だからわたしは、泣くことをやめない。
夜は、大きな口を開けてわたしを飲みこんだ。
何も見えない真っ暗な夜が、わたしは怖かった。
だからわたしは、夜のその大きな口に飲みこまれる瞬間、いつもきゅっと目を閉じた。
涙が、こぼれ落ちる。
わたしは、下を向いている。
夜は。
暗闇は。
見上げてみたところで、どうせ何も見えないのだから。
わたしはずっと、そう思っていた。
目を閉じて、下を向いて。
わたしはずっと、ひとりだった。
けれど。
ある日わたしは、わたしに似た人を知った。
その人も、ずっとひとりだった。
いつも、泣いていた。
夜は暗闇で、何も見えない。
その人も、そう思っていた。
でもその人は、ある夜の入り口で、勇気を出してすこしだけ目を開けてみた。
そこで見たのは、その人に、似た人たちだった。
みんな、泣いていた。
けれど、彼らは必死に戦っていた。
夜に飲みこまれても、目を閉じないように。
思い思いの彼らの色を、褪せることをさせないように。
彼らは、必死に戦っていた。
だからその人は、彼らと一緒に夜に飲みこまれるとき、何とかして目を開けていようと思った。
怖くて目を逸らしそうになってしまったけれど、グッと力をこめて、顔を上げた。
夜の空を、見上げてみた。
そこには、涙がちりばめられていた。
その人が流してきた、たくさんの涙。
目を閉じて、下を向いて。
そうしてこぼれ落ちたたくさんの涙は、控えめに、でもどこか誇らしげに、夜の空を漂っていた。
その一つひとつはとても頼りなくて、今にも消え入りそうだったけれど、どうにかキラリと輝いては、励ましあうように、互いの身体にそっとその光を反射させていた。
またひとつ、涙が夜の空へとのぼっていく。
その人の涙は、そうして夜の空に光をたたえていた。
夜は、暗闇だけじゃなかった。
その人は、そう教えてくれた。
目を閉じて、下を向いて。
わたしはずっと、ひとりだった。
わたしの涙も、夜の空にちりばめられているだろうか。
儚くも力づよく、夜の空に光をたたえているだろうか。
今もわたしは、夜が怖い。
けれど。
そうして流してきた涙が、夜の空でわたしを照らすならば。
勇気を出して顔を上げたその先に、希望の光があるならば。
目を開けて、顔を上げて。
夜の空を、見上げてみたい。
流した涙の数だけ、わたしはつよくなれるだろうか。
流した涙の数だけ、わたしは笑顔になれるだろうか。
その答えは、今はわからない。
夜は、暗闇だけじゃなかった。
その人がそう教えてくれたことを、わたしはただ信じたいと思う。
だからわたしは、泣くことをやめない。
目を開けて、顔を上げて。
そうして、願う。
見上げた夜の空で、希望の光が、わたしを照らしてくれることを。
流した涙は無駄ではなかったと、いつかこころから思えることを。
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さいごまでお付き合いありがとうございました。
朝晩涼しくなり、体調を崩す人が多いみたいです。
しっかりあったかくして、ゆっくり休んでくださいね。
それでは、また。
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