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はじめての自費出版|02.プロに聞いてみた

僕は本をつくったこともなければ、映像においても自分発信で何か作品を発表したことはありません。このままでは何から始めればいいのか、わからないまま時は流れてしまうことでしょう。浮かんでは消えていくありふれた何かのように。

さて、幸い僕の周りにはこれまで関わってき芸人さんや、ミュージシャン、先輩ディレクターなど「誰からの発注でもなく自ら企画を立ち上げて発表」してきた格好いい人たちがたくさんいました。なので、今まで側で見てきたその人たちの仕事ぶりを大枠の参考にすることにしました。そして本づくりの具体的なことに関しては、出版業界にも何人か知人がいたので、その人たちになりふり構わず相談することにしました。

  • 出版のプロは素人である僕のような人物がこういう試みをする事についてどう思うのか。

  • ヒップホップ業界の人はこういう企画をどう捉えるのか。

大きくこの2つが気になっていたのですが、ある日突然うってつけの人が現れました。今回はその1人目の相談相手について書いていこうと思います。

2021年の年末、ディレクターとして関わっているラッパーのオーディション番組「ラップスタア」スタッフの食事会があり、そこに雑誌「サイゾー」の編集/ライターをしている通称・コーローさんという人物が参加していました。「サイゾー」の中で番組の記事を書いてくれたことがご縁でした。僕はその取材には同席していなかったので、この日が初対面でしたが聞けばコーローさんは過去に、伝説のヒップホップ雑誌「blast」でライターとしてヒップホップに関わる記事を手がけており、他にも数々のヒップホップ関連のコンテンツの裏方として活躍している方でした。業界に精通する人物であること、そしてどうやらビジネスに重きを置くタイプではなくヒップホップカルチャーにどっぷりの人物であることが、宴が進むにつれてわかってきました。

これほど最初の相談相手にふさわしい人はいない。
これは天が僕に与えたもうたご縁だ。

そう確信した僕はその会の別れ際、六本木の交差点で三々五々になったのを見計らって「僕、番組とは関係なくテキストのコンテンツを作りたくて、今度相談に乗ってもらえませんか?」とコーローさんに伝えました。するとコーローさんはめちゃくちゃ軽いノリで受け入れてくれて、後日会うことになりました。

「ラッパーの語りを聞いて文章にしたい」とあらためてメールで伝えて、ペラ1の企画書と、初期段階のイメージだった岸政彦さんの著作『断片的なものの社会学』と、しまおまほさんの『おしえてコドモNow』をバックパックに入れて、待ち合わせ場所の渋谷道玄坂上へ向かいました。まだコロナ禍だったにも関わらず、会社のオフィスへ迎え入れてくれたコーローさん。仕事相手との打ち合わせで使うであろうブースに通してくれて、コーヒーも出してくれて、こちらは正式な仕事ではないので申し訳ないなと思いながらも、じっくり思いの丈をぶつけ、自費出版への第一歩を踏み出したのでした。

この時点では頭の中に企画のイメージがあるだけだったので、自費出版にするのか、どこかに企画として持ち込むのか、持ち込むにしても先に何らかの媒体で発表してからにするのか何も決めていませんでした。いやらしい話、どう形にするかもわからないので、出費はなるべく抑えたいが地方にも取材に行きたい。コーローさんが抱えている媒体に記事を出す事で予算をシェアするというようなパターンも頭の片隅にはありました。ですが話すうちに、お金とこちらの自由度がトレードオフなのだということもわかり、そしてテキストの媒体、特に雑誌においては、僕がテレビ番組をつくる際に感じている【尺の制限/わかりやすさ】を意識しなければならないのと同じように、文字数の制約などのストレスを感じている事もわかりました。これらは、自分は何がやりたくて何に抵抗があるのか把握するためのヒントになりました。

肝心の中身にもコーローさんが興味を持ってくれたような手応えが少しありました。無事に「相談と称した一方的なブレスト」を終えた後は、お互い年齢も近く幼い娘がいることもあって、何度もサシ飲みをするような仲になりました。また、実現はしませんでしたが別軸で番組に付随するような出版企画を考えてくれたり、この「LIFE HISTORY MIXTAPE」に大人数の聞き取りが必要だと知りローラー作戦的に若手のライターたちを投入しようかとアイデアをくれたりしました。内容が固まるにつれて、取材・書き起こし・編集まで自分がやる方向がいいと思ったので、そのアイデアも見送りになりましたが。Win-Winになるアイデアをいろいろ模索してくれました。そんな感じで随時相談しながら、最終的には出版に際しての「ヒップホップ視点での校閲」までお願いすることになり、この出会いは本当に天から恵まれた素晴らしいご縁となりました。

そして、これを書いていてあらためて確認しました。「コーローさんがいなければ本づくりは走り出してもいなかったかもしれない」と。だから今一度お礼を伝えるため、また飲みに誘おうと思います。

Big shout out to KORO.

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