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ヴィルの病気と大きくなれない理由

下剋上の前にヴィルが何故ノルウェージャンフォレストキャットなのにこんなにも小柄だったのかがわかった事件があった。

発症前日は何事もなくお腹を丸出しで眠るヴィルさんに何も気付けなかった。だが翌朝、旦那は一目でヴィルさんの異変に気付いたのだ。猫博士がなせる技なのか、それともはたまた品質管理という職業病によるものなのか、それか発達障害ならではの気付く力なのかはさておき、その日はどうやら朝から調子が悪かったらしいヴィルさん。
あっという間に私が見てもまずいんじゃないかと思うくらいに悪化していた。

発熱が辛いのか、ヴィルさんは物置部屋の片隅で1人過ごしていた。それが事態のさらなる悪化のサインだと言うことに、当時の私は気付けないでいた。

旦那は急ぎヴィルさんを病院へ。

診断結果は「FIP(猫伝染性腹膜炎)」だった。

当時、1歳にも満たないヴィルさんの余命がカウントダウンを始めた瞬間だった。当時治療薬なんて無かったこの病の致死率はほぼ100パーセント。絶望的だった。

だけど私も旦那も諦めたくなかった。
それでも引き受けた大事な命だ。生きる為にできることは全部やろうと獣医さんと相談して、副作用で下手をすれば逆に死に至る薬を処方してみる事にしたのだ。
今思えばとんでもない選択だ。それでも諦めたくない、その一心で賭けに出た。

結果として、私たちはその賭けに勝った。
ヴィルのFIPウィルスは収まった。その時に私たちは気付いたのです。ヴィルが大きくなれない理由。身体が小さく兄弟の中でも一際小さかった理由。

ヴィルは猫コロナウィルスのキャリアだったのです。

一応、ブリーダーさんに報告して他の猫さんたちは大丈夫なのか確認をしました。

他の猫さんたちは皆そんな事はなかったそうです。
そして獣医さんからはこんな話もありました。どうやら遺伝的にこの猫コロナウィルスを体内に留めてしまう体質の子、それがヴィルさんだったのです。

ブリーダーさんは他の個体に変えましょうかと提案してくれました。しかし、私たちはそれをお断りしました。そんな提案が来るなんて思ってもいないほどに、私と旦那とヴィルさんは既に家族だったからです。もちろんメイさんも私たちの家族です。

本来なら去勢手術をしてからの血統書送付だったのですが、特別に去勢しなくても血統書を送付してくれる事のほか、通常金額の半額以下の支払いで良くなりました。

病気が治ってからの去勢も考えましたが、これがまた厄介で麻酔をかけると抵抗力が落ちて猫コロナウィルスが変異する恐れがあると獣医さんから言われました。
だから、去勢する事をやめました。代わりに他の子たちの避妊去勢手術は必須とする事で無謀な繁殖をしないようにする事にしたのです。

そんなヴィルさんは今では11歳となり、メイさんには負けますがほんの少しだけ身体が大きく逞しくなりました。

その話をついこの間、メイさんの通院で動物病院で会った同じ病で闘病中の猫飼いさんに話したところ「希望が持てました。ありがとうございます!」と言っていただけました。

なんの障害にもならないくらい奇跡の生還を果たしたヴィルさんですが、未来は決して甘くありません。先程も書いたように、ヴィルさんは遺伝的に体内に猫コロナウィルスを留めてしまう体質の猫です。それはどういうことかと言うと、今後加齢により体力が落ちた時に何が起こるかわからない爆弾を抱えていると言うことです。既に11歳、人間で言えば60歳を超えてきたからです。
それは明日来るかもしれないし、今日来るかもしれない。風邪をひいてちょっとでも体力が落ちた時はいつもハラハラしていましたが、そんなヴィルさんをみるのはスペシャリストの旦那の目が頼りです。

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