ちゃいまるのお暇
「チリリリ・・・・ン」風がふわっと吹き、うっとりと気持ちが緩んで笑みがこぼれる。
2年前の夏にドはまりしたドラマ「凪のお暇」に時折出てくる印象的なシーン。主人公の凪を演じる黒木華さんの柔らかい笑顔につられて私も笑顔になる。
コロナで在宅勤務を続ける中、お昼休憩の楽しみに録画を見直して笑ったり泣いたりしていたのだが、今日ふと思いついた。
お暇ごっこしよう。
日常が非日常に
お昼休憩。
冷蔵庫に残っていたビーフシチューを温め、サラダに自家製とりハムを載せトマトを切る。トーストを焼いてアイスコーヒーを注ぐ。無印良品で買った木のトレイに乗せる。
自室と、夫の仕事部屋から丸椅子を二つベランダに運ぶ。一つをテーブル代わりに、トレイを持ち出す。室外機の熱風があたらないポジションを探り、腰を下ろす。
「いただきます」と手を合わせ、氷たっぷりのアイスコーヒーを一口飲んだ瞬間。
「チリリリ・・・・ン」というあの音が、聞こえた気がするのだ。
凪のお暇とは
周りの期待や、空気を読み取り「きちんとしたいいこ」を演じていた主人公「凪」ちゃんが、仕事も彼氏も何もかも捨て、身一つでボロアパートに引っ越す。「人生のおいとま」の期間にいろいろな人々と出会い、本当に自分が好きなこと、やりたいことを見つめなおすというストーリーだ。原作はコナリミサトさん、私はドラマしか見ていない。
仕事はバリバリでき、気配りも完璧。なのに凪に対してだけは好意を素直に表現できず、「好きな子をいじめちゃう」タイプの不器用さの元カレ「慎二」(高橋一生さん)。アパートの隣に住む自由すぎるイケメン優しすぎ人たらし「ゴンさん」(中村倫也さん)。癖がありすぎるが魅力的な二人の男性が徐々に凪ちゃんへの思いを募らせていく様子は本当にキュンキュンにやにやがとまらなすぎて、夫も子供もいない時間にしか見られないのだが、それ以外の登場人物も魅力的すぎて、いちいち共感が止まらない。
今まで無理し続けてきた凪ちゃんは、ゆっくりとコーヒーを飲んだり、公園でお昼を食べたりする瞬間に、今まで読み続けてきた「空気」が、「吸って吐くもの」だと気が付く。
呼吸ができた瞬間にあの「チリリリ・・・・ン」が鳴るのだ。
空を見上げること、今に身をゆだねること
ベランダで熱風になぶられながら、揺れる植木鉢の葉っぱや、青空を横切る飛行機をぼんやり眺めた。会社での休憩時間はnoteを書いたり次席でスマホをいじったりしていたし、在宅勤務では一日中冷房の効いた部屋にこもっていた。外でご飯を食べるなんていつぶりだろう。
ああ、気持ちいいなぁ・・・
隣にゴンさんはいないけど、ほんの60分しかないけど、スマホも見ずただ食べて、飲んで、風と日差しを感じる時間は「おいとま」そのものだった。
今度の休みは、夫と娘も誘ってベランダでピクニックしよう、あんまり暑くなければ。
お暇ごっこ、おすすめです。