【展示レポ】JUN MATSUMOTO EXHIBITION PERSPECTIVE ー時をつなぐ眼差しー
はじめに
2022年の年末、松本潤くんが大河ドラマの主演を務めるというニュースを聞いて、すごく嬉しかったのをよく覚えています。一端の嵐ファンだけど、潤くんは我々ファンに常に新しい世界を見せてきてくれた人だということを知っていたから、家康公を通じてまた新しい松本潤を見せてくれるのかと思うと、感動とわくわくが止まらなくて。大河ドラマはまともに観たことがなかったけど、惹き込まれるように『どうする家康』に夢中になり、気づけば1年が経っていました。
そんな私が『JUN MATSUMOTO EXHIBITION PERSPECTIVE ー時をつなぐ眼差しー』で体験したこと、感じたことをすべてまとめます。
展示の内容なども記載します。期間は終了していますが、もしかすると他の会場での展示などもあるかもしれないため、ネタバレされたくない方はここで読むのを控えていただくようにお願いします。
全体の構成について
会場に入るとまず「6つのインストラクション」と書かれた冊子を手渡されます。この冊子には計6つの展示を感じてもらうための「インストラクション(日本語にすると"指示")」が記されており、各展示エリアに入る前に読んで展示に向き合いどう思うかを感じてもらう、という構成になっていました。
また、この展覧会の大部分は撮影禁止。職業柄、人々が肌身離さず持っているスマホを使って、日々どう表現 / 伝えていこうかを考えているのですが、その一方で、気軽に記録することができるようになり、記録に夢中になるあまり自分だけの体験を蔑ろにさせてしまっている部分もあるなと感じていて。少し強制的に記録から距離をおいてもらう代わりに、全身で展示を体験してもらう、これも、展示空間にしっかり浸って感じてもらう工夫の一つだと感じました。
1つ目の展示エリアに入る前の待機スペースには、潤くんの手書き文字があったり、何分かおきに潤くんからのアナウンスが流れたり。待ち遠しくてそわそわしているファンを早速楽しませてくれる、ささやかだけど嬉しいサプライズもありました。
コラボレーション 1 : 繰上和美 × 松本潤
「中は大変暗くなっています。進むと右側に壁があるので、右手を壁に沿わせてお進みください。そして、右手は決して壁から離さないようにしてください。」と、スタッフの方に伝えられて部屋に入ると、もう本当に真っ暗。一切の光がなくて、目を開けているのにこんなに見えないことは初めてでした。最初は興味でわくわくの方が大きかったのに、進めば進むほど怖くなっていって、心臓の音が大きくなって聞こえてくる、そんな感覚でした。
暗闇を進むと光が見え、そこには壮年期の家康の格好をした潤くんのポートレートが1枚。光を感じることができた安心感と、ポートレート。ただ、私にはそれが潤くんなのか、殿なのかはわかりませんでした。多分それくらい、1年半かけて潤くん自身が家康になっていってたのかなと感じました。
コラボレーション 2 : 太田好治 × 松本潤
L版で印刷された数々のスチールが重なるように壁面に貼られていて、中央にはスクリーンがある、没入感のある部屋に案内されました。スクリーンにも数々の写真たちが投影され、その世界に浸るというインスタレーション。
とてつもない写真の量から、この作品にかけられた期間の長さを全身で感じました。
大河ドラマの撮影中に切り取られたオフショットや演技中のカットが次々切り替わっていき、その間「あのシーンもあったな」「あの時の、このシーンはすごく感動したな」「このシーン大好きだったな」など思いを馳せていました。振り返ると、この1年間で『どうする家康』が生活の一部になっていて、家康公や家臣団が身近になっていたことに気づきました。
コラボレーション 3 : 岡田准一 × 松本潤
空間の奥に行けば行くほど高くなる、高さの異なる仕切りに岡田くんが撮影中に切り取った写真の数々が展示されており、左右の壁には2つの映像が投影されていました。映像は潤くんと岡田くんの対談になっていて、片方には潤くん、もう片方には岡田くんの映像が投影されていました。
潤くんの映像が投影されているスクリーンからは潤くんの声が、岡田くんの映像が投影されているスクリーンには岡田くんの声が近くで聞こえる仕組みになっていて、側で対談を聞いているかのように感じる演出に惹き込まれました。
潤くんが家康役を引き受けるのを後押ししてくれたのが岡田くんで、信長役を岡田くんにお願いしたいと熱望したのが潤くんだった、とのこと。
岡田くんの切り取る写真にはそんな二人の関係性が滲み出ていて、コラボレーション2で撮影されていた太田さんとはまた一味違ったスチールの数々でした。また、対談の内容も二人ならではで、二人の関係値がうかがえる内容でした。
岡田くんの後押しがなければ松本潤の家康はなかったし、潤くんがお願いしなければ岡田准一の信長はなかった。1年間身近に感じてきたあの『どうする家康』は、当たり前ではないことを実感しました。
コラボレーション 4 : 井田幸昌 × 松本潤
小道を抜けると円形状の展示室が現れ、そこには若い頃の家康の姿をした潤くんの肖像画と、甲冑姿の家康の姿をした潤くんの肖像画の2つの肖像画が展示されていました。(※ここは唯一撮影OKのエリアでした)
家康は若い頃、虫1匹始末できないほど心優しい青年でしたが、大切なものを守るために自身の手で敵を斬らなければいけなかったり、必死の思いで数々の戦を勝ち抜いていき、着実に地位や富を手に入れていきます。二度と自身と同じ辛い思いをすることがないように、戦のない世を一歩ずつ作り上げる家康ですが、物語の後半では戦での世の収め方しか知らず、嫌いで拒んできた戦を求めてしまっていることに気づき、自身を「戦乱の亡霊」と表現するなど、悩み続けます。
私はこの2つの肖像画を見て、家康が生涯をかけて向き合わなければいけなかった問題と、その苦悩をより近くに感じました。青と赤は正反対の色で相入れないもののように見えますが、時代の流れや経験によって意図せずとも正反対のものにも成り得てしまうことを、家康の一生を振り返りながら感じました。
コラボレーション 5 : 小浪次郎 × 松本潤
天井・壁・床・柱など全面、日光東照宮で撮影された潤くんのスナップで包まれた空間に入り込みました。夏の濃くて深い緑と空の青、豪華絢爛な東照宮の赤。ビビッドな色合いのスナップに囲まれた、これまでとは打って変わった空間で、美しい世界観に惹き込まれていきました。空間内にはスナップの撮影風景が映像でも流れていて、蝉の鳴き声や風の音、シャッターを切る音が響いていました。
会期中は真冬でしたが、夏の日差しの強さや緑の中を抜ける爽やかな風なども感じ、まるで一緒に東照宮にいるかのような感覚でした。スナップに映る潤くんは、家康というよりもMJで、自由に切り取られた美しいスナップにただただ見惚れ、癒される空間でした。
コラボレーション 6 : 田根剛 × 松本潤
薄暗い部屋の中に、膨大な量の紙が天井から一枚ずつ吊るされていて、潤くんの声と遠くの方にぼやっと見えるオレンジの光に導かれながら進む、空間インスタレーション。紙には潤くんの思いが一枚一枚に記されており、さらには潤くんが語るモノローグも聞こえる空間で、そのひとつ一つの思いに向き合うことができました。
家康という人物と向き合う中での心の変化、過去と現在、未来のこと、東京に対する思いの変化をダイレクトに感じる演出で、まさに潤くんの脳内に入り込んだ感覚になりました。潤くんの感じたことをそのまま私も感じられた感覚になり、初めて今東京で生きていることの意味を考えるきっかけになったインスタレーションでした。
さいごに
潤くんが展覧会を開催するという知らせをXで見てから、どんな展覧会になるのか、すごく楽しみにしていたのですが、個人的にすごく印象に残るものとなりました。1から6のインストラクションに沿って、各展示に向き合い考えることで、潤くんが1年半家康を演じる中で感じたことを追体験し、今東京で生きていることの意味を考えるきっかけを与えてくれた、展覧会だったと思います。
過去に大河ドラマ主演という大役を務めた俳優さんたちも、その人物や一生に向き合い、作品を届けてくれたことだろうと思うけど、潤くんはその過程を展覧会という形で視聴者にも共有し、一緒に未来を生きていこうというメッセージをくれたような気がして、活力になりました。
ほくほくした気持ちのまま六本木ミュージアムを出て、駅に向かう途中に見えた東京タワーは、いつもより力強く輝いて見えました。
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