【司法書士のなぜ】本当の株主を教えて教えてください
御社の株主構成を教えてください。
あなたはすぐに答えることができますか?これが意外と即答できない会社が多い。
そう問われた際に会社の方が即答できない場合、こちらから求める書類があります。「別表2の写しをいただけますか?」別表2は決算申告の際に作成する書類です。(司法書士ではなく税理士さんの作成する書類です)こちらには株主構成の記載があるので、多くの会社が最新の株主名簿を保管していないのでその資料から株主構成を確認することになります。
「真実の株主」とは
別表2には株主の住所氏名が記載されていますが、これは真実の株主とは限らないのです。「真実の株主」は、株主としての出資を行い、あるいは然るべき譲渡を受け、株主の権利を持っている株主のことです。ただし、別表2には必ずしも真実の株主だけではないのです。別表2を見た時に、真実の株主ではないケース。株式を譲渡しているが反映していない場合。そして、名義株主がいる場合。
名義株主(めいぎかぶぬし)とは
名義株主は、その名称のとおり、名前だけの株主です。「名前だけの株主って?」となるでしょう。その昔、株主は8名以上必要でした。しかし、なかなか人数を集めて全員にお金を出してもらうのは難しい。そんな場合、大株主に当たる人が他の人の分も出して株主にしてしまう。そして名義株主が誕生します。名義株主の怖いところは、時間がたつにつれて本当に名義株主なのかわからなくなる。当時と状況が変わることで、真実の株主だと主張してくるかもしれない。それこそ、どんどん業績が伸びて、株式としての価値が上ってくる。もちろん、非上場株式である以上第三者への譲渡は容易ではありません。でも、会社経営者にとっては単なる資産的な価値以上に会社の決定権に重要となるのです。その決定権がいわばお金すら出していない人に株式がわたる可能性がある。これが名義株の怖いところです。
名義株式の解消方法
名義株式は本人と連絡がとれ、協力を得られればスムーズです。ただ、それは一番難しい。では、基本的な流れを見ていきましょう。自分はお金を出していないのに、株主名簿(別表2)に名前がある場合、
❶この人と連絡を取ることができるか
❷事情を説明した上で印鑑を捺印してもらうことができるか
❸実印の押印とその印鑑証明書の準備をお願いできるか
①②③が全てクリアできならば即座に動きましょう。通常株式と譲渡する場合には、譲渡に関する税金がかかりますが、名義株主はそもそも株主ではない方が名簿に載っており、それを真実の株主に変更すると言う、誤った状態を適切な状態にするものです。正しい状態に書き直すことに税金も何もかかりません。ただ、その株主名簿(別表2)の変更をみた税務署がこれは、株式の譲渡ではないか?だとすれば贈与税がかかるのではないか?という指摘を受けないために、その名義株主の印鑑を押した「私の名前が株主名簿にありますが、実際にお金を出したのは○○氏で株主としての権利も私はなく○○氏が持っている」と言う書面を準備してしておくことで税務署の追求を免れることができます。また、当該書面を実印でもらっておくことでより書類の真正性が高まるのです。ちなみに、書類としての真正性は低くなりますが、認印で押しても書類としては有効です。
とはいえ、連絡もつかない、と言うことが多いと思います。この場合、なんとかして連絡を取ると言うことがまず一番です。過去の住所や電話帳、近隣への聞き込み。ただし、実際に損害が出ていない中でここまで動く方は本当にいません。
このまま放っておくとどうなるか
その名義株主をAとします。Aは自分が名義株主であることを知らないし、それに関する資料も何も持っていない。そんな場合に、会社が債務超過で株式は譲渡するにしても贈与税がかからないような場合、株主名簿を書き換え、別表2が変わっても税務署は何も言わないでしょうし、Aの家族も何も言わないでしょう。会社としても事実、Aはお金を出していないので、その事実に株主名簿を合わせただけです。
一方、Aは自分が株主であると言う自覚もあり、そのことがわかる資料も手元にあります。でも、それで会社に何かを言うつもりもなく、そのまま亡くなります。相続の手続きをしているときに、家族がその株主の資料を見つけ、会社名を検索してするとなんと大きく伸びている会社ではないですか!家族はその会社へ買い取りをお願いすることに、当然時価で…ということにもなりかねないのです。会社はその場合どうすべきでしょうか。Aはお金を出したわけではないので、買取を請求する権利はないとつっぱねますか?もし、そういえる会社はもっとそうそうに名義株主の解消に動いているでしょう。もしつっぱねるにしても、何か証拠はあるのでしょうか。もし設立当初、Aの出資のお金を出したのが別の人であることがわかる証拠が残っていれば会社の主張は通るかもしれません。でもどうでしょうか。あなたの会社にその資料はありそうですか。株式の譲渡(買取)は原則としてお互いに合意をした金額になります。Aの家族が株価の上がっているあなたの会社の利益に伴う譲渡金額を要求することもありえないことではないのです。
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