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【コラム】新卒Big 4 FAS入社の是非

ここ数年Big 4 FAS各社が新卒採用を本格的に展開して久しい。

M&Aアドバイザリーを志す学生からすれば、投資銀行や長らく新卒採用を続けているファーム以外にも門戸が広がった事はポジティブであろう。

しかし、個人的にはM&Aアドバイザリーの仕事をすることを目的に、最近新卒採用を始めたFASに入社するのはおすすめしない。

これまで中途しかいなかった会社が最近新卒採用を始めた、という事はそれだけ新卒の受け入れ態勢が整っていないという事である。
M&Aアドバイザリーとしてキャリアを始めるのはやはり過去から長く継続的に新卒を受け入れていて、教育体制の整っている職場の方が良いと思っている。


FASはいつから新卒採用をやっているのか

自分はFASも含めて新卒採用業務にこれまでの職業人人生で携わったことが無いし、近頃の新卒採用事情についても全くの無知である。

そのため何年前からBig 4 FASが新卒採用を始めたのかも知らないので、各社の採用サイトを見てみたところ、下記のように記載があった。

各社ここ5年前後で始めた感じなんだろうか。

DTFA採用サイトより
KPMG FAS採用サイトより
PwCアドバイザリー採用サイトより


EYはなんか組織再編が多くてFASの過去からの流れがよく分からんのでパス。

なお、繰り返すが全くこの辺り無知なのでいつから各社が新卒採用をやっているのか正確なところは分からない。

何となくイメージでここ数年で各社新卒採用をはじめた、と思っていたがどうやらそれは正しそうである。
この前提で話を進めたい。

FASの新卒受け入れ・指導体制

ここ数年で新卒採用を始めたという事は、新卒の受け入れや指導体制が発展途上であり、確立されていないという事である。

過去から継続的に新卒を採用してきた投資銀行と比較すると、この部分がFASは明確に劣っていると思われる。

ではFASでは現場でどのように新卒社員を指導しているのだろうか。

先輩社員(ここでは中途でFASに入社している人々)が前職を含めて経験してきた何となくの新卒指導経験に基づいて指導している、というのが実態だと思われる。
教育体系は発展途上というのが正直なところではないか。

新卒プロファームの人間の指導というのは、非プロファームにおける新卒の指導とは若干趣が異なるように個人的には考えている。

思うに新卒プロファームの人間の指導においては、ハードスキルのインストールとプロフェッショナル的なマインドの醸成を、良い塩梅で混ぜながらやる必要があると個人的に考えている。

昔ながらの投資銀行やコンサルでは徒弟制度で新卒を鍛えるカルチャーが多い。
新卒として入社してきた社員をプロフェッショナルとして育てるには丁寧な指導が必要になる故かと解釈している。
ここが上記で書いた趣の異なる部分である。

この塩梅とか指導に関するプロフェショナルなりのPhilosophy(そもそも教え方についてもプロフェッショナリズムを持てるのがプロなのでは?とも個人的には思う)について、前職が非プロファームの人間では中々理解しにくいし、ここ数年で新卒採用をようやく始めた会社自体も意識が足りていないのではないかと思う。

現場で指導する先輩社員が前職もプロファームであれば良いのだが、そうでないパターンも往々にしてあると思われる。
社員のバックグラウンドが雑多なFASなればそうでないパターンは多いだろう。

バックオフィスの人事がよく考えていたとしても、実際に指導にあたるのは現場なので、現場まで意識が下りて根付いていないと意味が無いのである。

ちなみに個人的な感想だが、新卒でFASに入ってくる人達は皆高いポテンシャルと素質を持っており、優秀だと思う。
もしも彼らがしっかりとFASに定着するようであれば、ゆくゆくは中途採用の方針も変化する可能性がある。

一方で新卒の定着率というのがミソで、新卒向けの教育体制がいつまでたっても整備されないまま進むと、3年後には半分以上辞めていた。等という事になりかねない。

別に会社としての損失などどうでも良いのだが、高い素質を持ちながらも一定水準の指導が受けられずに、新卒入社した優秀な人々が辞めていくのは心が痛い。

新卒で入社するべきは

M&Aアドバイザリーを職業として長くやっていきたいと真剣に考えるのであれば、やはり投資銀行で働くべきだな、とつくづく思う。

もしも新卒で投資銀行に入社できなかった場合のすべり止めとしてFAS、というのであればまだ一考の価値があるかもしれない。

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