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フランスドライブ旅の顛末…②

フランスへの旅行最終日、車でモンサンミッシェル とエトルタを訪れた後、ドイツまでの帰路を目指すその道中の話。

ノルマンディーから住んでいたドイツの街までは車で6時間くらい。まだまだ先は長い。この旅を一緒にした友達家族とは家族ぐるみのつきあいで、今回以外にも何度か旅を共にしてきた。

気心が知れているので車内でも終始リラックスできる。はしゃいでいた子ども達は疲れてうとうとし始めた。…そんな時だ。

運転席と助手席の夫達がにわかに慌て出した。何やら焦っている様子。

「ガソリンがない。…でも調べてもこの先サービスエリアが全くない…。」  

「…!!」

当時、スマホはない時代。頼れるのは紙の地図と信頼度の低いカーナビのみ。まったりしていた車内が急に緊張感に包まれた。

高速道路を知らない街で下り、インターチェンジ付近にガソリンスタンドがないか探す作戦に出たが、田舎過ぎて建物すら見当たらない。

早々に諦めて再び高速に乗り、次のインターで下りてまたガソリンスタンドを探す。こうしている間にも燃料は減っていくので無駄に走りたくないのに本当に見つからない。

そうこうして、とある田舎町でマクドナルドを発見。ここでガソリンスタンドが近くにあるか聞いてこようと、夫が代表して店内に入って行った。…が、すぐに浮かない顔で戻ってきた。

フランス語のわからない夫と英語を理解しない店員さんとのやり取りは全く意味をなさなかったらしい。マック=アメリカ=英語きっとOKのはず…という安易過ぎる皆の期待は簡単に打ち砕かれてしまった。

過去のフランス旅行では英語で対応するスタッフがいないレストランに入り、メニューすら理解できずに『poisson(魚料理)』をpoisonのことかな?えっ、毒!と解釈したことのある私達だ。まあ、色々想定内ではある…。

気を取り直して、また自力でガソリンスタンド探しだ。もう辺りは真っ暗。子ども達の眠気はどこへやら、言葉も通じない国での大人達の動揺が伝わり、2人とも不安顔。大人もさすがに誰1人余裕がなく、ただただどこかにガソリンスタンドがないか祈る気持ちしかなかった。

そしてそして、ついに!奇跡のように1軒のガソリンスタンドが現れた。よかった!助かった!歓声をあげながらスタンドに停車。

しかし、ここで新たな問題発覚。

なんと、現金払いは受け付けておらず、フランスで発行されたクレジットカードしか取り扱いできないらしい。…まあ、現金がそこに入ってますと一目瞭然の機械は破壊されて盗難されるのがオチだ。海外ではそもそもドリンクの自動販売機すらそんなに見かけない。…それにしても手持ちのクレジットカードも使えないとは…!

再びどうする?どうなる?!と不穏な空気が流れる車内…。絶体絶命のピンチ!!その時だ、スタンドに1台の車が入ってきた。救世主登場!!この人を逃すわけにはいかないとばかり、必死に事情を説明。ラッキーだったのはその人が英語を話せたことだ。

こちらの言うことを信じてくれて、その方のカードを拝借し無事に給油することに成功。「ドイツから来たの?僕も仕事でその街の近くによく行くよ。」と笑顔で気の利いた会話までしてくれる。なんて余裕のある人だ!

チップも含めて多めに現金でお支払いしたのは言うまでもない。車内で見守っていた私や子ども達も感謝の気持ちを伝えたくて、旅の終わりに辛うじて残っていたかっぱえびせんを無理やり手渡し、メルシーメルシーと口々に連呼してその方と別れた。神に会えた…。そんな気持ちだった。

さて、ようやく安心してここから本当に帰路を目指すのだが、もうこの時点で夜10時過ぎていたはず。日付も変わった深夜にベルギーのサービスエリアで休憩のため車を止めた。夜の長時間ドライブは神経を使う。ましてや異国だ。高速道路のライトも日本に比べて少なくて怖い。

少しでも休息できるスポットはありがたくて、外に出て思いっきりストレッチしたり深呼吸したり眠気を冷まし、皆思い思いに疲れを癒していた。さあ、出発しようか…という時だ。

車の外に人が立っている。びっくりしたが警官だった。幼い子どもを連れた謎の東洋人が夜更けのこんな場所にいるのが奇妙だったのだろう。職務質問されてしまった。ベルギーで職質…初めての経験だ。

すんなり解放されたが、警官がまたフランス語やオランダ語しか話せなかったら面倒なことになっていただろう。

果てしなく感じた帰り道、ドイツの自宅に到着したのは朝方3時を過ぎていた。無事に帰宅できて本当によかった。それにしてもこんなにハプニング続出の1日はなかなかない。文字通りの長旅!

でも今でもこうしてはっきり覚えているのだから強烈だけどとても貴重な旅の思い出だ。









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