R6予備試験再現答案:民法
民法の再現答案です。
自己評価:F(ワンチャンEなら幸せ)。全編にわたって漂う怪文書感……
第1 設問1小問(1)
1.CのDに対する所有権に基づく返還請求権としての乙土地の明渡請求が認められるためには、乙土地についてCの所有とDの占有が認められることを要するところ、Dの占有は明らかであるから、Cの所有が認められるかが問題となる。
(1)乙土地の元所有者であるAは、令和3年4月1日に発生した船舶火災によって失踪したことを理由として、令和4年8月1日に失踪宣告(民法(以下法令名略)30条2項)を受けている。したがってAは令和3年8月1日に死亡したものとみなされ(31条)、相続が開始した(882条)。そしてAの子たるCは相続人(887条1項)として、乙土地の所有権について相続した(896条)。
(2)これに対しDは、乙土地は、Aの相続人であるBとの間で締結した売買契約(555条)に基づき購入したものであり登記も備えていること及び、乙土地についてはBが相続したとする遺産分割協議書の偽造については善意であることを主張し、乙土地の所有権は自己に帰属していると反論することが考えられる。
(3)しかし、相続にあたりAは、「乙土地をCに相続させる」旨記載された自筆証書遺言(968条1項)を適法に作成(967条、960条)している。そしてかかる遺言は、乙土地についてはCに全部を帰属させるものと解される(908条第1項)から、相続開始当初よりCに所有権が帰属(909条)しており、Bとの売買契約は無権利者との売買となる。そして無権利者との間では物権の得喪が生じないから、登記を得たことによる対抗力(177条)は生じず、Dの反論は妥当ではない。
(4)もっともCにおいても、乙土地の登記は備えていない。したがって、法定相続分以上の持分については、第三者たるDに対抗できない(899条の2第1項)。
2.よってCの請求は、法定相続分である二分の一(900条1号)の持分の返還請求の限りにおいて認められることとなる。
第2 設問1小問(2)
1.AのFに対する所有権に基づく返還請求権としての乙土地の明渡請求が認められるためには、乙土地につきAの所有とFの占有を要するところ、Fの占有は明らかであるから、Aの所有が認められるかが問題となる。
(1)Aの失踪宣告の取消し(32条1項)がなされたことにより、「失踪宣告によって財産を得た者」については、かかる財産についての権利を失う(同条2項)。Fが有する乙土地についても、Aの「失踪宣告によって」Bが相続し、これを売買契約によってFが入手したものであるから、Fの権利は認められず、Aに所有権が帰属すると思える。
(2)これに対しFは、自らの所有権はEとの売買契約に基づくものであり、「失踪宣告によって」得たものではないと反論することが考えられる。
(3)そしてこのFの反論に対してAは、FがAの失踪についてBから聞かされており、財産の処分についても相談を受けていたこと、中間に介在するEに対しては、BとFがそれぞれ買戻しについて協調して言及するなどしていることから、EF間の売買契約は、通謀虚偽表示(94条1項)にあたるものであって、無効であると再反論することが考えられる。
(4)94条1項は、通謀によって虚偽の外観を発生させた場合に、そこから生じる法律効果を認めないとするものである。したがって、複数の者が関与する意思表示を全体として通謀虚偽表示とするためには、全ての当事者において通謀及び虚偽の意思表示と認められる行為が必要であると解する。本件においてはBとFの間には、買戻しという形で乙土地の所有権の移動について、虚偽ともいえる外観を作出しようとする通謀があったと認められる。しかし、Eにおいては、買戻しがあるという事情は知っていたものの、Aの失踪については善意であり、乙土地の移動について虚偽の外観を作出したといえるような行為は認められない。
(5)以上のことから、Aの再反論は認められず、Fは売買により乙土地の所有権を得たものとして、Aの請求は認められない。
第3 設問2小問(1)
1.GのJに対する不当利得返還請求(703条)は認められるか。
(1)まず、JはG及びHとは何ら関係なく、500万円を受け取る裏付けとなる取引等もなかったことから、500万円を得たことについて「法律上の原因」があるとはいえない。
(2)そして500万円の原資は、Gが振込として送金した資金であるから、「他人の財産」であり、これによってGは「損失」を受けたと認められる。
(3)さらにJは、自らの銀行口座に入金されたことにより、これを自由に引き出して利用することができることから、「利益を受け」ている。
(4)以上のことから、Jの不当利得は認められ、Gの返還請求は認められる。そして返還を受けられるのは「利益の存する限度」であるところ、誤振込後、出金は行われていないことから、500万円全額について返還請求が認められる。
第4 設問2小問(2)
1.他方、Lは反論①において、Jからの弁済は一般財産からのものであることを主張している。しかしJは債務の弁済が遅れており、そのような者に500万円の一般財産があったとは認めがたい。にもかかわらずJは500万円を持参しており、そしてLはJが資金を手当てできた経緯を聞かされている。これらの事情に鑑みると、Lの利得はGの出捐によるものと評価するべきであり、Gの損失との間に因果関係があるというべきである。したがって、反論①は認められない。
2.他方、LはJに対して債権を有していたのであり、Jから弁済を受けるについて法律上の原因は認められる。そして、弁済資金の出所によってかかる法律上の原因の有無は左右されるものではない。したがって、反論②は認められる。
3.以上のことから、Lは法律上の原因に基づいて500万円を得たのであるから、Gの不当利得返還請求は認められない。
以上
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