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エッセイ「ただいまピンターダ」

12月と1月は、怒涛の飲み会ラッシュだった。

コロナが5類になってから初めての年末だからか、新しい商業ビルがオープンしたからか、すすきのには観光客も含めて大量に人が戻ってきていた。

コロナ中のあの静かなシャッター街の寂しさを知っているから、喜ばしくはあるのだけれど、酒だけではなく人にも酔ってしまった。

肝臓にやさしくない日々に乗じて「ピンターダ」に行って来た。無論、以下の報告をするため。

足が遠のいていた理由は色々ある。

自宅とは全く逆方向ということ。
「さよならピンターダ」を完成させるまで行かないという願掛け。
行くのがほんの少し、辛い場所ということ。

まあ、いろいろ。

「タイチくん」のモデルは、元恋人とマスターをごっちゃにしたみたいなひとで、マスターはわたしと彼のその恋や想いを唯一知っていてくれたひとだ。

泣きじゃくるわたしに、美味しいお酒を作ってくれた。そんな夜が何度もあった。


「彼はまだ、あそこにいるみたいだよ」

ちらほらと元恋人の近況を教えてくれた。
生きてれば、いいんだ。
元気なら、いいんだ。

そう思えるくらいには回復してる。
いつか偶然出会えたらきっと、
「元気だった?」
って、笑って言える気がする。

でもね。
本当に、元気で生きていれば、それだけでいい。

「またね〜」
店を出て「わたし」が「あいしてろ」を書いたであろう壁の前で手を振る。

きっとまたしばらく来れないと思う。
でもできるだけ長く、そこにいて。
いつまでも、わたしの秘密のおもちゃ箱でいて。

北24条の駅で地下鉄から降りてくる恋人達を見ながら、強くそう願う。


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