最強マンチェスター・シティを色々な角度から考察(戦術・試合・選手・補強・育成)の試合考察
こんにちは。
マンチェスター・シティ大好き松嶋俊です。マンチェスター・シティの試合についてはInstagramで試合ごとに解説しています。
1880年、マンチェスターのセント・マークス教会がチームを結成し、アーディックAFCとなり、1894年に現在の名称となりました。2008年にUAEの投資グループに買収されて以降、豊富な資金力を活かしてプレミアリーグ有数の強豪クラブとなり、2011-12シーズンにマンチェスター・ユナイテッドを僅差で凌ぎ、44シーズンぶりにリーグ制覇を果たします。
2017-18シーズンにプレミアリーグ初となる勝ち点3桁でのリーグ制覇を果たし、現在までにフットボールリーグ時代を含めて5回のリーグ優勝を経験しているクラブです。
1.新オーナーによりチームが大きく変わる
2008年9月1日、当時のオーナーであるチナワット会長はオーナー権を1年でUAEの投資グループ、アブダビ・ユナイテッド・グループ・フォー・デベロップメント・アンド・インベストメントに売却してしまいます。
新オーナーとなったカルドゥーン・アル・ムバラク氏は、あり余る資金力を背景に、同年夏にレアル・マドリードからロビーニョを獲得に始まり、2010年夏の移籍市場ではダビド・シルバ、ヤヤ・トゥーレ、ジェイムズ・ミルナーら実力者を獲得。一方でスティーヴン・アイルランド、ロビーニョらを放出しました。
さらに2011年冬の移籍市場ではエディン・ジェコを獲得し、アデバヨールら余剰戦力となっていた選手らをレンタル移籍させ、着実にチーム力をつけ、2010-11シーズンは1968-69シーズン以来35季ぶりとなるFAカップ優勝を果たしたほか、プレミアリーグを3位で終えてクラブ史上初となるUEFAチャンピオンズリーグの出場権を獲得しました。
また、2011年夏の移籍市場ではセルヒオ・アグエロ、サミル・ナスリ、ガエル・クリシーらスター選手を獲得し、莫大な資金力を活かして、実力者を次々とチームに招き入れています。
更にアブダビ政府所有の航空会社エティハド航空と1億5千万ポンドと噂される額で10年間のスポンサー契約を締結し、スタジアム名称をエティハド・スタジアムと変更しました。
2.シティ・フットボール・グループを
通しての世界との関わり
2008年、アブダビ・ユナイテッド・グループの子会社として設立された、マンチェスター・シティを筆頭とした多数のクラブを保有しています。
ビジョンとして人々を熱狂させる「Beautiful Football」を掲げ、ただ勝つだけでなく、観客が楽しめるサッカーを展開しながら勝つことを目指し、とにかく攻めて、シュートを打って、点を取りに行く、非常に攻撃的なサッカーをすることを目指しています。
また、マンチェスターという地元を大切にしながらも、世界中で多彩なコミュニティ活動を展開していくことも目的とし、世界に10チームほどを保有、提携しています。
日本でも2014年に日産自動車とグローバルパートナーシップを締結し、横浜F・マリノスの少数株主となることが発表され、2015年3月には、正式にシティ・フットボール・ジャパン(CFJ)を立ち上げました。
私個人としての見解は、世界中で多彩なコミュニティ活動を展開していくことを目的としながらも、世界中から、有能な選手や才能の原石をかき集め、ゆくゆくはマンチェスター・シティに吸い上げていくことが真の目的なのではないかと思います。(あくまで推測ではありますが・・・)
3.マンチェスター・シティのスタイル
3-1.フォーメーション
マンチェスター・シティのフォーメーション
※2020~2021シーズン3節時点
基本的なシステムはか4-2-3-1か4-3-3で戦っています。
主な戦い方としては、システムの並びこそダブルボランチですが、中盤の構成はフェルナンジーニョがアンカーボランチに位置し、インサイドハーフにデブライネとロドリなどが流動的に努めるという形になることが多いです。
いわば自由に周りの味方と連動しながらポジショニングしていきます。
攻撃時はポゼッションを基本としており、GK含めた11人全員が丁寧にボールを繋ぎながら、相手守備陣の間が割れ始めると、インサイドハーフやFWなどに鋭い縦パスを入れ、前線に人数を集めて崩し切ります。
インサイドハーフの選手も果敢に前へ飛び出してFWの選手をサポートします。選手間の距離は基本的にはコンパクトに保ち、テンポの速いパスで相手守備陣形を割れさせることを目的としています。
今までのマンチェスター・シティはこれといった戦い方、戦術などはありませんでした。指揮する監督の戦い方によって、多少の色付けはありましたが、基本的には選手の能力任せで戦っていた印象です。
しかし、ある男が監督に就任した途端、チームは劇的に変貌していきます。
3-2.ペップ・グアルディオラ
引用元:ZONE
2016~2017シーズンに、バイエルンミュンヘンからマンチェスター・シティの監督に就任したペップは、様々な戦術を作り出します。
その中で、私が個人的に紹介したい戦術があります。
3-3.5レーンからのポケット(ハイサイド)攻略~
マンチェスター・シティの戦術
図のように、コートを縦に5分割し、その中にバランスよく選手がポジショニングし敵がマークをしづらい状況を作り出します。
そして、この中間のレーン(ハーフスペース)を有効に使い、インサイドハーフの選手が、敵サイドバックの背後(ポケット)へとランニングします。その結果、敵ボランチが付いて行かざる負えなくなり、FWへのパスコースができ、効果的に前向きを作り出すことが出来ます。
敵ボランチが付いてこなければ、そのままパスを受けて、敵陣の深いところで起点を作り出すことが出来る、非常に効果的な攻撃だと私は思います。このような、ロジカルで理にかなった戦術を次々と作り出したペップのおかげで、何の色もなかったチームは一気にペップ色に染まっていきます。
3-4.デブライネの覚醒
デブライネ
引用元:ZONE
デブライネはいま、キャリアのピークを迎え、クラブと代表でリーダーを務める司令塔は世界最高のミッドフィルダーの一人としてピッチに立ち続けています。
チェルシー時代にモウリーニョ監督から直々に中盤で6番手だということを言い渡されたデブライネは、出場機会を求めて2014年にブンデスリーガのヴォルフスブルクに移籍し、2014-15シーズンでは、ブンデスリーガ全34試合に出場すると10得点20アシストを記録し、ヴォルフスブルクを2位に押し上げ、ドイツ年間最優秀選手も受賞しました。
その活躍を自信に変え、2015年にマンチェスター・シティに移籍してきたデブライネはペップのもと、主に右インサイドでプレーし、自身のポジショニングだけで相手の陣形をずらしてチームメイトを活かす戦術眼を兼ね備えており、使う側だけでなく使われる側になることもできる。
ボックス右付近でボールを受けてファーサイドに正確無比のクロスを供給する一連の流れは、チームの得点パターンとなっています。
最も飛び抜けている能力はやはりパスであり、ロングパス、ショートパスなど様々なキックを正確に蹴り分けることができ、敵陣を切り裂く縦パスと、相手のDFとGKの間に放り込むクロスはとても美しい軌道を描いて味方に届けられます。
グアルディオラ監督もデブライネを賞賛しており
「ケビン(デ・ブルイネ)は私が今まで見てきた中で最高の選手のうちの一人だね。特に、ゲームメイクの点に関してね。彼はトップクオリティーの選手だし、とても落ち着いている。私は彼と共に仕事することができて嬉しいし、誇りに思っている」
と語っているように、マンチェスター・シティに欠かせない《働く王様》として君臨しています。
3-5.ダビド・シルバの後継者
ダビド・シルバ
引用元:超サッカー
長年にわたり、マンチェスター・シティの攻撃のリーダーとしてチームに貢献したシルバが2019~2020シーズンで退団することが発表された際、シルバほど優れた選手の代わりは当分出てこないだろうと、抜けた穴の大きさと、その不安が各メディアで取りざたされていました。
しかし、グアルディオラ監督は
「代わりの選手を獲るつもりはない。ダビド・シルバが去る時が来れば、チームの新たなマジシャンが誰なのかは、今からはっきりしている。既にシティにいるのだ。ここで育った、我々の仲間さ。素晴らしいプレーを見せてくれるはずだ。プレミアリーグで最高の選手の1人になる」
とフォーデンについてコメントしたことにより、シルバが抜けた穴への不安が、フォーデンに対する期待へと変わっていきました。
3-6.フィル・フォーデン
フィル・フォーデン
引用元:超サッカー
フォーデンとシティの契約が2023~2024シーズンまで延長された際、
「フォーデンの新契約は偶然の産物なんかじゃない。絶対に放出があり得ない選手は彼だけだ。彼だけは、どんなことがあっても手放さない。移籍金5億ポンドでもあり得ない。フィルは誰にも渡さない。フィルこそ、シティだ」
と言わしめるほど、ペップ・グアルディオラ監督はフォーデンの才能に惚れ込んでいます。主に左インサイドハーフでプレーするフォーデンは、相手の嫌がるところに、身を置ける戦術眼や読み、抜群のパスセンスでチャンスメイク、高いボールキープ力で、相手からプレスを受けても、体を上手く使って高い確率でボールを失いません。
まさに、何でもトップレベルでこなしてしまう選手なのです。
そんなフォーデンは9歳からマンチェスター・シティFCの下部組織に所属しています。彼ほどのプレーヤーを育て上げたマンチェスター・シティの育成組織は一体どんなものなのか紹介していきます。
4.シティ・フットボール・アカデミーへの期待
2014年、1億5000万ポンド(約195億円)の巨額を投じてオープンさせたシティ・フットボール・アカデミーには、世界中から才能が集まって来ます。
シティの影響力はもはや世界規模に拡大し、先ほど紹介した「シティ・フットボール・グループ」は、ニューヨーク、メルボルンをはじめ、横浜F・マリノスやスペインのジローナ、ウルグアイのアトレティコ・トルケなど世界各国のクラブを保有し、各大陸に拠点を増やすことでスカウト網を広げています。
その網にかかった有望なタレントが、最先端のシティのアカデミーに集められ、磨き上げられ、リザーブチームのメンバーになったり、各国の提携クラブに貸し出されたりして、厳選されていきます。
しかし、シティの選手としてプロのピッチに立てるのが11人、ファーストチームに入れるのも25~30人と、厳しい現実も存在します。しかし、そこからあふれた選手は売りに出し、「お金」に変える。
その戦略が、クラブに財をもたらすと同時に、シティ・フットボール・アカデミーの価値を高めることに繋がっています。
シティは過去3年間でリザーブチーム所属ないしは、トップチームに上がったばかりのアカデミー出身者16人(10代後半~20代前半)を他クラブに売却し、1億5300万ポンド(約199億円)もの利益を得たといいます。
これだけでアカデミー建設の費用の1億5000万ポンド(約195億円)が回収できてしまう額なのです。
その16人の中には、ケレチ・イヘアナチョ(→レスター)やジェイドン・サンチョ(→ドルトムント)
など、すでにその才能をトップレベルで評価されている選手たちも多数いることから、シティのアカデミーの指導力の高さは誰もが認めています。
しかし一方では、若手選手を「クラブの未来」ではなく「投資の対象」として見ることの賛否はあり、またアカデミー出身者がトップチームに定着しないことや、リザーブチームで見守ってきた選手が簡単に出て行ってしまうという意味では、応援するサポーターの心情的には複雑なものがあります。
ですが「若手の発掘→育成→売却」の流れは、世界のサッカー界では当たり前のように存在し、ビジネス的にも利益を生み出しているわけですから、成立していると言えます。
実際にクラブの貴重な財源になっているわけですから、アカデミーへの投資や、クラブのビジョンが実った一つの成果とも言えます。
5.今シーズンのマンチェスター・シティ
インスタグラムにて試合の解説をしています。よければ、どうぞ。
https://www.instagram.com/sportjoy01/?hl=ja
今シーズンのマンチェスター・シティを簡単に言えば、苦しんでいます。第4節終了時点で、1勝1敗1分け(1試合未消化)と、本来の調子を発揮できないでいます。
その象徴的な試合となったのが、第3節の対レスター戦。
開始早々にリヤド・マフレズのゴールで先制したシティですが、前半のうちにPKから同点にされると、後半にはさらに2つのPKを含む4ゴールを許して2-5で逆転負けしました。
後ほど紹介する私のインスタグラムでも述べましたが、レスターのゲームプランは
「どうせ相手にボールを保持されるのなら最初からこっちがボールを保持しようと努力することはやめましょう」
という感じでした。5バック気味に構えて、よりシティを自陣に引き込み、ボールを奪ったら、シティDF陣の背後にできた広大なスペースにバーディーをランニングさせ、カウンターを発動させるプランでしたが。
シティもそのことは理解していましたが、レスターのカウンターの精度が高く、確実に得点まで結び付けられてしまいました。
5-1.ストライカー
アグエロとジェブズ
この試合でシティの弱さが浮き彫りになったポジションがストライカー不在です。
「我々に必要なボックス内で攻撃のできる選手がいなかった」
と試合後にペップ・グアルディオラ監督がコメントするように、現在のシティはストライカーの駒不足を露呈しています。
本来であればストライカーの役割を果たすべきアグエロは怪我で離脱中で、その代役を務めていた、ジェブズも怪我をしてしまい、本来サイドハーフを務めているスターリングが1トップを務めるというスクランブルな状況となっています。
スターリングでも十分クオリティは高いのですが、本来彼はチャンスメーカーであり【得点を奪う】ことだけにすべてを注いでいる選手ではありません。
つまり「生粋の点取り屋」ではないのです。今のシティにはこの点取り屋が不足しているため、チャンスメイクはできるが、最後の仕上げが出来る人材がいないことが、勝ちきれない要因となっているのだと考えます。
5-2.DFリーダー
ヴァンサン・コンパニ
ヴァンサン・コンパニが2019年夏に退団
元マンチェスター・シティのマイカー・リチャーズ氏がシティ対レスター戦後に
「シティのディフェンスはめちゃくちゃだ。ホームで5失点なんて恥ずかしい。弱すぎるんだ」
と厳しいコメントを残している。
現在シティには【DFリーダー】が存在しない。かつて、圧倒的な存在感で最終ラインをコントロールしていたヴァンサン・コンパニが2019年夏に退団後、代わりとなるDFリーダーを見つけることができていない。
このレスター戦でも、自分たちがボールをどう保持するかばかりを考え、カウンターへのリスク管理は度外視している印象がありました。レスターがカウンターのチームであるにもかかわらずです。
いざ攻められている時間帯でも、ボールが出たところにただ対応しているだけで、予測をし、チーム全体で奪いに行く綿密さは感じられませんでした。
この要因がDFリーダーの不在なのだと感じます。チームに指示を飛ばし、適切なポジショニングから、鋭いアプローチからボールを奪いにいき、その動きに周りも連動していく、シティ特有のディフェンスを、指揮する選手がいないのです。
そこを懸念してかコンパニの穴を埋めるため、8月にプレミアリーグのボーンマスからオランダ代表DFナタン・アケを獲得。9月にはベンフィカからルベン・ディアスを獲得したが、この2人が新しいDFリーダーとなっていくのかはまだまだ未知数ではないでしょうか。
6.今後のマンチェスター・シティは、
このまま終わるのか
もう負けが許されなくなったシティですが、今後はチャンピオンズリーグも始まり、日程も過密になっていきます。
これ以上怪我人を出さないように、選手達の稼働時間をコントロールしながら、トレーニングとゲームを行っていかなければいけません。
その中で、獲得した新戦力の選手たちに複雑なシティの戦術を落とし込んでいくのはなかなか大変な作業だと思います。
しかし、現在離脱している選手たちも復帰してくると思いますし、そこに新戦力がうまく融合できれば、本来の調子を取り戻すのではないでしょうか。
それでも、本来の調子が取り戻せなくなったときは、《ペップ・シティの終焉》が現実味を帯びてくるのではないでしょうか。
私としては、そんな現実だけは避けて欲しいと願いつつ、今後のマンチェスター・シティに大いに注目していきたいと思います!!!!!
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