いまさら聞けない「カスタムヘッド」って何?


こんにちは。マチュア・パーカッション代表の田中です。

この半世紀以上、打楽器奏者はプロアマ問わずプラスチックヘッドにお世話になっていますね。

今回はティンパニチューニングの難易度に関してダイレクトに関わったであろう「カスタムヘッドの登場」と「ノーマルと何が違っているのか」をお話したいと思います。

早速、カスタムヘッドとは何なのか?という事ですが、簡単に言うと「ヘッドの接着剤が溜まってるスペースに鉄板埋めたら丈夫になって音良くなるのでは?」という発想で作られたカスタムメイドのヘッドの事です。

これは1990年前後に登場した仕様で、レモ創業者の故レモ会長と元クリーヴランド管弦楽団ティンパニストの故クロイド・ダフ氏で開発されたと聞いています。最初は鉄板バージョンのみでヤマハがアルミバージョンを依頼したという話も昔聞きました。
現在アメリカでは薄鉄板と角取アルミと角取鉄板の3種類が販売されていますが日本はアルミ補強枠一種類です。

カスタムヘッドはその補強枠(カスタムリング)による剛性向上のおかげで、少々適当にテンションボルトを締めても狂いにくく精度の高いチューニングをしやすくなっています。これはカスタムヘッドの最大の長所だと思います。

そしてカスタム以前からあるティンパニヘッドはスタンダードと呼ばれており現在も売られています。見かけは一般的なドラムのヘッドと全く変わりません。
そしてスタンダードヘッドが全盛期の頃は

「精度の高いまっすぐ伸びるトーンにチューニングする」

という事が今よりかなり難しかったのですが、このカスタムヘッドの登場で音程精度は基本的に向上しチューニングの難易度は下がりました。

では「短所」はないのか?と言えばこれは長所と同じく「剛性の高さ」だと私は感じています。
ヘッドの余白がラディック・ヤマハ・パールなどのティンパニは多くの利点を感じますが、それに比べてヘッド余白が狭いティンパニにカスタムヘッドを装着した時に「音色は硬く音像が平たく、主音と倍音の分離感が強まる」と感じてしまいます。
ですので私は基本的にプレミアのスタンダード(つまりエリート以外全て)やラディックの旧スタンダードモデル等にはカスタムヘッドをあまりお勧めしていません。

上記の点を踏まえるとカスタムヘッドは決して万能ではないなと思うことがあります。ですが現在流通しているティンパニは余白が広いものがほとんどですのであまり問題ではなくなっていると思います。

ちなみに多くの方がお使いのルネッサンスのティンパニヘッドは発売開始時からカスタム仕様でしか売られてません。これはレモさんご自身から「スタンダードの仕様で作る事はしない」と聞きました(於 1996年アメリカ・レモ本社)ので間違いないです。

では次回はこの項目に関連してティンパニチューニングの事を書きたいと思います。


長文をお読み頂きありがとうございました。

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