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放射線を放つ、オールドレンズ
よく知られていますが、かつて「アトムレンズ(放射能レンズ/トリウムレンズ)」と呼ばれる放射性元素トリウムを含むカメラ用レンズが生産されていました。今回は、そんな放射線を放つオールドレンズについての記事です。
なぜ放射性元素を用いるのか
アトムレンズは光学特性向上を目的に、放射性元素であるトリウム(酸化トリウム)を用いて製造されています。
トリウムをレンズに用いる光学的な利点として、トリウムを含む光学ガラスは屈折率が高く、色収差を抑えつつ高い解像度が実現できました。加えて紫外線や赤外線の透過率が高いことから、よりクリアなレンズ特性を得られるとのことで、1940〜1970年代のレンズにしばしば見られたようです。
しかし、トリウムを用いたガラスは経年劣化で「黄色」(や茶色)に変色し、結果として透過率が低下する問題や、安全規制の厳格化、代替え技術の進歩で敢えて放射性元素をレンズ素材に用いる理由が無くなった、などの理由もあって1980年頃には作られなくなりました。
ここで疑問なのは「アトムレンズは放射線を放っているのか?」という点(トリウムの半減期は約141億年というので、仮に初期の1940年代に作られたレンズであっても半減期には程遠いですね)。
この疑問にテスターで実測確認された方のサイトを見ると、バリバリ放出しているのが分かります。
また、上記サイトのスゴいところは、昔からカメラマニアの間で話のあった「含有する放射線がフィルムに感光しノイズとして写り込むのではないか?」なる理論上のヨタ話しを実証実験された点。
上記サイトによると「フィルム程度の感度なら感光しないが、昨今のデジカメでは感光してノイズになる事がある」との事です(詳しくは上記リンク先のサイトを参照ください)。
我が家のアトムレンズ
私が現在も所有しているアトムレンズは2本 ↓
・Canon FL 50mm f1.4 II
・Canon FL 50mm f1.8
両レンズとも、もれなく経年劣化でレンズが黄色く変色しています。この変色、UVライトを当てることで直せるそうですが、試そうと思いつつ未だ試したことありません。
まぁ、数日ほど陽のあたる窓辺に置いておけばいいのでしょうが、黄変した写りも”味”なのかな、と放置しております。〔了〕
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