
宇多田ヒカルのコンサートに行ってきた
私の大好きな心の勝手な師匠、宇多田ヒカルことHikkyに会いに大阪城ホールに行ってきました!
プレミアムチケットの壁
全敗からの当選は大阪城ホール
宇多田ヒカル、今の若い人にしてみたらもう古参アーティストになるのでしょうか。昨年、Netflix で佐藤健と満島ひかりが主演の初恋が人気を博しました。内容も過去の恋愛と再会した男女の物語だったわけなんですけど、その時にもミレニアムヒットしたFirst Loveが流れていたのを思い出します。
16歳でJPOPの世界に異例の音楽を送り込んだ歌姫、宇多田ヒカル。そんな彼女も今年でデビュー25周年だという。。。すなわちそれは私も25年の月日を彼女と一緒に歩んできたということを意味します。そんな8年ぶりのライブに自分の人生を振り返るべくチケット争奪戦に参加したのは私だけではないはず。蓋を開けてみるとファンクラブもない、全員とてもフェアに抽選システムに参加できることも相まってかプレミアムチケットと当然なってしまいました!私も例外に漏れずベストは尽くしたものの全敗。敗戦した福岡、愛知、東京、横浜、このままではまずいかもと焦り、危うくもう少しで台湾と香港すら申し込もうとしてしまった2024年。「残念ですがチケットをご用意できませんでした」というお祈りメールを横目に「最後に彼女の声を聞いたのはいつだったろう…。」チケットを取るまでの道のりを半ば諦めてはいるものの絶望の日々を送っていました。
なぜ8年ぶりなのか?
Hikkyは今、息子さんと一緒にイギリスで暮らしています。
子どもの生活を基本に生きている彼女としては、日本にそう簡単には帰ってこれないし、きっと息子君が成長すればするほど、学校行事やらなんやらでお母さんとしての時間が必要になるだろう。そう思うとツアーというものは膨大な体力、時間、そして彼女の場合はロンドンと日本の往復の時間がエキストラでかかってしまう。何よりも、いくら飛行機が毎日運航しているからといって、気軽に海を行ったり来たりすること、それは海外生活を経験した人は想像できるかもだけれど、そんな簡単でもないんだと思います。だからこそ、今回を逃したら次はいつ会えるのだろうかと思ったのです。
どうして彼女は海外に住んでいるのか?
彼女はデビューしてから長らく日本に住んでいたし、その前も東京のアメリカンスクールに通っていた話は有名です。16歳でデビューを果たしてから彼女はうなぎ上りで人気を博し、一躍スターになりました。19歳で結婚、毎年何枚も新曲をリリースしていきます。そして離婚も経験しました。同世代の私としては、彼女は何か生き急いでいるような感覚もありました。テレビではいわゆる日本的な受け答えもできず、ヘイトも買っていたと思います。そんなある日のこと、彼女は突然無期限活動休止を発表し、ヨーロッパに飛んで行ってしまった。そこから彼女は日本での暮らしをしていないということになります。
海外ではなくてもよかったけれど、彼女は長年「人間らしい日々」おそらく穏やかな日々だと(ファンは)理解しているのだけれど、そういった小さな当たり前の日々という幸せを手に入れたかった、それを叶える場所が日本以外のところであるというのは驚きもしないし、ごく普通のことだと思うのです。そんなことを自分のようになんか嬉しく思うのはファンだからなのか、それとも何かちょっと一方的に彼女の歌詞を介して、彼女の心の中を覗いてきたからなのか…。
そして全国ツアー開催とチケットの連敗
彼女のそういった背景を知る人も知らない人も、宇多田ヒカルが紡いだ曲を1回も日本に住んでいて聞いたことがないという人のほうが珍しいのではないか?と個人的には思うくらいには、彼女の曲は、彼女がいなくなった日本でも流れ続けました。その結果、老若男女問わず多くの人々が宇多田ヒカルのプレミアムチケット獲得に精を出す結果になりました。
そりゃー行けるなら会いたい、声を聞きたい、それがファンの心情というもの。私はどちらかといえば内向的でアクティブな性格じゃないのだけれど、彼女の今回のコンサートならば日本全国を遠征することは厭わなかった。自分のけじめというか、良い機会だなとも思った25周年というライブ。しかしなら見事その思いは砕け散ろうとしていて、それはまる明日のジョーみたいな感じで、家族ももはやかける言葉もなく、福岡公演も東京公演が始まってしまいました。そのたびにズーンっとする自分を鼓舞して敗者復活戦に一寸の望みをかけて応募していたあるひの晩に奇跡は起きたのです。
大阪城ホールの突然の当選通知
大阪城ホールへの2枚のチケットを発見したときの私

この時の気持ちは本当にバグってました!
推しとか全然そういう文化に育っていない私としては、宇多田ヒカルのコンサートに行くために大阪まで遠征するなんてことも想像していませんでしたが、こんな形で未知の世界、大阪城ホールに行くための旅行が始まります。
憎き台風10号到来事件勃発
サンサンというなの敵
彼女の歌詞には「雨」「嵐」といった言葉が比較的多いのですが、本気の嵐をわざわざ連れてこなくていいのよ。。。
日本列島をゆっくり横断していった台風10号、サンサン。本当にギリギリまで行けるのかいけないのか、姉妹で肝を冷やしました。かなりの被害を出しながらゆっくり屋久島界隈を進むサンサンを横目に、大阪城ホールのライブが実現するのかしないのか、おそらく多くの人が祈るような思いで毎日台風情報とにらめっこしていたことでしょう。
我々の運命の行方を左右するのは「東海道新幹線」。やはり蓋を開けてみれば静岡界隈で豪雨で何時間も運転見合わせしたり、遅延したりが繰り返されることになりました。幸運にも?我々は運転再開のタイミングで往路は新幹線に飛び乗り(しかもガラガラ)特に大きな被害を感じることなく大阪入りすることができました。復路に関しても、午後には新幹線が止まる可能性が高かったので、大阪散策を諦めて午前中に新幹線で帰路に着きました。結果、この判断が功を奏し午後の運転見合わせに鉢合わせすることもなければ、家路まで雨に降られることもありませんでした。神様ありがとう。
SCIENCE FICTION TOUR 2024

大阪城ホール・セットリスト
宇多田ヒカルが公式でセットリストを公開しています、もしよろしければどうぞ!
1.time will tell
2.Letters
3.Wait & See ~リスク~
4.In My Room
5.光
6.For You
7.Distance
8.traveling
9.First Love
10.Beautiful World
11.COLORS
12.ぼくはくま
13.Keep Tryin’
14.Kiss & Cry
15.誰かの願いが叶うころ
16.BADモード
17.あなた
18.花束を君に
19.何色でもない花
20.One Last Kiss
21.君に夢中
22.Electricity
23.Automatic
当日の客層
中心がたぶん30代・40代だと思います。でも50代、20代も多く来ていました。ヒット曲が多い分、彼女の曲は多くの年代の方に愛されているなという印象でした。男性と女性の比率は女性が若干多いかな?という感じですが、カップルやお友達同士が多かったです。親子で来ている方もいたけれど、宇多田世代の子どもはまだ小学生くらいなのでそこまで子どもは多くなくて、どちらかというと娘20代、母50代とかそういう感じが多かったなーという印象を大阪城ホール2日目は感じました。
コンサートが開演したときに面白かったのは、古くからのファンの中では大定番曲の time will tell (その理由は後程)、あまりファンではない人、大御所曲だけを知っている人は馴染みのない曲なんですよね。だから盛り上がりがいまいちだったような印象を受けました。それよりも、Evaの主題歌だったり、CMでも爆発的に流されているTravelingやAutomatic、First Loveなどのほうが明らかに曲を知っている人口が増えたような反応がありました。これを見る限り、ライトファン層が結構チケット当選したのかなーという感じは印象としてありましたが、この日をきっかけに宇多田の曲沢山聞いてくれたら嬉しいなーとファンとしては願っております。
セキュリティーチェックは極甘
Taylor Swift と同様、海外は特に東南アジア、東アジアからお客様が来ていた印象でした。北京語なのか広東語なのかわかりませんが、中国語の方多かったです。あと耳にしたのはマレーシア語、タイ語は聞こえてきました。ということでセキュリティーチェック結構厳しいのかな?と思ったら想像以上にユルユルで、良き日本のコンサート会場という感じでした。
コンサートは録音、録画OKでしたが、SNSには掲載はNGということでアナウンスが会場からも本人からもあったのですが、やはりYOUTUBE等ではそれを理解していない主に中国人系の方の違法アップロードが目立ちました。難しいですね。
大阪城ホールは大正解
規模が結構小さい大阪城ホール。私たちは実は2階席の最終列だったのですが、アーティストまでの距離を感じないコンパクトさに驚きました。日本武道館や横浜アリーナよりもこじんまりしているし、音響も良く、そして最終列なのにアーティストの動きなどもしっかり裸眼で確認できます。
観客のペンライトなども囲うような会場設計だからでしょうか、まるで自分も包まれているような感覚に。不思議な会場!でも大当たりだと思います。正直次から大阪城ホールでコンサートみたいかもしれない。ちなみに横浜公園で最近よく使われるようになった「横浜Kアリーナ」は階段が急でかなり見づらく利用しづらい会場として知られているようです。今後東京界隈の公園で横浜Kアリーナ多様するアーティスト増えそうですが、私は敬遠していきたいなと今回の宇多田ヒカルのKアリーナ利用した方の口コミを見て感じました。横浜アリーナはとても素敵なんですけどね。。。
私の選ぶセトリ名曲3選
さて宇多田ヒカルファン歴25年の私が選ぶ、今回のセトリの中からの my big fav songs 3選とちょっとしたバックグラウンドの説明を書いていきたいと思います。
time will tell
1998年(平成10年)デビューシングルB面、宇多田ヒカル15歳
今回のツアーのオープニング曲として選ばれた名曲、実は宇多田ヒカルのAutomaticと一緒に出されたデビューシングルB面だったりするんですが、結構知らない人が多いんです。実は宇多田ヒカル自体もかなりギリギリまでAutomatic or time will tell、どちらをB面にしてリリースするか迷っていたというくらいに彼女自身にとっても思い入れの強いデビューソングだったりします。Automatic よりもしっぽりと始まるイントロに力強さを感じないので「静」の曲かもしれませんが、この曲は噛めば噛むほど味がでるし、もっと私たちの日々にリンクする歌詞が魅力で長年ファンには愛されている曲で、これをあえて最初に持ってくるんだなー!と思って泣いてしまったのは私だけではないはず!
ꕤ ポイント ꕤ
この歌詞を15歳が書けてしまっているということの脅威!
Time(時間)という空間に託すという観点を15歳で把握できてしまっている凄さに彼女の能力の高さを感じずにはいられません。
どういうことかというと、中学生の時代の感覚ってもっと「今を生きる!」「今がすべてで未来は遠い!」という感じのざっくり曖昧さが青春というか、時に対しての考え方がもっと雑だと思うんですよね。
大半の中学生が何となく毎日を過ごして、1日1日があっという間に過ぎていくんだけれど、日々に起こった小さなことがまるでその後の人生揺るがすんじゃないかってくらい喜怒哀楽が大げさで、「?」という感覚を傍において生きられないほどすぐに答えが欲しいと思う。明確なものを求めているような善悪しかない、白黒しかないんだ!みたいな狭い視野で生きている子が多いのではないかなと。いい意味でも真っ白で単純で、シンプルな思考で構成されている中学時代の私には、この time will tell の意味が理解できなかったんです。人生が進んでいき、うまくいかないこと、もがいても今は無理なことを let it go すること、時が何かを解決してくれること。それを15歳の宇多田ヒカルは歌詞にまで落とし込んでしまっている。これが脅威です。
彼女の達観した思考力と背負ってきたものを伺い知ることができる名曲なので是非聞いてみてほしい!Automatic / time will tell っていう組み合わせもなにか「動」と「静」の対に見えて自分が動かされていて、自分の意志ではないみたいな自分を他人事に感じてしまうような他人行儀な距離感の歌詞が面白いです。
泣いたって
何も変わらないって言われるけど
誰だって
そんなつもりで泣くんじゃないよね
悩んだって仕方ないよ
I just can't control the time
この長いRunwayから青空へTake off!
Time will tell 時間がたてばわかる
Cry 今の言い訳じゃ自分さえごまかせない
Time will tell 時間がたてばわかる
Cry だから今は泣きたいだけ泣いていい
もっと もっと もっと
Letters
2002年(平成14年)リリース、宇多田ヒカル19歳。
ꕤ ポイント ꕤ
この年映画監督さんと結婚したんですよね。当時の私にはまったく理解できなかった価値観でした、この曲も。そして今も難しい、でも19歳はこれを書き切っている。大好きな人への絶妙なコネクションの仕方っていうのかな、ベタベタしたいけど相手はそういうのが好きじゃない、そういうギャップを絶妙に書いてるんですよね。個人的にはこれが「光」と一緒にでて、お皿洗いしてるHikkyのPVほうが世間ではウケていたんだけれど、今この年になるとこっちの曲のほうが重く響くんですよね。
でも両方の歌詞でいうのは、先は分からないけれど、自分の気持ちがしっかり愛を持っている。でも未来なんて不確定なものに不安を持ってしまう自分も嫌でみたいな彼女の時間に対してのとらえ方と誰かを愛すること、幸せな時が永遠に続くだろうかという不安?相手と自分との価値観や特性の違いみたいなものを今の幸せで埋めていこうとする感じが伝わってきます。個人的には英語の歌詞の部分でそれがしっかり出てるLettersが好きなんですよね。
Tell me that you'll never ever leave me
Then you go ahead and leave me
What the hell is going on
Tell me that you really really love me
Then you go ahead and leave me
How the hell do I go on
誰かの願いが叶うころ
2004年(平成16年)リリース、宇多田ヒカル21歳
結婚して2年目で当時の夫紀里谷さんの映画「CASSHERN」の主題歌になったんだけれど、観に行ったけど意味不明すぎて覚えてない。本当にでも、この時の宇多田の歌詞は難しかった。当時の私には本当に理解できなくて噛み締められず、今はとても分かる。30代になって理解できるようになった歌。
この頃になると宇多田ヒカルという人間が、どれだけ売れても、どれだけもてはやされても、彼女はおごるどころか世間からちょっと離れた感覚で愛とか幸せとかを見ていたことが分かるんですよね。この人の凄いところは、本当に普通でいることの難しさ、他者との関係性を第三者目線でみていて「私」「私とあなた」「2人だけの世界」みたいなところに恋愛の曲が着地しないところ。何か違うカメラを3つも4つも持って見てるんですよね。21歳、私はただチャラチャラ恋愛して遊んでました。。。歌詞が物語みたいなので全文載せておきますね。
小さなことで大事なものを失った 冷たい指輪が私に光ってみせた 「今さえあればいい」と言ったけど そうじゃなかった あなたへ続くドアが音も無く消えた あなたの幸せ願うほど わがままが増えてくよ それでもあなたを引き止めたい いつだってそう 誰かの願いが叶うころ あの子が泣いてるよ そのまま扉の音は鳴らない
みんなに必要とされる君を癒せるたった一人に なりたくて少し我慢し過ぎたな
自分の幸せ願うこと わがままではないでしょ それならあなたを抱き寄せたい できるだけぎゅっと 私の涙が乾くころ あの子が泣いてるよ このまま僕らの地面は乾かない あなたの幸せ願うほど わがままが増えてくよ あなたは私を引き止めない いつだってそう 誰かの願いが叶うころ あの子が泣いてるよ みんなの願いは同時には叶わない 小さな地球が回るほど 優しさが身に付くよ もう一度あなたを抱き締めたい できるだけそっと
昨今の彼女の曲、注目3選
宇多田ヒカルは2010年(平成22年)27歳の絶好調だと思われていた時に活動の休止を発表しました。冒頭にも書いた通り、その休止は無期限だったのですが、「レコード会社との契約もあるし戻ってくるよ」と言い残して、キャンディーズのように舞台脇にマイクを置いて退出した彼女。昭和的な演出で日本の音楽業界から去ってしまいます。理由は人間活動をするため。自分で電気代ひとつ払えない、何もできない、音楽しかできない、そんな自分ではだめだと思った。みんなが普通にやっていることが何もできない。そう言っている彼女が印象的だった。10代で彼女が自分自身の内面に向き合って、20代で社会と向き合って気づいた課題だったのかもしれない、そこから帰ってきた彼女が出す曲は全く違う色をしていたのですが、そのアルバムが2016年にリリースされたFantôme。私の記憶が正しければ「真夏の通り雨」「花束を君に」がその前にシングルでリリースされています。この時は私は海外で働いていて、その曲を毎日聞きながら仕事をしていました。
道
2016年(平成28年)リリース、宇多田ヒカル39歳
サントリー天然水のCM曲に抜擢された曲でもありますが、これは亡くなったお母さんに向けての感謝の曲だといわれてます。
正直、私の中の宇多田ヒカルのイメージがすごく変わった、人間活動してたぶん何か抜けた感じなんだろうなーと思わせてくれた一曲です。多分お子さんも生まれたくらいの年なんじゃなかったかなーと。
私の両親はまだ元気で、たぶん私は彼女の感覚を理解できないでいるのですが、だから何かまた彼女に置いて行かれたような気持ちでもいたりするのです、中学生のときのポカンって感じに近いのかも。でもこの曲がきっとまたいつか私の心できちんと理解できる日が来るんだと思います。今のところ、この曲は私にとって、私をここまで連れてきてくれた大切な人たちに感謝できる曲だと思って聞いています!
黒い波の向こうに朝の気配がする 消えない星が私の胸に輝き出す 悲しい歌もいつか懐かしい歌になる 見えない傷が私の魂彩る
転んでも起き上がる 迷ったら立ち止まる そして問う あなたなら こんな時どうする
私の心の中にあなたがいる いつ如何なる時も 一人で歩いたつもりの道でも 始まりはあなただった It's a lonely road But I'm not alone そんな気分
二時間だけのバカンス (feat. 椎名林檎)
まるでPVがStar Warsのようなこの曲はFantôme(2016)アルバム収録曲なんですが、 コラボ相手が同じレーベルで活動していた椎名林檎という豪華すぎる名曲。歌唱力オバケのお二人は仲良しみたいですね、なんか宇多田ヒカルって孤独な人のイメージがすごく強くて、誰ともコラボしないで歌い続けるようなイメージが若い頃ありましたが、コラボしたり、他の人に曲を歌ってもらったり、楽しそうに音楽活動をしている姿が印象的でした。自由になったのかなといったような。時がやっぱり色々解決してくれるんでしょうね。
Gold ~また逢う日まで~
映画キングダムの主題歌です、2023年リリース。
歌詞を見てハッとしました、彼女のスタンスがそのままアップグレードされたような時間と心の不安定さと人間らしさが織り交ざった歌詞なんですよね。
追いかけても追いつけぬ
幸せは側で待ってるだけ
楽しいことばかりじゃないけど
嫌なことなんて
いつかまた思い出話する日の
花になる迄
時間に運命を任せたり、人との関係を曖昧にしたり、なんかいろんな歌詞を書いてきた宇多田ヒカルの10代・20代から、大切な人と向き合った30代。私にはよくまだまた分からないんだけれど、幸せはすぐそばにあって追いかけても追いつかないもので、それはそんな遠くにあるものじゃなくて身近なものが幸せだみたいなことなんだろうけれど、私はまだ先にある大きなものを求めているような気がします。
彼女はいつも私の人生の1・2歩先の歌詞をくれて「あとでわかるさ」っていっているのかな。
私が今回気づいた宇多田ヒカルの魅力
強すぎないメッセージ性
音楽の歌詞を注意深く見ていると思うのは、彼女は自分の意見を断定して聞き手に押し付けてないような歌が多いんです。なんか人の日々考える不安定な気持ちだとか、出来事とか、そういうのを物語の語り手のように描写する繊細さがあるなという感じです。曖昧さをどこか残しているから、共感が得やすかったりする。曖昧さを残すことで歌がぼんやりしてしまいそうなのに、噛めば噛むほど行く通りとその歌詞の意味を自分の生活に重ねることができる。だから結果、聞き手がその曲の歌詞の意味を深く自分の経験とシンクロさせて深堀して印象強くさせることができる、そんな感じでしょうか。
ラブソングが切ない
失恋したわけでもないし、実りそうでドキドキしてるわけでもなくて、彼女の描く恋愛感は少し西洋的な女性を感じるんですよね。自分という人間がいて、相手というまた違う個体の人間がいて、その中で自分と相手というものを壊さないようにすり合わせていく中での出来事が物語のように紡がれている。しかもことこまやかに描写するのではなく、ボソ、ボソとエピソードっぽい単語が入るからちょっと最初は意味がわからないみたいな曲が多いんです。そして何かすごい大きな答えがないまま終わる。これ英語で書いた歌詞のほうが彼女はストレートに書いてたりするので例外はもちろんあります。
でもチープな恋愛歌詞にならないのがいいなと思います。これは椎名林檎にも通じるものがあります。
微妙な歌詞が多いので最初わからない魅力
ちょっと危険な恋なの?関係性なのかな?と思わせるような歌詞も出てくるようになったのは彼女が30代くらいの時くらいからでしょうか。LGBT系の人にも刺さるような歌詞もあります。言えないよ好きだなんて系の歌詞です。でもなんかそういうのをサラっと書いてしまう彼女が私は好きですね。危険な関係みたいなのとか、そういう善悪で決められないけど動物のサガとしてどうしても生じてしまうものに蓋をしないこと。私の中では結構最近は大切にしていることです。最初分からないけれど、色んな意図が色んな風に捉えられる曲っていう多様性を表現する才能は彼女ならではだなと思うんですよね。
カレシにも家族にも言えない いろんなこと
あなたが聞いてくれたから どんな孤独にも運命にも耐えられた
降り止まない雨に打たれて泣く私を
あなた以外の誰がいったい 笑わせられるの?
いつも 近すぎて言えなかった、好きだと
時を戻す呪文を胸に今日も Go
ずっと 聞きたくて聞けなかった、気持ちを 誰を守る嘘をついていたの?
逃したチャンスが私に 与えたものは案外大きい
溢した水はグラスに返らない 返らない
出会った頃の二人に 教えてあげたくなるくらい
あの頃より私たち魅力的 魅力的
友よ 失ってから気づくのはやめよう 時を戻す呪文を君にあげよう
私にとっての宇多田ヒカル
色々書いてきましたが、私にとっての宇多田ヒカルの存在は私が海外で生き抜くなかで一緒に並走してくれた友達という感じでしょうか。
日本から出ると当たり前のことが当たり前じゃないし、病むことも多い。私は考えて考えて自分の理論で納得できないと進めない、そういうタイプの子どもでした。だからこそ彼女が抱えてきた「どうしよもならない運命」みたいな抱えていることの大きさを、ちょっと見せてくれた彼女の曲の数々は私の心に刺さり続けたのだと思います。
彼女はまた私がいい年齢になったときに戻ってくるのかもしれません。その時には彼女は今書き下ろした歌詞の意味がわかるように、自分の人生に厚みを持たせられるように、自分と向き合って生きていけたらいいなと感じられる大阪城ホール遠征でした。