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自然体験や主体性を重視した保育の担い手~私の未来理想図②フリーランス保育士編~
現在私が名乗っている
・フリーランス保育士
・プレーリーダー
・コミュニティコーディネーター
という3つの肩書きを紐解きながら、私の夢について本気で綴るシリーズ。
①コミュニティコーディネーター編では、私の人生に響くターニングポイント的な出会いだった
1.まちの保育園…………「地域・コミュニティ」と「子育ち」と「つなぎ役」
2.森のようちえん…………「野外・自然」と「保育」
3.プレーパーク…………「居場所」と「あそび」
のうち、1つめの「まちの保育園」の事例と、それに共感して今私が名乗っている肩書きのひとつである「コミュニティコーディネーター」について綴ってきた。
当初は前編・後編の2本立てにするつもりだったが、書ききれないので3本立てにしたいと思う。
今回は、中編として2つ目の「森のようちえん」の事例に触れていきたい。
と、その前に少しだけ補足したいことがある。
夢は、私にとっての憲法である
『誰もが自分らしく生きられる社会を実現すること』
って、正直ざっくりしすぎていると思われるだろうか。
『目標、世界平和。』ぐらいの、
──そりゃあ誰だってその方がいいけど、じゃあどうやってそこに向かうの?具体的に何がしたいの?
と思わせるような普遍的な言葉に均されているのだけれど、これには私なりの意図がある。
法経学部総合政策学科に所属していた大学時代、法律系の授業をかなり受講していたのだが、そこで憲法や法律の文言は敢えて余白を残したようなざっくりしたものになっている、ということを知った。
それは、時代によって解釈が変わっていくことを想定して内包しているからである。
その都度、そこに関わる人たちと解釈をすり合わせていく必要があるということで、つまりは否が応でもコミュニケーションを必要とする仕組みになっているのだ。
ああ、それいいなあ。
と思ったから、自分の人生の指針となる「夢」についても憲法みたいにざっくりとした、色んな解釈ができる普遍的な文言にしてみている。
その都度、関わってくれる人たちとコミュニケーションを取って、解釈を伝えていけたらという意図だ。
ということで、前の記事から、現時点での私の夢の解釈を語っているわけである。
ここからは前編と同様に、2018年~2019年にかけて「ご縁をつむぐ旅」ブログで公開した記事をもとに、再構成して綴っていきたい。
各事例の状況は時間が経って変化しているため、あくまで当時の情報としてとらえていただき、そこから私が共感しているエッセンスを理解していただきたい。
森というフィールドで育つこどもたち
2019年4月25日
「森のようちえん」という保育スタイル
皆さんは、「森のようちえん」と呼ばれる保育施設や団体があることを知っていますか?
名前は聞いたことがある、という方も多いのではないかと思います。
でも、実際にどんなことをしているのか、なかなか知る機会ってないですよね。
森のようちえんは、もともとドイツの「Wald Kindegarten」を和訳した言葉だそうです。
日本では、自然体験活動を基調とした保育・子育てに取り組む施設や団体の総称として使われています。
実際の形態は「幼稚園」にとどまらず、保育園、こども園、育児サークルや親子のコミュニティなど、本当に様々で、全国各地に無数の「森のようちえん」が存在します。
普通の保育園のようにこどもだけ預かるタイプもあれば、親子で参加するタイプもあります。
もともとは、園舎を持たずに自然の中で過ごすというのが基本的な考え方だったこともあり、預かり型でもお昼寝なしで昼食後には帰る、という幼稚園スタイルが一般的だったと言います。
しかし現在は、保育のニーズに合わせる形で、お昼寝ができる園舎を持ち、午後まで預かりができる保育園スタイルを取っているところも増えているようです。
全国的にも名の知られている、鳥取県智頭町の森のようちえん「まるたんぼう」は、預かり型。
鳥取・島根出張のついでに視察させてもらったのですが、お昼寝から午後を過ごすための場所を持ちつつ、基本的には町内にいくつか確保している提携フィールドで過ごすのだそう。
こどもたちは、その日どこで過ごすかをみんなで相談して、バスで移動し、そこで1日を過ごしていました。
深い森に分け入って、木登りをしたり探検をしたり、思い思いに遊んでいるそうです。
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宮城県仙台市で活動している「森のようちえん 虹の森」は、単発でも参加できるイベント型に近いタイプ。
親子で参加する企画もあれば、子どもだけのクラスもあります。
私がお邪魔した日は、親子で野外調理をするという企画でした。
最近は直火で焚火ができる場所も限られているので、親世代ですら火おこしの経験がないこともよくあります。
こどもと一緒に、大人もワクワクの初体験ができちゃうなんていいですよね。
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子育てサークルのようなタイプだと、お母さんやお父さんが自分のこどもを連れて集まる「おさんぽ会」なんかもあったりします。
野外保育に興味のあるママ友と一緒に、とりあえずやってみよう!とチャレンジするのも素敵ですよね。
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このように、地域によって、運営主体によって、なりたちによって、本当に様々な形の「森のようちえん」が存在します。
フィールドも「森」に限らず、山、海、川、畑、公園、などなど。
地域性やそれぞれの状況に合わせて多様です。
一般的には園舎と園庭のみで行われる保育を、屋外の「自然」へ飛び出して行う、というようなイメージでしょうか。
全国組織としては「森のようちえん全国ネットワーク連盟」というNPO法人が存在し、交流フォーラムや学び合いの場を開いています。
全国で「森のようちえん」として活動している団体の多くが、こちらの団体会員として登録しているようです(2019年4月現在で約230の団体が登録)。
「ボーイスカウト」と「森のようちえん」に通じること
私が森のようちえんの存在を知ったのは、地域おこし協力隊になった2017年のこと。
何かの事例集に載っていたのを、偶然目にしたのでした。
それまでは、名前すら聞いたことがありませんでした。
私は、小学生の頃からボーイスカウトに所属し、自然体験活動に育てられたという実感があります。
自然の中で、そこにあるものを工夫していかに楽しく快適に過ごすか。
その難しさと楽しさを体で感じてきました。
地元の茨城県つくば市でも、まわりに自然体験活動に親しんでいる人は少なかったのですが、ボーイスカウトで身に着けた知識や技能は様々な場面で活き、関係ないコミュニティでも重宝されました。
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みんな、ボーイスカウトやったらいいのに。
と思っていましたし、ボーイスカウトのような活動や考え方を、幼児教育に活かせないものかとずっと考えていました。
そしたら、もう、あったんですね。笑
森のようちえんの事例を知って、そうそう、これこれ!と思いました。
つくづく、世の中知らないことばかりだなぁと感じます。
同時に、目指す先や、考えてることは、だいたい同じなのかも、とも。
ボーイスカウトでは、「そなえよ つねに」というモットーと、「日々の善行」というスローガンが掲げられています。
また、スカウト個人の行動指針ともなる「ちかい」と「おきて」が定められています。
年齢によって所属区分があるのですが、小学生が所属する「カブスカウト」向けに、この行動指針をかみ砕いた「カブ隊のさだめ」がとても分かりやすいので、紹介したいと思います。
カブスカウトは すなおであります。
カブスカウトは じぶんのことをじぶんでします。
カブスカウトは たがいにたすけあいます。
カブスカウトは おさないものをいたわります。
カブスカウトは すすんでよいことをします。
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森のようちえんでも、多くは異年齢がまざり合った「縦割り保育」の形をとっていることや、自然の中でこどもたちの自主性・主体性を尊重し、こども同士の関わりあいや、本人の「自分との闘い」のようなものを重視していることがあります。
これってすごく、ボーイスカウトの考え方と重なるんですよね。
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「自然」を前にすれば、人間は恐ろしいほど無力です。
でも、だからこそ、自然が教えてくれるものがたくさんあります。
自然は、予測がつかない。
広い余白を持った懐の深いものです。
人間同士の関わりさえも、年齢や性別や立場をひっぺがして、等身大の「人」にしてくれるのです。
こども同士も、大人同士も、こどもと大人でも、ありのままの「人」と「人」として向き合うことができるのが、自然の持つ不思議なパワーのひとつなんだと思います。
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こどもから「責任」を奪わない
森のようちえんの考え方の中で、私が特に共感したのは
「自分の責任で自由に遊ぶ」
ということ。
こどもに「責任」を求めるって、ちょっと難しく感じるかもしれません。
でも、例えば自分の力では登れない木の上に、「登りたい!」と言って保護者や保育者にだっこしてもらって登ったとします。
木の上からの景色を知ることはできるかもしれませんが、自分でやり遂げたという達成感や自己肯定感を得ることもなければ、その過程から学ぶものもほとんどありません。
自分の手で体を支えられずに落っこちてしまったら、大人のせいにして泣くでしょうし、怪我や痛い思いをすれば、それはただの「嫌な記憶」として刻まれてしまいます。
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その代わり、どうやったら登ることができるか?と自分で考えながら、少しずつ手の力をつけ、体の使い方を覚え、少しずつ、少しずつ、何日もかけて木登りに挑んだとしたら。
登り切ったときの達成感は計り知れませんし、やり遂げた誇らしい自分に自信がついてきます。
何度失敗しても、それは本人の糧になりますし、怪我をしたとしても、こども自身の力が及ぶ範囲内での怪我は大したものでないことがほとんどです。
途中であきらめたとしても、それは自分の責任。
誰のせいにもすることはできません。
悔しくなって、また、チャレンジを再開することもあるでしょう。
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やりたいことをやる、という「自由」には、「責任」が一緒についてくるものですよね。
大人が、無意識のうちに、良かれと思って、こどもたちの「責任」を奪ってしまっていることも、多々あると思います。
こどもたちが、なるべく自分で「責任」をとれるようにしてあげるということが、森のようちえんでこどもと関わる大人の、共通の認識なのです。
島根県津和野町「山のこども園 うしのしっぽ」にて
この2年間、あちこちの「森のようちえん」を視察という形で訪問し、現場の様子を見せていただいたり、取り組みについてお話をお聞きしたりしてきました。
少し前にお邪魔した、島根県津和野町では「左鐙」という地域で活動されている「山のこども園 うしのしっぽ」を訪ねました。
こちらは、牧場を運営する会社が地域型小規模保育事業の制度を活用してつくったこども園で、自然保育を基調としながら園舎も設けた認可園として運営されています。
つまり、普通の保育園と同じように、毎日園児たちが通ってくるところです。
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園長先生に視察を申し込むと、ありがたいことに登園から降園まで丸一日、皆さんと一緒に過ごさせてもらえることに。
左鐙という地域は津和野町の中でもいわゆる辺鄙なところに位置しており、保護者が比較的アクセスしやすい中間地点までバスで迎えに行くという方法を取っていました。
園があるのは牧場の敷地内なのですが、施設の周りは本当に自然そのまんまのフィールドが広がっていて、こどもたちは自分の意志で過ごしたい場所を選び、自分たちでその日の過ごし方を決めます。
先生たちは、安全に配慮しながら、こどもたちの自主性を尊重し、終始見守っていました。
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森のようちえんの日常が教えてくれた本当の「見守り」
この日はまだまだ寒く、冬の雪降る時期だったため、朝からこどもたちはソリを抱えて、斜面を見つけては滑り、少し移動してはまた滑り。
薄く積もった雪がどんどんハゲて、すぐに土が見えてきます。
どろんこになっても、そり遊びは楽しい!!
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と、ひとしきりソリ遊びを楽しんで、次の遊びへと移る時でした。
「あっちの畑」で遊びたい子と、「こっちの畑」で遊びたい子、意見が分かれました。
──どっちで遊ぶ?
こどもたちは、それぞれ自分が行きたいほうを指して主張します。
「じゃんけんで決めよう!」
と、じゃんけんが始まったのですが、1対1で始まったじゃんけんが、
「僕も!」「わたしも!」
と知らぬ間に3人、4人と増えていき、わけが分からなくなってしまいます。笑
すると年長の男の子が
「ルールを説明します!AくんとBくんがじゃんけんして……」
と仕切り始めました。
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でも、そこは異年齢ごちゃまぜの集団。
なかなかうまく決着がつきません。
そんな時、牧場の大きな作業車が迫ってきて、ひとまずじゃんけんを中断してみんなで道を開けることになりました。
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作業車をやり過ごすと、さっきまで話し合っていたことなんてどうでもよくなっていて、
「あっちの畑に行こうか!」
「いいね!」
と最初は「こっちの畑」に行きたかったはずの子も、何だか知らないうちに、みんな納得。
何だか大人はもやもやするような結末だったけれど、そうか、こどもたちは、納得がいけば、それでいいんだよね。
と妙に腑に落ちた自分がいました。
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大人はどうしても、決着をつけたくなってしまいます。
「結局、どうするの?」とか。
ケンカしたら、「ふたりとも謝っておしまいにしよう!」とか。
言ってしまいがちですよね。
でもそれって、表面上は決着がついたように見えるだけで、ほんとは、こどもたちが心から納得できていないかもしれない。
うしのしっぽの先生たちは、彼らのやり取りを終始にやにやしながら見守っていて、決して口を出すことはありませんでした。
たとえ「うやむや」に見えるような決着でも、こどもたちが納得していればそれでオッケー。
これが、本当の「見守り」なんだな、と実感しました。
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そんな、森のようちえんの日常。
一番大切だと感じたのは、こどもはもちろん、何よりも、保育者や保護者といった大人が、自分も心から楽しみ、余裕をもってこどもたちと関わっているということ。
「こどものため」ではなく、こどもと一緒に大人自身も自分らしい生き方を叶えるために、森のようちえんという手段があるのかなと思いました。
* * *
私が「フリーランス保育士」として取り組んでいること
上記の記事を書いた2019年4月の時点から、私自身として大きく変わったことがある。
それは「保育士」になった、ということだ。
紫波町地域おこし協力隊としての3年間を終え、大好きになった紫波町で、自分の夢を叶えるためにこどもたちと関わる活動を広げていきたい。
そう思った時に、ひとまず、地域のこどもたちや子育て中の親たちの現状を把握する必要があると思うに至った。
国家資格である「保育士」は、専科の大学や専門学校を卒業するという資格取得方法のほか、筆記科目と実技科目からなる保育士試験に合格するという方法がある。
私はこの保育士試験を受け、資格取得をしながら、町内の保育施設に保育教諭として勤務し始めたのだ。
実際に保育士として、現場の最前線に立ってみてたくさんの学びがあった。
延長保育時間もフルに使って、朝7:00から夜7:00までこどもを預けないと生活が成り立たない、という家庭も少なくない社会構造。
現場の担い手が少なく、ギリギリの人数で保育を回さなければならない実情。
全国にさまざまな先進事例がある一方で、それをインプットする機会や余裕を持てない現場感。
いろいろと事情も重なって、1年で退職することに決めた私だったが、より豊かなこどもの育ちに直結する保育の現場に、もっと第三者的な協力やエンパワメントが必要だと強く感じた。
だから、保育士としての専門知識や現場感を持ちながら、より家庭に近い地域側でこどもたち自身や保育現場を支える力になりたいと思い、「フリーランス保育士」としての歩みを始めたのである。
現在「あそびこむ」では、外遊びのイベントを積極的に開催している。
ボーイスカウトで培ってきた経験や、資格取得したネイチャーゲームの知識・手法を織り交ぜて、森のようちえん的な自然体験をベースとしたこども向けイベントである。
こうしたイベントを、非日常を創る「イベンター」としてではなく、日常を少しでも彩りたい「保育士」として取り組んでいるということに私のアイデンティティがあると思っている。
それが私の「フリーランス保育士」としてのあり方なのだ。
③へ続く。