急性冠症候群(ACS)の早期診断と対応 ~STEMIの緊急性~
こんにちは!
みんほすFanのまっつです。「みんほす」は全国の医学生~初期/後期研修医の先生達、コメディカルに向けて「当たり前のことが当たり前にできる」医療者になるために「楽しく、わかりやすく、明日からの臨床に活かせる」勉強会を行っています。
勉強会の内容やみんほすが作った本の内容から役に立つようなまとめなどをまっつがFanとしてみなさんにお届けしています。
一部は大人の事情で有料のものも作る予定ですが、基本的に無料でお届けしていきます。
STEMIの対応 ~症例で学ぶ~
症例提示
55歳男性が救急外来に到着。1時間前に左胸部痛を自覚し、次第に悪化。汗を大量にかき、息苦しさを訴えたため家族が救急車を呼びました。既往歴は高血圧と糖尿病。喫煙歴が20年(1日1箱)。バイタルサインは以下の通り:
血圧:180/100 mmHg
脈拍:110回/分(整)
呼吸数:22回/分
SpO₂:94%(室内気)
1. STEMIの特徴と早期対応の重要性
STEMIの診断
心電図でST上昇を確認
この症例では、II、III、aVF誘導でST上昇を認めました。
ST上昇の定義:連続する誘導でJ点の上昇が1mm以上(V2, V3誘導では性別・年齢で基準が異なる)。
心筋バイオマーカーの上昇
救急外来到着時の高感度トロポニンI:0.1ng/mL(明らかな上昇)。
典型的な症状
持続する胸痛、発汗、息切れが特徴的。
2. STEMIの初期対応
10分以内に行うべきこと
救急外来における初期対応フロー:
心電図の記録
STEMIと診断された場合、早期再灌流を最優先。
FMC-to-Device(ファーストメディカルコンタクトからデバイス治療まで)の時間を90分以内に短縮する必要があります。
薬物療法の開始
アスピリン:162~325 mgを噛み砕いて内服(早期作用)。
硝酸薬:舌下投与(禁忌がなければ)。
モルヒネ:強い痛みがあり、血圧低下がない場合に少量投与。
酸素投与:SpO₂ < 90%のときのみ。
循環器内科への早急な連絡
STEMI診断後、すぐに循環器専門医に連絡。
※重要なのは採血結果を待たないで連絡すること!
3. STEMI管理のポイント
再灌流治療
冠動脈が完全閉塞しているSTEMIでは、**PCI(経皮的冠動脈インターベンション)**による早期再灌流が重要です。
再灌流療法の目標:
症状発現から120分以内に治療を完了する。
時間が制限される場合、血栓溶解療法を考慮する。
薬物療法の役割
アスピリンやP2Y12阻害薬(クロピドグレル、プラスグレル)の早期投与により血栓形成を抑制。※P2Y12阻害薬は循環器に相談してから投与。
硝酸薬は降圧作用で予後改善効果、死亡率減少はしない。症状緩和効果に期待
※重症AS, HOCM, 右室梗塞, PDE5阻害薬で禁忌
モルヒネは鎮痛により心負荷軽減するが血圧低下に注意
4. STEMIの症例のその後
症例の経過
この55歳男性は、心電図でSTEMIの診断が確定後、速やかに循環器専門医が対応しました。到着後30分でカテーテル治療が開始され、右冠動脈の完全閉塞が確認されました。ステントを留置し、冠動脈血流が再開されました。
術後の経過は良好で、退院時には二次予防として以下の治療を開始しました:
アスピリン(100㎎)およびプラスグレルの投与。
β遮断薬
RAS系阻害薬
スタチン
STEMI対応での重要点!
時間との勝負
STEMIは「時間が心筋壊死の量」を決定します。初期対応と再灌流までの迅速な流れを徹底しましょう。
心電図の読み取り
10分以内に心電図を記録し、ST上昇を見逃さないことが重要です。
多職種の連携
救急外来でのリーダーシップを発揮し、役割分担を明確にしてスムーズな流れを作ることが大切です。
いかがでしたか?明日のみなさんの診療の役に立てることを願っています。みんほすでは通年を通して勉強会を開催しており、より具体的な内容やエビデンスなどもわかりやすくお届けしています。勉強会に参加したい方はX(永井友基@みんほす!)をフォローするか、勉強会のライングループ(こちら)に登録をお願いします。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?