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テクノ・リバタリアン(読書感想)


書籍の情報

テクノ・リバタリアン 世界を変える唯一の思想
橘玲
文芸春秋
2024年3月20日 第1刷発行

書籍の目次

はじめに 世界を数学的に把握する者たち
PART0 4つの政治思想を30分で理解する
PART1 マスクとティール
PART2 クリプト・アナキズム
PART3 総監督府功利主義
PART4 ネクストジェネレーション
PARTX 世界の根本法則と人類の未来
あとがき 「自由」を恐れ、「合理性」を憎む日本人

感想

テクノロジーの光と闇について考えさせられました。
20世紀は石油によって人がより速く、より遠くに移動できる社会をつくってきました。
しかし、結果として温暖化などの気候変動が引き起こされています。
21世紀は情報をより速く、より大量に運ぶことができる社会をつくっているといえます。
本書では時代の寵児であるテクノ・リバタリアンの思想や、彼らの追い求める未来について語られています。
彼らの”善意”によって、どのような”災厄”がもたらされるのかについても、理解を深めることができる良書だと思います。

参考になった箇所の引用

33ページ
テクノ・リバタリアンは、自由を重視する功利主義者のうち、きわめて高い論理・数学的能力をもつ者たちのことだ。

121ページ
Web1.0 はメールのような1対1の関係、Web2.0 はAmazonや楽天市場で買い物をするような1 (中央集権的組織)対多(消費者)の関係で、Web3.0は、非中央集権化されたユーザ同士の多対多の関係だ。
クリプト・アナキスト(サイファーパンク)の理想世界では、テクノロジーが指数関数的に「加速」することで、いずれ国家や企業のような中央集権的な組織はなくなり、一人ひとりが「自己主権」を持つことになる。「主権」は、神から与えられた権利で、フランス革命ではそれが王から民主国家に移った。そして今、主権は国家から個人に分散されつつある。

123ページ
問題は、非中央集権化されたWeb3.0の世界では、究極の自由を与えられる代償として、誰もが「自分のアイデンティティーを適切に管理する」責任を負わなくてはならないことだ。はたしてわたしたちは、「自己主権」を管理できるほど賢いだろうか。
クリプトアナキストは、暗号テクノロジーを使いこなし、自己主権を管理できる者たちのための理想世界を目指している。
だがその行き着く先は、途方もない「自由」に耐えられる「1%のマイノリティー」のためだけの世界なのかもしれない。

169ページ
イーロン・マスクやピーター・ティールを見ればわかるように、わたしたちは今、とてつもない富を獲得した、とてつもなく賢い者たちが、テクノロジーをエクスポネンシャル(指数関数的)に加速させて、社会を大きく改造する時代を生きている。「より良い世界」「より良い未来」をつくろうとする。彼ら(テクノ・リバタリアンの大半は男性)の意図は概ね良いもので、わたしたちの生活はより豊かに、より快適になっていくだろう。
だがどれほど賢い者でも、未来の災厄を予測する事は不可能ではないだろうか。
良い意図が必ず良い結果をもたらすとは限らない。このことに気づいた中世のヨーロッパ人は、「地獄への道は善意によって敷き詰められている」との警句を残した。

243ページ
エイドリアン・ベジャンは、世界の根本法則(第一原理)として「コンストラクタル法則」を唱えるようになる。
べジャンによれば、生物であれ、無生物であれ、あるいは微細な分子から広大な宇宙にいたるまで、この世界に存在するすべての物質(もちろん人間も含まれる)は、1つの単純な規則に従っている。それが、「流れがあり、かつ自由な領域があるのなら、より早く、よりなめらかに動くように進化する」という原理で、これには例外がない。
コンストラクタル法則は、生物か無生物かにかかわらず、同じ系(流れ)の中に置かれれば、同じような「かたち」に進化することを示している。
ダーウィン以来、進化には目的がないとされたが、コンストラクタル法則では、生物だけでなく、世界に存在するすべてのものが、「流れ」と「自由」がある限りにおいて、「より速く、よりなめらかに動く」という目的に向けて進化するのだから。
コンストラクタルは、世界の根本法則なので、もちろん人間社会にも適用できる。経済はモノ(サービス)とお金の流れ、インターネットは情報の流れだから、それはより速く、よりなめらかに流れるようなデザインへと進化し、グローバル経済や情報空間が拡張していく。それと同時に、必然的に、べき分布の階層性が形成されることになる。
「自由が拡大すれば、必然的に階層化が進む」のが普遍の法則ならば、社会がより豊かに、より自由になるほど、階層性(不平等)は拡大していくだろう。

テクノ・リバタリアン 世界を変える唯一の思想


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