手に入らない面白さを求めて

借りてきた映画がとことんつまらなくて、途中で観るのをやめてしまった。

すっかり気持ちが萎えてしまったので、パンチ強めな宮藤官九郎作品の一つである【少年メリケンサック】を観る。超ざっくりいうと、25年前に解散してしまったパンクバンドを復活させる話だ。

この映画は話の内容自体も面白いが、以前の職場でお世話になった音響エンジニアが何人かチラチラ映るのが面白い。宮崎あおいちゃんが可愛い。勝地涼のクソみたいな歌も笑える。


バンドといえば、私の彼も売れないバンドマンである。

音楽の世界、というか表現の世界というのはかなり難しい。頭が割れそうなくらい創作者が一生懸命アイデアを捻り出して、お金と時間をかけて形にしても、それを良いと思う人がいなければこの世に存在しないも同然なのだ。
人から徹底的に評価され、ひどいと評価すらされない。肯定されないのも辛いが、否定すらされないのはもっと辛いだろう。誰も見ていないということなのだから。

【少年メリケンサック】で宮崎あおいが演じる主人公・カンナの彼氏・マー君(勝地涼)は、当たり障りのない本当につまらない歌を歌う、人間的にも平凡でつまらない奴だ。「そんなんだからやってる音楽も無臭なんだよ」という佐藤浩一のセリフが、グサッとくる。

何故か人目を引く、面白いことをする人間は、めちゃくちゃ頭の良い人か、何が面白いかを真剣に考えつつづける真面目な人か、人と違った発想をする変わり者なのだろう。
私の以前の職場に、そういう変わり者の人間がいた。
ある分野に関しては天才と呼ばれているのに、その奇抜な発想ゆえにとんでもない金の遣い方をしたり、仕事で普通ならあり得ないような失敗をするのだ。天才的な部分を除いたら人間のクズのような人だった。
でもきっと、だからこそ面白いものを作ることができるのだ。

人と違った発想をするわけでもなく頭が良いわけでもない平凡な人間は、思考しなければならない。しかし、考えがまとまらないからって手を休めてはいけない。頭が良くないなら思いついたものを片っ端から試さなきゃいけない。試して結果が出てから、結果の原因を考えるのだ。

反響の得られないものに対して人は、一体いつまでそんな地味で終わりの見えない作業を続けられるのだろうか。

いつか彼も絶望してしまう時がくるんじゃないかと、不安になる。

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