力への従順さをもつ天空の民であることも理解できるだろうと思います。
さて前置きを理解して頂いた上で、古代マヤ暦に「新しい始まり」つまり「新年」と呼ばれているものがいくつあるのか、それは何を意味しているのかを紹介します。
1)2つあるツォルキン暦(神聖暦)の「新しい始まり」
20サイン×13で260日という「ツォルキンサイクル」があります。
わからない方はこちら➡古代マヤの世界・暦・宇宙
〇「ワニ・1(1 Imix)」・・・神聖暦「ツォルキン」は「ワニ・1」からスタートして「祖先・13」まで260日で一巡します。Codex Borgiaには260のカレンダーが描かれていて、始まりは「ワニ1」です。新しい始まりではありますが、「新年」という「新しい年」なる概念としては捉えていないようです。
〇「サル・8(8 B'atz ')」・・・神聖暦の途中に「サル・8」トカゲ周期がやってきます。マヤ先住民族のなかには、この「サル・8」を神聖暦の新年として大切にするという思想、世界観があります。最初私もなぜ「サル・8」が新しい始まりなのかよくわからなかったのですが、マヤキチェー族の長老の語っている説明がとても理にかなっているので、納得しました。
マヤの口承伝統としては、次のように説明されています。
「新しい人間の誕生を願い生命の糸を織り上げる始まりのためには、男性の2本の腕と女性の2本の腕、男性の2本の脚と女性の2本の脚を全部織り上げていく必要がある」
どういうことかというと、男と女が4本の腕と4本の脚を合体させ、抱き合って生命を誕生させるがごとく、妊娠周期ともいわれる神聖暦の新しい始まりを祝うのだよ。
という、生命誕生の秘話的なはなしがあるようです。
2)伝統的マヤ新年という新しい始まり
古代マヤ先住民族はグアテマラの高地や低地に数多く共同体をつくって暮らしていました。マヤ暦といっても時代や地域や先住民によって少しずつ伝承が異なる様子もみられます。さらにいうと日本で「弥生文化」とか「古墳文化」という時代に文字が読み書きできる人がどれだけいたかを考えるとわかると思いますが、マヤ暦や天の知識や絵文字や紋章文字などを読み書きできるのは「神官」や「王」と呼ばれる人たちだけです。その他多くの民衆は、農作業をしたり狩猟採集をして家族や地域を養っているわけですね。
なので新年を祝うということについても、地域ごとに伝承が違い、長老や神官の告げ知らせがあって、祝っていたわけですから、統一してはいない。ということを理解しておく必要があります。
マヤの高地では「Col Ab'」という暦が使われていましたが、マヤの低地では「Col Haab'」と呼ばれる暦を使っていました。メソアメリカ全体では「Xiuhpohualli」とも呼ばれていたカレンダーです。
この低地で使われていたのが、今私たちが呼称している「ハアブ暦」の始まりです。
そしてキチェー族にとっての伝統的、儀式的新年は「年の守護者」の交代にともなって五穀豊穣を祈る儀式でした。その「年の守護者」は「マヤチラム・バラムの書」に記載されている「年」を担ぐ守護者です。
「一年」を担ぐのは、東西南北の方位の守護者が交代でかつぎます。
東=「香Caban」、西=「シカManik」、南=「道(E'b)」、北「風Ik」
現在はこの4つの年の守護者(イヤーベアラー)が、担ぎ手になっています。
☆2012年12月21日、5125年の時代バクトゥンが終わって、新しい年のイヤーベアラーが何になるのか、長老会議では「ワシ」になる!とかいろいろと騒がれていましたが、交代はしなかったようです。
・マヤ暦イヤーベアラーがワシに交代?!!2013年 02月 21日
伝統的マヤ新年:「年の守護者」が交代する日・・・
2020年2月20日「香・8」
2021年2月19日「風・9」
2022年2月19日「シカ・10」
2.ワイエブとは何か。何のためにあるのか
先ほどの「ツォルキン暦(神聖暦)」は太陽の循環には関係ない「聖なる時間」と呼ばれる暦です。つまり神聖暦は、太陽の動きやグレゴリオ暦(西暦)や四分の一日ずれる閏年の計算にはまったく無関係ということです。
さらにいうと西暦はマヤ暦よりもずっと後にキリスト教によって制定された暦ですから、そのことをリマインドしておきましょう。
さて「ワイエブWayeb」とよばれる5日間について、説明してみましょう。
1) 太陽の動きに合わせて作られた「ワイエブ」
ハアブ暦を構成する2つの主要なコンポーネントがあります。
1つ目は「トゥンTun」と呼ばれる360日間で、20日×18か月間の期間です。
2つ目は、最後の終了する期間にある「名前のない5日」と呼ばれる「Wayeb」の5日間です。
「ウイナル」WinalまたはUinalとして広く知られているのは、20日が18カ月というサイクルです。つまり「ウイナル」にはワイエブ"5 nameless days"ははいっていません。だから「名前がない」わけですね。
現代の暦とは異なり、マヤの月の長さは変わらず、各月は20日(20サイン)で構成されています。古代マヤの人々は惑星の動きや月や太陽を何百年も観測していたので、太陽がつまり「ウイナル」からずれていくことを知っていました。
太陽が地球から見た位置とまったく同じ位置に出現するのにかかる実際の時間は365日よりわずかに長いため、太陽と地球の位置に合わせて太陽暦「365日」と4年ごとに1日を追加する閏年が取り入れられました。これはカレンダーをカウントするための必要な調整ですよね。
つまり「ワイエブ」という5日間は、太陽というキニチアハウの動きを表すために必要な時間を加えたものであって、初めからあったものではないということです。
そしてもう1つ古代マヤの人たちは、私たちが考えるのとは異なるやり方でこの問題を考えました。マヤの宇宙的思考です。
4年ごとにうるう年に1日を追加する代わりに、52年ごとに13日を差し引くというカレンダーサイクルを受け入れました。 それが「カレンダー・ラウンド」「52ハアブ暦」「73ツォルキン」の重なりの意味です。
・20キン(デイサイン)=1ウイナル
・18ウイナル(月)=1トゥン(20×18=360) 年
・20トゥン=1カトゥン(20トゥン7200日) 約20年
・カレンダーラウンド=52ハアブ=73ツォルキン
・1バクトゥン=20カトゥン(約394年)ロングカウント
・13バクトゥン=5122年=20×13
古代マヤ人は、角度や建造物の測定に360度というシステムを使っていました。
つまり、ウイナルやカトゥン、バクトゥンというマヤ暦の大きなサイクルを預言する「チラムバラムの書」には「ワイエブ」という「名前のない5日間」は組み込まれていない。という事実です。
2) ハアブ暦の新年「0POP」
とはいっても、太陽の動く速度を変えることはできないので、5日間を加えた「365日」を太陽周期の取り入れていますが、基本は「0・POP」がいつか?ということです。
2020年3月31日が上の画像どおりの「マヤ暦」となります。
ツォルキン暦:「9・Kaban(香・9)」
ハアブ暦:「0・POP」ポプ月の始まりの日
つまり今年のハアブ暦新年は、3月31日「香・9」です。
そして名前の無い5日間「ワイエブ」の始まりは
2020年3月26日「道・4」から始まり、3月30日「コンドル・8」までが名前の無い「ワイエブ」5日間です。
これはマヤ考古学マヤ文字の権威「マイケル・コウ」博士も、現地のマヤ教育機関である「Maya Tecum」も言っていることです。
3.聖なるカレンダーとしての認識
「マヤ暦」を語って宗教的な組織を確立させる動きや、スピリチュアルなイベント、お金儲けにつかっている団体など、この10年で星の数ほど生まれては消えてきています。マヤ暦人類滅亡説もその1つでしたね。
つまり本当のマヤ暦を語っているかどうかは、正しくマヤ暦を理解している人にしかわからない。という構図ができあがっています。
マヤ暦を語っているが実や本当のマヤ暦ではないとか、伝統的新年にワイエブをくっつけてイベントをしようとしているスピリチュアルな団体とか、それはそれは数多く出現します。そしてそれがいいとか間違っているという議論をする気は私にはありません。なぜなら、それが古代マヤ文明の叡智に基づいている正しいマヤカレンダーかどうか。を見分ける力があるからです。
マヤの権威や専門研究家、マヤの長老たちは、そのことをわかっています。
なので正しく理解しましょう。と促すだけです。
◆聖なるカレンダーを象る20日間では、創造と破壊、正と負、善と悪、世界、社会、家族、世界に存在するすべての基本的な二重性なる力が表現されています。
人間の心、存在と運命は、個々の生活において、20のナワールの力の組み合わせに依存しています。
あなたがすることはすべて、自分自身、家族、コミュニティに影響を与えるということを知ることは重要です。
たくさんの情報が飛び交うなか、何が正しいのか何が真実で何が嘘なのかを見分けるという審美眼は今の時代とても大切です。
年の守護者は、今年は「香」です。
それは神聖暦の儀式暦においても、ハアブ暦新年(0POP)においても「香」が着座しています。
そのことが新しい始まりを象っているフォルムだ。ということを皆さん忘れないようにしてくださいね♪