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NETFLIX コンテンツ帝国の野望
NETFLIXの成り立ちや、ブロック・バスターとの戦いなど、どうビジネスモデルが変化したのか、気になったので読んでみました。
ネットフリックスは、「ストリーミングの百年帝国」構築を目指している。エンターテイメントはこれから否応なしにこの戦いに突入する。
視聴者はビンジウォッチング(一気見)によって高揚感を得ている。何時間もぶっ続けてドラマを見ていると、ネットフリックスに惚れ込んでしまう。
「われわれにとって未来とは未知の世界を開拓すること。役立つのはビッグデータ。新しいオリジナルドラマを制作しようというとき、ビッグデータを活用すれば適任の監督・俳優を割り出せるし、潜在的視聴者の人数も割り出せる。その1回目が「ハウス・オブ・カード」だった。
ネットフリックスは、目先の利益よりも成長を優先する典型的IT企業。18年までにコンテンツに130億ドル投資し、このうち85%をオリジナルコンテンツへ回す計画を策定した。
郵便DVDモデルは終わると見て、「最後のDVDは自分の手で配達する」と公言している。地上波テレビの時代は2030年に終わりを迎え、それ以降はインターネットの時代が100年以上続くという。
第一級の顧客サービスと翌日配達を組み合わせると、売り上げを増やせるだけでなく、顧客離れを防げる。配達の遅れにはお詫びの電話を入れる。「一度つかまえたお客は絶対に逃すな」
オラクル社ソフトウェアをカスタマイズして、検索機能とフルフィルメント(受注、商品仕分け、梱包・発注、在庫管理、決済処理などの業務全般)機能については利用者が1千万人に達しても対応できるようにしておくべきとした。最初の1ヶ月で100件の注文を取るだけで御の字だったのに。
スキップシッピング(飛ばし発送)
自動化プロセスをすべて回避するために、DVD入り封筒を配達地域ごとに27個の郵袋に仕分けして、ドック(郵便トラックに郵便物が積み込まれる場所)へ直接持ち込む。
インフルエンサーをモニターにし、ウェブサイトのローンチ日にネットフリックス誕生のニュースを独占的に配信する権利を与えた。インフルエンサーは誰1人として断らなかった。
ローンチから4ヶ月間で倉庫からレンタル用に合計2万枚のDVDディスクが配送され、返却された。ネットフリックスの月間売上高は10万ドルを記録し、理論上では早くも100万ドル企業になった。
映画評価システムは「メンターグループ」をつくり、もともとは選択肢に入ってなかったような作品へ顧客を誘導する。専門用語で「協調フィルタリング」と呼ばれる。
若い起業家に宛てた手紙の中で「僕たちは当時、ネットフリックスを生き永らえさせるために何年にもわたって血尿を出し続けていた。その間にどうにかして解決策を見つけられないかと思ってね。シリコンバレーで起業家として成功しようと思ったら、みんな同じような洗礼を受けるんだ」と書いている。
マーケティングチームが有望視したコンセプトは2つあった。1つは毎月定額で見放題のサービスを提供するサブスクリプションプラン。「ホーム・レンタル・ライブラリ」と呼ばれた。もう1つは、「シリアライズド・デリバリー(連続配達)」顧客がレンタルした映画を返却すると直ちに次の映画を自動的に郵送し、同時に課金するプラン。
ネットフリックスは、急成長しながらも赤字体質から抜け出せていなかった。2000年4月までに契約者ベースは12万人に達し、サンノゼの倉庫は毎月80万枚のDVDを発送していた。赤字幅は1998年の1100万ドル(売上高は140万ドル)から99年には2980万ドル(同500万ドル)へ拡大していた。
IPOへの障害は、現金ではなく見掛け
1.人員をカットできる
2.現金を無駄に使わない
3.ブロックバスターやウォールマートの攻勢を跳ね返せるほど身軽でスピーディー
IPOによって競争相手の注目を浴び、急成長のオンラインレンタル市場への新規参入を促す可能性がある。
ブロックバスターの新規契約数は連番で会員番号が割り振られたため、1週間に1度のペースでブロックバスター・オンラインへ新規申し込みをして、会員番号を記録して分析すれば、
1.マーケティングへの支出はどれだけの効果を生み出しているか
2.契約者ベースはどれだけのペースで拡大しているか
3.オンラインサービス向け映画の発送本数はどれだけか
などかなり正確に計算できる。
大都会を越えて郊外に行き、サッカーママとナスカーパパを見つける。(前者は子供にサッカーを習わせている中流階級の母親、後者はナスカーレース観戦を楽しみにしている労働階級の父親)そのために、会社と経営幹部のイメージを変えなければならなかった。ネットフリックスはすごいブランドだと思わせる。
ネットフリックスをニュースメーカーにして、「放っておいてはいけない会社」という意識をマスコミに植え付ける。
契約者500万人が目標だった。出費が先行する立ち上げ局面を終えて、投資回収局面に入れる。ブロックバスターが現在1人の契約者を獲得するために50ドルも投じているのに対して、ネットフリックスは、38ドルしか使っていない。
偉大なブランドは個人的なレベルで消費者と繋がらなければならない。優れたレコメンドエンジン「シネマッチ」や熱狂的な口コミ。
消費者が理屈抜きに特定のブランドに思い入れを持つようになれば、消費者が顧客として毎月おカネを払い続けるかどうかを決定づける。ブランドへの感情が大切。
デジタル配信に3つの市場がある。
1.ネットフリックスのサブスクリプション型ストリーミングサービス
2.アップルのiTunes型ダウンロードサービス
3.YouTubeが開拓した無料ストリーミングサービス
2008年はデジタル元年。全世界で見ると2008年に映画コンテンツ(映画館とホームビデオ)の売上高が831億ドルにとどまったのに対し、オンライン・モバイル(デジタルメディア)経由の売上高は900億ドルに達した。
本当にすごいのは、リードの勇気。何千万人もの契約者を遠ざけてしまうリスクを承知で、正しいと思うことを実際にやってのけた。自分の信念を突き通した。
1997年から創業15年で、ネットフリックスは劇的な成長を遂げた。最初は大きな目標を掲げた。革新的でありながら、いつ経営に行き詰まってもおかしくないスタートアップだった。それが今では、グローバル展開にも乗り出した年商50億ドル企業。
DVDディスクレンタルのサブスクリプションモデルの具体的な内容や、ブロックバスターなど競合との戦い、ストリーミングモデルに変わった具体的なエピソードなど書かれていてコンテンツビジネスモデルのとても参考になる1冊でおすすめです!もう1冊ある、NETFLIX本も見てみたいと思います。