CONCIERGE|アブサン宣言
Text|Mistress Noohl
アブサン色の風と共に、モーヴ街に春がやってきました。
アブサンの頽廃と清冽に敬愛を込めて、ここに《アブサン宣言》を高らかに掲げたいと思います。詩に託した「アブサンの文法」をぜひご高覧下さい。
《アブサン宣言》はまず、前半の二節をモーヴ街図書館の司書・嶋田青磁さまが綴り、そののち後半の二節をもうひとりの司書・維月 楓さまが手掛け、完成しました。
二人の詩人が書簡のように交わした《アブサン宣言》を合図に、モーヴ街にアブサンの文法で調合されたリキュールの一滴が広がってゆきます。
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ちょうど10年前の2011年、霧とリボン主宰ミストレス・ノールが初めて手掛けた展覧会「菫色の文法〜ルネ・ヴィヴィアンの寢台(ヴァニラ画廊)」では、シュルレアリスム宣言に倣い、《菫色宣言》を掲げました。《アブサン宣言》は《菫色宣言》に続く、美意識の宣言になります。
10年前の2011年3月11日——忘れもしない東日本大震災の日。
地震が起きたその時、都内の手芸店でモーヴ色の刺繍糸を選んでいました。「菫色の文法」展で同時刊行予定のアートブックに収録する、ルネ・ヴィヴィアンの手製本訳詩集『菫色の遺品』を縢るための刺繍糸。騒然とする店内で、菫色の表紙を片手にモーヴグレイの糸を選んだ記憶は、今でも不穏な緊張感を持って思い出されます。
「菫色の文法」展は震災直後の開幕だったため、開催するか中止するかとても迷いましたが、九人の作家、そしてヴァニラ画廊さまと共に紡いだ美に明日への願いを託し、予定通りの開催を決めました。
嬉しいことに、不安な状況下にもかかわらず、会期中はリピーターが続出するほどの大盛況となり、美を通じて祈りを繋いでゆくことの確かさを身をもって体験した、以降の活動の指針となる出来事でした。
その日から10年——
今度は予想を超えた未曾有のコロナ禍がやってきました。昨年4月以降、霧とリボン実店舗は安全を重視し休業を継続していますが、そのような状況でも悲観せず、活動を継続すべくここモーヴ街にアート・プロジェクトを始動したのも、「菫色の文法」の経験が大きく息づいているからに他なりません。
現在お付き合いのある作家さまの多くが「菫色の文法」展を通じて知り合ったことも重なり、こうして、《菫色宣言》の続きである《アブサン宣言》を掲げることができたことは、万感の思いがございます。
白き頁にまっすぐ渡る、震災の日の記憶を留める「モーヴグレイ」が、一本の道となってその先の「今」へ、これからもずっと導いてくれるように感じています。
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今年最初のモーヴ街オンラインイベント《アブサンの文法》では、各建物から多彩な作品やエッセイをお届け致します。ぜひお気に入りの時間、場所にて、アブサン色の風を感じながら、お散歩をお楽しみ頂けましたら幸いです。
最新情報は霧とリボンツイッターにて配信。会期中はプレビュー期間となり、作品販売は【3月14日(日)23時〜】霧とリボン オンライン・ショップにてスタートします。
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商品名Anthology~ルネ・ヴィヴィアンの寢臺
限定450部・箔押しブック型箱入・香水壜の蔵書票つき
Calligraphy for limited no. by Fumiko Saburi
外箱サイズ|22.9cm×14cm×2.8cm
内容物|
『菫色宣言』(活版印刷・シート)
ルネ・ヴィヴィアン詩選『菫色の遺品』(活版印刷・手製本)
Essays『菫の花束』(アンカット製本)
『《菫色の文法》展 vol.1 作品集』(リーフ状・リボン綴じ)
菫リボン会文藝集『Sumire Ribbons I』(薄紙ポスター)
目次・プロフィール(リーフレット)
企画・造本・意匠|ミストレス・ノール
発行年月日|2011年3月21日
★本イベント限定「すみれのちいさなカード」付き(3種各1枚)
*詳細はオンラインショップに掲載しています
ミストレス・ノールが企画・キュレーションを手掛けた展覧会「菫色の文法〜ルネ・ヴィヴィアンの寢台(2011年・ヴァニラ画廊)」開催時に同時刊行された、展覧会作品集も兼ねた箱入限定版アートブックです。
ヴィヴィアン研究の第一人者・中島淑恵先生による新訳はじめ、ベル・エポック研究で知られる小早川捷子先生のエッセイも収録した贅沢な一冊。
ヴィヴィアンの小部屋の記憶が詰まった紙片をどうぞご堪能ください。
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