1人野鳥の会
アメリカミシガン州に暮らしていた数年間、私がまず興味を持ったのが野鳥。
家は森林に囲まれていたので朝は爽やかな鳥のさえずりで目が覚めた。とっても贅沢な環境だった。
日中部屋の中にいても窓の外に赤や青い色の鳥が枝先に止まるのが見えるので、ついつい姿を追ってしまう。
スズメや鳩なら見過ごしてしまうけど羽の一部だけ赤い鳥とか全身黄色い小鳥とかやって来るのだ。おもしろくて目が離せない。
ある時は早朝にコンコンコン…という音が聞こえて目を覚ました。何の音だろうと外に出ると家の外壁をキツツキがくちばしでノックして穴を開けているところだった。
野鳥だけでなく、庭にはリス、ウサギ、カモがよく遊びに来ていたし、時にはアライグマやシカまで現れた。そんな環境が新鮮で、住み始めてしばらくは窓越しに野鳥や動物を観察するのが日課になっていた。そのうちその行動を「1人野鳥の会」と自分で名づけてどんどん活動に没頭。
撮っていた写真のほとんどが野鳥、動物ばかりだったため日本にいる友達からは
「ねえ、アメリカで人と触れ合ってる??」と心配されたほど。
車の運転にも慣れようと少しずつ1人で買い物に行くようになり、本屋やペットショップも発見。本屋ではワゴンセールで鳥の図鑑を見つけた。北米に生息する鳥が綺麗なイラストで解説されていて、鳥の名前を知りたい私にピッタリ。
この街の店員は皆フレンドリーでそれはとてもありがたかったけど、買い物のたびに何か話しかけられることが当初プレッシャーだったってのが実はある。
この書店では、レジで店員から
「あなたとっても良い本を選んだわね〜。」
と子どものような褒められ方をされてちょっと恥ずかしかった。
ペットショップには野鳥のためのエサコーナーがドッグフード、キャットフードコーナー並みに広く設けられていて、種類もキツツキ用、ナッツ入り、フルーツ入り…などバリエーション豊か。
早速私もバードフィーダー(野鳥用エサ台、エサ箱)を買って庭に設置した。
購入の際、この時も店員に話しかけられた。
「そのバードフィーダーだと、きっと鳥が食べる前にリスに食べられると思うけど…」と。そしてその忠告は正しかった。
かわいいと思っていたリスは、ミシガンでは珍しくもなくどこにでもいる。そして常に空腹らしい。バードフィーダーのエサを独占するので、そのうちちょっと憎らしくさえなってきた。
1人野鳥の会…耳をすませば聞こえて来た美しいさえずりと、庭で出会った様々な鳥や動物に私はずいぶん癒されていたと思う。あの穏やかで贅沢な時間が懐かしく、とても愛おしい。
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