王者に挑んだSEAGULLS

今回は21/22プレミアリーグ第9節ブライトンvsマンチェスターシティ(マンシティ)の一戦を分析します。この試合は、前節終了時4位につけている今シーズン好調なブライトンと3位マンチェスターシティとの上位対決となりました。前年度王者に対してポッター監督率いるブライトンがどのよう振る舞うのかとても興味深い試合でした。

スターティングメンバー

スタメン

こちらが、この試合のスタメンです。

注目のブライトンは前節のノリッジ戦から右WBをフェルトマンからマーチに代え、フェルトマンは右ICBにダフィの代わりとして起用されました。マーチは左利きのウィンガーです。それをスタートから起用したことは、フェルトマンよりも攻撃時にアクセントをつけてほしいという狙いがあったのかもしれません。そしてブライトンのフォーメーションを532と表記していますが、攻守両面でこの形を採用している場面はありませんでした。

ではどのような形で戦っていたのかそれについてはもちろん分析の中で後述します。

ブライトンの守備

それでは最初にブライトンの守備について見ていきましょう。

ブライトンの守備配置は以下の図のようになります。

ブラ守備①

532ではなく左のククレジャを下げた442の形で戦っています。これはブライトンの普段からのやり方で今節特別に採用したものではありません。前節のノリッジ戦・その前のアーセナル戦も守備時は同じ442でした。しかし今節は右WBに攻撃的なマーチを起用しているため、普段は左SHとして守備を行うククレジャが左SBになっているという点が異なっています。このような普段とは異なる布陣で臨んだことは、ダフィがベンチに入っていたため右のマーチ起用には明確な目的があったということでしょう。そしてその目的は前述した攻撃面での狙いでしょう。

そして、この配置がマンシティのGKからのビルドアップ時には以下の図のような形となります。

ハイプレスブライトン

ほぼマンツーマンのような形で前プレをかけます。エデルソンがCBのどちらかにパスを出すと、中央を閉めていたモペイとトロサールの2トップのうちボールサイドとなる片方の選手がボールを持つCBへプレスをかけます。そしてアンカーのロドリにはララーナが対応しエデルソン以外をマークします。

そしてエデルソンが絡めないミドルゾーンでのビルドアップ時での守備もこのような形で行っていました。

画像4

図のように2トップが2CBのタテを切るように立ちプレスをかけていました。

このようにブライトンは守備ブロックを作りべたびきになるのではなく、勇気を持ってマンシティのビルドアップを奪いに行こうと守備を行っていました。マンシティ相手ならば勝ち点1でも十分に思えるのですがそれは狙わず攻撃的な守備を行っていく。とても好感が持てましたし、しっかりとチームとして機能していました。

そしてポッターはただ前プレを行わせるのではなく、マンシティ得意な5エリアをとる攻撃への対策も忘れていませんでした。

5エリア攻撃への対応

むさく

上図はもしもポッターがなにも考えずに442でマンシティに前プレをかけていたら?という仮定を表現しました。おそらく図のように中盤で2対3の数的不利な状況が発生すると思います。                 (図ではブライトンCHがマンシティIHに対応しロドリがフリーとなっているマンシティの中盤のマークの仕方は他にもあるがどれにしても数的不利)

では、ポッターはどのようにこの状況が起きないように対策を打ってきたのかでしょうか。

その対策とはCBダンバーンに右IHベルナルドのマンマークを命じたことです。既に上から3枚目の図で示してはいますが、このようにして中盤の2枚+CBの1枚で中盤3枚をマンマークしていました。ダンバーンは前半執拗にベルナルドのマンマークに付きベルナルドに仕事をさせませんでした。後半は、3点リードされてしまったこともありブライトンの戦い方が変わりそれによりダンバーンの役割はなくなりました。

ダンバーン守備のタスクにより右ハーフバイタルに入ることになるベルナルドに対応します。ボールの位置に関わらず、ベルナルドの背後にはもれなくダンバーンがいました。

そしてプレスをいなされ押し込まれたときは下図のようにマンシティの5エリア攻撃に対応していました。

おしこま

442の両SBがマンシティの両WGにそれぞれ対応します。そして両ハーフバイタルは左はダンバーン・右はグロスが埋めていました。左ハーフバイタルに入るギュンドアンはグロスにマークされボールを受けれなくなるとゴール前にポジションを移すなどグロスに対して駆け引きを行っていました。それに対してグロスはそのままギュンドアンのマークに付いていました。そしてギュンドアンによって空けられた右のハーフバイタルにはマーチが戻っていました。基本的にフェルトマンがグリーリッシュと一対一をする場合にはフェルトマンの背後にカバーを置くように守備を行っていました。

このように結果からみればブライトンの守備陣形は532ですがハーフバイタルをISBでなくCHに守らせる少し特殊な形となっていました。

そこには前プレは442で対応するが、押し込まれた際には442のままだと5エリア攻撃の対応ができないと判断したこと。そしてマーチをWBのように敵のWGの守備対応に担当させても自チームへの利益がそこまでないと考えたポッターの意思が反映されていた守備陣形だったと思います。

マーチには攻撃時にマンシティが前がかりとなってできた背後のスペースにカウンター時に出ていくことを期待ししていたと思います。

以上のようにブライトンは守備戦術を落とし込んでこの一戦に望んできました。

ブライトンの攻撃とマンシティの守備

次はブライトンの攻撃とマンシティの守備について見てみましょう。

ブライトンの攻撃は普段通りの形でした。

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スタメン図の3CBが左にスライドして、2CB+GKのサンチェスの3人でビルドアップを行いそれをララーナが中心グロスもサポートに下がるという形です。またサンチェスがビルドアップに絡めない場合は、CB陣はスライドせずそのまま3CBでビルドアップを行います。

これに対するマンシティの守備は中盤からベルナルドを出した4411 (442)です。ベルナルドはララーナをマークしつつ、CBやGKにもプレスをかけていました。そして、左のグリーリッシュはボールが右サイドにあるとき中に絞りCHのグロスを見るような立ち位置を取り、サイド圧縮で高い位置でボールを奪おうとしていました。

フェルトマンがボールを持つとグリーリッシュがプレスをかけに行き、グロスはベルナルドがマークしていました。

また下図のようにベルナルド・ギュンドアンの2IHが前に出て、ララーナ・グロスにマークを付ける4141で前プレをかけるようなシーンもありました。

シティ前プレ

ブライトンはサンチェスも使って簡単にはボールポゼッションを放棄せずボールを回していましたが、思い通りにビルドアップができませんでした。

結局ブライトンはうまくビルドアップができずゴール前にボールを運べないまま30分には3失点してしまいました。前述したマーチの起用も前半ではボールに触れることが少なくほとんど意味のないものになっていました。

敵の前プレを利用しろ!ブライトンの改善策

ではどのようにブライトンはビルドアップを行うべきだったのでしょか。

前述したようにマンシティの前プレは4141となります。このプレスでマンシティの中盤にはスペースが生じます。それは下図の通りロドリの脇です。

アンカー脇

このスペースはIHが低い位置のCHを捕まえに行こうとすればするほど拡大します。ブライトンはもっとこのスペースを意図的に狙うことができれば、前プレを受けてもチャンスを演出できたかもしれません。アンカー脇にボールを供給して一気にチャンスになることはなくても、アンカー脇で受けることでロドリをボールサイドに引き付けることで逆サイドにはスペースがうまれます。

ひきよせ

ブライトンの21分の攻撃のシーンはアンカー脇を狙えいて、ゴール前までボールは届きませんでしたが素晴らしい形でした。2失点目の直前のブライトンの攻撃のシーンもサイドから中央のモペイにボールが入りそのお年をトロサールがロドリの脇のスペースで受けたことが起点となっていました。

このように試合中にもロドリの脇を狙う攻撃はありました。したがってチームとしては狙いどことして共有されていたのかもしれません。しかし、頻度が少なかったです。またCBからの配給がメインとなっていました。これがフィールドよりも時間的に余裕ができるGKのサンチェスが狙うことができたらよかったのかなと思いました。

サンチェスはショートパスの技術はありますがそのような中盤へのフィードはあまり得意な感じはしません。このような技術にさらに磨きがかかるともっと素晴らしい選手になるだろうと思いますし、ブライトンは得点を増やせると思います。

また左のダンバーンの立ち位置が開きすぎているためボールを受けたとしても、その目の前にはジェズズがいてボールを前進させることができない。ククレジャにボールを渡せたとしても角度のないパスのため後ろ向きでパスを受け、ウォーカーに前を向けさせてもらえずにボールロストなどが起きていました。3CBをスライドさせて攻撃を行うことがブライトンの特徴ではありますがCBがどれだけ開くのか今後改善が必要です。

後半の修正 一矢報いるために

前半で3失点してしまったブライトンですが後半から以下のようにシステムを変更します。

後半

後半から4312にしました。

この変更の狙いは攻守両面からのアプローチだと思います。

まずは守備です。前半の442も考えられていたシステムということは前述しました。けれど4312の方が下図のように

後半

ボールサイドに圧縮した際に逆サイドの敵はフリーになるのですが、より中央に人数をかけて守ることができます。442のままだとモダーがウォーカーの対応のためこれほど絞れません。

敵SBにはIHがプレスをかけます。ララーナはマークがいなくなりフォデンが偽9番で下がってきてもCBからマークを引き受けることができます。中央に人数がいる分ボールを高い位置で奪える可能性も高まり、奪えた後のカウンターが威力が出ます。

そして、ダンバーンのベルナルドマークの役割をやめてトップ下に選手を置くことで前線の人数を増やす狙いがあり、一方でベルナルドの対応をIHのモダーに任せたということになります。攻撃の枚数を増やしつつリスクも管理した采配と言えるのではないでしょうか。

攻撃の面ではまずはカウンターの威力です。守備のときボールを自陣に運ばれた場合でも4312で対応して前線に3人残そうとしていました。この3人でまずは1点返そうという狙いを感じました。

その3人の中で精力的に動いていた選手がマーチでした。深い位置で奪った瞬間にSB裏を狙うランニングなど前半とは別人にのようにブライトンの攻撃をけん引していました。

ここにきてやっと今節のマーチ起用の狙いが出ました。

修正に対する対応

しかしマンシティの選手たちはさすがです。敵のシステムが4312となればサイドチェンジを繰り返し敵を揺さぶる攻撃を増やしました。4312の守備を崩す定石通りのやり方です。

とくに敵IHがSBとIHのどちらも対応することがわかると下図のように敵IH・SB対してSB・IH・WG で3対2のような状況を作り敵を密集させ逆サイドに展開していました。

画像13

ブライトンの攻撃に戻しますが4312にしたことで敵を押し込んだ際には2CB以外をゴール前に上げかなりの人数をかけていました。マンシティから3点取るために攻撃の際にはもはやリスクを負うのはやむを得ないという感じがしました。

ブライトンがマンシティのサイドでの数的優位にどうのように対応すべきだったのか。これは一案なのですが下図のような形で守備をすべきでした。

画像16

SBに対してIHが対応するのではなく2トップでボールサイド側の選手がバックパスのコースを切りながら対応し、2トップの逆サイドの選手はCBの間に入りCBやGKにアプローチできるようにさせるべきだったと思います。こうすれば、敵の前線の選手をフリーにさせることなくボールが入ってくればその場で対応することができより効果的にボールサイドの圧縮が可能だったとと思います。

ビルドアップの配置

またビルドアップの配置も下図のようになっていました。

後半攻

ランプティが入ったことで右外を使う選手ができその上がってできたCB・SB間のスペースにグロスなどCHが下がりマンシティの2トップに対してダウン3を作ってプレスを外すシーンがありました。

66分ではべルナルド・ギュンドアンをララーナ・グロスでつり出してロドリの脇を使ってうまく前進するという前述した理想の前進のシーンがありました。

ブライトンは後半からの修正やマンシティのプレスの連動が疲労などから緩くなるなどの要素によって前半よりもかなり押し込む時間やシュートなどが増え1点を返すことができました。

しかし追加点が奪えず敗戦となってしまいました。

マンシティの変更?

後半のマンシティは攻撃の変化は前述したブライトンのシステム変化に対する対応です。

守備での変化はジェズズの立ち位置です。ジェズズは前半ダンバーンが左サイドに広がるためそれの対応していました。しかし後半は前半より高めの位置でダンバーンを牽制しているようでした。両WGに(グリーリッシュは前半から)CBに対して外切りで寄せるようにしたように見えました。

ジェズズ

ただ前半からジェズズのダンバーンへの対応を考えると、これは監督からの指示による変化ではなくブライトンのシステム変更によるダンバーンの立ち位置の変化によるものなのかと思います。

まとめ

以上のようにブライトンは結果だけを見れば大敗を喫していると思われるが、内容を見ていくとどうにか王者に食らいつこうとしていることがわかると思います。とくに前半のマンツーマンに近い守備の仕方などはかなり考えたものだと思いますし、マンシティもうまくプレスを外せてはいませんでした。マンシティからすればブライトンに苦しめられる前に得点を重ねられたことが大きかった試合だと感じました。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。


試合結果

ブライトン (1-4) マンシティ



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