マツカンフェス物語#45「佐野元春の『Save It for a Sunny Day』」
コロナ禍のライブ雑感編その5「佐野元春の『Save It for a Sunny Day』」
2020/12/15 TUE
管楽器修理のお店「マツカン」は11月28日(日)に横浜・関内で音楽フェスを開催することになった。
この音楽フェスの企画にコロナ禍が大きく影響を与えているのは言うまでもない。
緊急事態宣言やまん延防止の最中はもちろんのこと昨年2020年3月以降“生演奏”がままならなくなり、思うようにそれを見聞きすることが難しくなった。
今年2021年10月以降、急激に感染者数が減って、だいぶ公演が増えてきた。でも、相変わらず、観客はマスク着用、発声禁止。昔通りとはいかない。新しい“生演奏”の楽しみ方を模索している途上とも言える。
この1年半を振り返れば、また、感染者数が増える可能性はある。けれども、感染症対策のノウハウは蓄積され、コロナ禍でのエンターテインメントの新しい楽しみ方は身につきつつあると言える。
「マツカンフェス」には“あたらしいライブの楽しみ方”をみんなで作るきっかけになってほしいという思いもある。
そこで、この章「コロナ禍のライブ雑感編」では、生演奏の意義やその新しい楽しみ方について考えるきっかけになったコロナ禍での松本の個人的エンターテインメント体験をいくつか紹介していきたいと思う。
前回は、少し感染症が落ち着き、世の中でエンターテインメントが試行錯誤しながら開催されていた、2020年12月の舞台「オリエント急行殺人事件」について書いた。
今回も同時期に催されたライブについて書こうと思う。
それは2020年12月15日の佐野元春&THE COYOTE BAND「SAVE IT FOR A SUNNY DAY」東京公演である。
(以下敬称略)
場所は東京・LINE CUBE SHIBUYAである。50代のボクにとっては“しぶこう(渋谷公会堂)”と言った方がピンとくる。
公園通りの坂道をてくてくのぼっていく、あの感じがたまらない。
前回“しぶこう”に行ったのも元春のコンサートだった(2001/7/1(日)「Rock & Soul Review」)。
2020/12/15 TUE の渋谷
LINE CUBE SHIBUYA(旧「渋谷公会堂」)
当時感染者数もだいぶ低くなり、街にも人出が戻ってきた。
自粛生活“Stay Shop”をずっと続けていた僕にとっても本当にひさしぶりの繁華街だった。
仕事柄(接客業)、出来る限り感染を避けたいので、感染症対策をしっかりやっている演目に絞り、比較的人流の少ない平日を選んだ。
万が一クラスター発生した場合に参加者全員に連絡が取れるよう、事前に「個人情報の提出」がアナウンスされ、開場時間も以前と比べると早められていた。
僕も余裕を持って会場についた。事前にチケット半券の裏に住所・氏名・電話番号も書いておいた。
会場入り口では、そのことを知らなかった人たちの為に、改めて個人情報提出のお願いを係員が説明し、記入できるよう使い捨て鉛筆が用意されていた。
徹底的な感染症対策。その上でライブに踏み切る。慎重さと大胆さ。元春らしいと思った。
入場も、ソーシャルディスタンスを確保して、混雑を避け、時間をかけて行なわれていた。
開演前、マスクの着用、発声の禁止もアナウンスされていた。
照明が落とされ、THE COYOTE BANDの小松シゲル、深沼元昭、藤田顕、高桑圭、渡辺シュンスケ、Dr.kyOn、大井スパムが登場。
そして満を持して元春登場
割れんばかりの拍手だったが、あのいつもの“歓声”はそこにはなかった。
35年間18本の元春のライブに参加したが、こんなことはなかった。
改めて、今コロナ禍の最中なのだと実感した。
でも、曲が終わる際、最後の一音までしっかり聴くことができた。
これも35年間ではじめての経験だった。
曲の終盤客は興奮し、大きな歓声を上げるのが常だった。
それはそれで気持ちが高揚し素晴らしい体験である。
けれども、改めて、元春とTHE COYOTE BANDが一音たりともゆるがせにせずとてもシビアに演奏していることを今回はじめて知ることができた。
また、ヒット曲の時はみんなで歌う場面も当然今回はない。
「次の曲は是非みんなで歌ってほしい。あ、ダメなんだっけ?うん、心の中で歌ってほしい」
というお茶目なMCを元春が“天丼”で3回繰り返したところが微笑ましかった。
どことなく緊張感がこぼれそうなのを元春なりに和らげようとする“思い”がうれしかった。
そして、新曲「合言葉 - Save It for a Sunny Day」も胸に沁みた。
その日を待って
望みを集める
合言葉はそう
守って
守って
合言葉はそう
力を節約しとこうぜ
まだチャンスはあるよ
ゆっくり
世界は息を吹き返す
合言葉はそう
祈って
祈って
合言葉はそう
夢を節約しとこうぜ
皆さんご存知の通り、昨年11月、12月に少し収まった感染症は12月暮れにふたたび流行した。そして、年明け2021/1/8(金)から首都圏は再び緊急事態宣言に入り、3月下旬からの1ヶ月弱の解除を挟んで、9月いっぱいまで自粛期間だった。振り返れば、今年2021年は年の2/3が緊急事態宣言かまん延防止だったことになる。
今は昨年の同時期に似て、感染症が収まっている。
でも、どちらかというと慎重な僕はこれでコロナが収束したとはまだ思えない。
第6波もあるんじゃないかと思っている。
もちろん杞憂で終わってほしい。
けれども、たとえ第6波が来たとしても“今”の僕らには少しずつ“知恵”と“工夫”が身について乗り越えていく胆力があるはず。
それを信じて、今できることのひとつとして「マツカンフェス」を開催します!
つづく
残り5回は最終章「マツカンフェス準備邁進編」をお届けします。
頂いたサポートは管楽器修理に必要なパーツ購入費に当てさせていただきます!あなたのサポートが吹奏楽やオーケストラ、ジャズミュージシャンへの応援につながります🎶