多様性の時代だからこそ「遺言」は必要となる
「遺言」を書く人、書かなければいけない人。というとどのようなイメージが浮かびますか?おそらくは、お金持ち・高齢者というイメージが多いと思います。私たちが日常生活で与えられる遺言のイメージは病気のお金持ちが亡くなって親族が集まって遺言開封という一見するとひと昔前のイメージが遺言のもつイメージだからです。そしてそれは、昭和の世代から今の世代まで変わらないイメージで持ち続けていると思います。
むしろ若い世代ほど遺言の必要性は高まっている
私たちの親の世代、いわゆる団塊の世代やバブルを謳歌した世代は、結婚して子供を持つ、自宅を購入して、長男が引き継ぐ。そんな世代の流れが一般的、少なくとも今よりも一般的とされる時代です。これは、相続においては第一順位として相続人となるのが「配偶者(妻または夫)」「子供」となる可能性が非常に高いということです。もちろん、その家族構成でも相続の際にもめることはないとはいえませんが、家族(親族)の中では最も関係性が強い家族ですので、もっと広い相続人になるよりは話し合いははるかに早い可能性は高いでしょう。
しかし、これからの世代、家族の在り方はどんどん多様になっていくでしょう。結婚する人、結婚しない人。パートナーを持たない人、パートナーはいるものの結婚はしない人。子供のいる人、いない人。離婚して再婚する人。離婚して再婚して離婚して再婚する人。いわゆる家族の形は「これが普通」という感覚は少しずつ薄れていくでしょう。しかし、相続における法律が変わりません。つまりどういうことかというと、相続関係が複雑化していく可能性があるわけです。
子供のいない夫婦の場合
私は昭和の終わりの生まれですが、同世代は共働きの夫婦が多いです。子供のいる夫婦もいれば、いない夫婦もいます。そして、持つことが当然ではなく、選択していく時代でもあるのです。もし、子供のいない夫婦が亡くなった場合の相続について考えてみましょう。
夫が亡くなりました。相続人は「妻」と「夫の兄弟」です。
もし、夫婦の共有口座が夫で名義であった場合、預貯金全部の解約は夫の兄弟の印鑑がないと行うことができません。これ、ゾッとしませんか。もちろん、日ごろから交流があり、容易に印鑑をもらえる関係の場合もあるでしょうが、なかなか頼みにくいと感じるのが心情だと思います。あなたの妻または夫の兄弟は、すぐに協力してくれると100%言い切れるでしょうか。
自分が亡くなった時のことを考えてみよう
以前、驚いたのが、ある男性が妻を受取人とした生命保険をかけていたのですが、なんと離婚後もその受取人を妻から変更せずそのままにしていたのです。変えるのが「面倒くさい」とのこと。この面倒くさいは自分がお金を受け取るのではないというのもあるでしょうか、変えなくても自分は特に困らないという面が大きいからだと思います。これを例えば再婚した際に、きちんと変更していればいいですが、もしそれを忘れていたら…。
新しい家族の時代に必要な「遺言」
私は若い人こそ遺言を書くべきだと思います。若い世代は、自分の死が身近なものではありません。それゆえに、自分が死んだ後の世界(社会)についてはやはり考えづらいのです。しかしこれは、ある意味チャンスです。高齢の世代であれば、死というのは身近であるがゆえに「考えたくない」という人も多いです。近しいからこそ考えたくない。
その気持ちが若い世代に少ないのであれば、できるかぎりネガティブなイメージを払拭することで遺言をすすめることは可能となると思います。私は遺言について考えるときに、「生命保険」を思い浮かべました。
自分の人生において、特に家族ができると生命保険に加入することは多くの方にとってハードルが高いことではありません。
加入動機はそれぞれでしょうが、少なくとも保険の説明をしてくれるライフプランナーの方々は、自分が亡き後の家族の生活について言及するでしょう。自分の死後の世界(社会)について当然に考える機会がそこにあり、かつネガティブなイメージはそんなに大きくはないかと思います。
遺言もそうあるべきなのです。現在は、遺言というと「物々しい」「難しそう」「ハードルが高い」というイメージがあります。もっと気軽なものとして浸透していければよいとも思っています。遺言までいかなくても自分の資産を洗い出して、それを誰に渡したいか考える。
そしてそれをきちんとメモとしてもでもいいので書いておく。(メモとして書いただけでは遺言にはなりません)自分の相続人を把握しておく。(意外とこれができていません)
でも、そのメモは相続人を強制できるものではないし、相続人が揉める揉めないを判断できるものではありません。資産をこう分けたい、この人に渡したいと考えたときに、実現できる手段はきちんとあるのですから、これを機に「遺言」について考えみてもいいのではないかと思います。
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