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グライムズはセルティックスへのリベンジのラストピース
僕はマブスの試合を見る時、たとえ日本語実況ありの試合でも英語実況で聞くのですが、その理由は実況のマーク・フォロウィルにあります。
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僕は彼がNBAで1番の実況だと信じてやまないのですが、彼の良さは、流れを引き寄せるプレーが出た時のテンションの上げ方、そしてワードセンスです。昨シーズンだと「Flight 55」(DJJ)「Dante Inferno」(エグザム)の2つがお気に入りなんですが、こうやって新加入の選手たちにキャッチーなあだ名ができると、より親しみを持ちやすくなってとてもいいことだなー、と常々思っています。
そして、今回の主役はそんなフォロウィルの今シーズンの新たな発明ワード、「OMQG」ことクエンティン・グライムズです。今回は、「グライムズがセルティックスにリベンジするためのラストピースなのではないか?」というテーマで話していきます。
ファイナルで露呈した弱点
まず本題に入る前に、昨年のファイナルまでを振り返り、なぜ敗北したのかを見ていきます。昨年のファイナルで最大の敗因は、ウイング陣が3ポイントを効果的に決められなかったことです。具体的な数字を見てみると、ワイドオープンの3PAが12.2本、成功率が31.1%。さらに、オープンの3PAは14.8本で成功率が29.7%という状況でした。ルカイリーがセルティックスのディフェンスを引き付けた部分を、周りのウィング陣が活かしきれなかった。これがファイナルでの大きな問題でした。
この部分をより深掘りしてみると、ディフェンスの要であったPJとDJJが共通の弱点を抱えていたことが課題として挙げられます。2人ともコーナー3は得意ですが、トップ付近での3ポイント(above the break)が苦手でした。この弱点は、プレーオフが進むにつれてより明確になっていきました。
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具体的なデータを見てみましょう。カンファレンスセミファイナルはコーナー3のアテンプト数が多く、成功率も非常に高かったのです。このシリーズはトップ付近のスリーも確率が高く、かなり調子が良かったです。しかしカンファレンスファイナルになるとコーナー3の本数が減少。特にPJは代わりにトップ付近での3ポイントを打つ機会が増え、成功率が13%程度まで落ち込む結果となりました。ファイナルに至っては、2人のコーナー3のアテンプトがカンファレンスセミファイナルの1/4程度まで激減し、ディフェンスからの警戒も厳しくなったため、成功率がさらに低下しました。
このように、プレーオフで試合を重ねるうちに、徐々にPJとDJJのシュート力の弱点を暴かれていってしまいました。しかし、PJとDJJはマブスのディフェンスの中核を担っていたため、簡単に外すわけにはいかないというジレンマがありました。グライムズはこの2人の問題点を解決しながら、ディフェンス強度も落とすことがない、まさにセルティックスへのリベンジのための選手なのです。
マブスの歴史を覆したグライムズ
グライムズの強みについて、具体的なスタッツを見ながら考えてみましょう。グライムズはオープン(ディフェンスが4-6フィート以内)な状況での3ポイント成功率が43.9%と非常に高く、多少のチェックがあっても正確にシュートを決められるタイプのシューターです。その強みをより分かりやすくするために、昨シーズンチームで一番の3P%を誇ったエグザムと比較してみましょう。
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昨年のエグザムは40%以上の成功率を記録していましたが、その多くはワイドオープン(ディフェンスが6フィート以上離れている場合)の状況での成功でした。一方で少しでもプレッシャーがかかるとなかなか打ちきれず、昨プレーオフではその弱点が露呈した結果、プレータイムを大きく落としました。
しかし、グライムズにはその心配がありません。これはディフェンスの強度が強まるプレーオフにおいて大きな強みになると思います。さらに、グライムズは苦手なエリアがなく、どのポジションからでも高い成功率を誇ります。なのでPJと並べてもシューティング面で弱点にならず、それでいてディフェンス強度も保つことができます。今度はそのディフェンス力について深掘りしてみましょう。
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上記のグラフは、デリックホワイト、ハーブジョーンズ、ドートという、エリートクラスのウィングディフェンダーとの比較です。アイソやピック&ロールのハンドラーへの守備といった、ポイント・オブ・アタックディフェンダーとして重要な部分で、他のエリートディフェンダーと引けを取っていません。ポストアップに関しては極めて低い効率に抑えており、多少のサイズの差も苦にしないことが数字からも見て取れます。
2ポゼッション連続でKATを良い守備を見せるグライムズ pic.twitter.com/Gp53EJEAsL
— T.K (@mavsfanfordfs) January 26, 2025
さらに重要なのが相手のスポットアップへの守備です。この項目も、他3人を大きく上回っています。リムプロテクトに優れたビッグマンがゴール下に陣取り、ウィング陣が外のシュートのチェックに駆けずり回るマブス・ディフェンスにおいて、スポットアップの効率をここまで抑えているのは非常に重要なことです。
これだけでも既に優れた3&Dであるグライムズですが、さらに凄いのは、ドリブルからのプルアップ3ポイントでリーグトップクラスの成功率を持っていることです。
Best 3PT% On Pull Up Shots In The 2024-25 NBA Regular Season (Min. 40 Total 3PA) :
— Stat Defender (@statdefender) January 16, 2025
1. Quentin Grimes — 46.7%
2. Caris LeVert — 46.5%
3. Zach LaVine — 46.1%
4. Jordan Poole — 45.5%
5. Brice Sensabaugh — 45.5%
6. Ty Jerome —… https://t.co/sk6FVJo8uP pic.twitter.com/OhTeI7WhZM
従来のマブスのウィングはキャッチ&シュートとディフェンスに専念する、というのがベースでしたが、グライムズはその枠を優に超えてきています。このように、グライムズは小さなディフェンスのズレを的確に突き、得点に結びつけられる選手です。これが昨年の課題を大きく解消する要因になるでしょう。
グライムズ残留までの高い壁
そんなグライムズですが、ここで重要となってくるのが、彼が今シーズン終了後に制限付きフリーエージェントになることです。マブスが彼を残すための鍵となるのが、クリバーのサラリーをダンプできるかどうかです。年間1100万ドルと高めの契約には見合っているとは言えない活躍ですが、彼の契約は2025-26終了後に完全FAとなるため、2026のオフにキャップスペースを空けたいチームがクリバーを引き取ってくるシチュエーションが考えられます。昨シーズンオフのTHJとグライムズとのトレードが、まさにこれですね。ただ、マブスはこのトレードですでに複数の2巡目指名権を放出しているため、クリバーを放出するには難航する可能性があります。
さらに、2025オフはネッツやウィザーズなどキャップスペースに余裕のあるチームがいくつかあり、それらのチームが24歳の3&Dプレイヤーであるグライムズに高額オファーを出す可能性も十分考えられます。こうした状況を考えると、マブスにとってグライムズを確保するのは容易ではありませんが、そこは我らがGM、ニコハリソンの腕の見せ所。なんとかニコハリソン・マジックでグライムズが残留することを願います。
おわりに
以上、「グライムズがセルティックスにリベンジするためのラストピースなのではないか?」というテーマの考察でした。正直怪我人だらけの今のチーム状況を考えると、ファイナルでセルティックスへのリベンジを考えていること自体「捕らぬ狸の皮算用」でしかないのですが、そうはいっても昨季の結果を超えるには、優勝しかありません。昨オフシーズンの補強はそれを意識したものだったのは間違いなく、少なくともグライムズはその期待したもの以上の活躍を見せています。怪我人が皆帰ってきて、チームの調子を取り戻し、プレーオフ一回戦でフォロウィルの高らかな「OMQG」を聞けることを楽しみにしています(現地実況は一回戦までだから)(一回戦以降も現地実況入れろよ)。