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黴の話

タイトルの漢字読める人いますか?
「初めましてなんですけどぉ〜、おもしろーい初耳ィ⭐︎」
すみません。分からないものに直面すると普段は心の奥底にしまってあるギャルマインドが解き放たれてしまう私です
「何それ〜、えーすごーいかっこいい〜」
てな具合です

てか読める人は漢字マニアか有名大学出のエリートかツタンカーメンくらいでしょう。

正解はカビです。
別にクイズやってる訳ではないので何卒

私は漢字がとても苦手だ
読むのはなんとかなるんですが、
とにかく書けない
小学生から漢字のテストはほぼ0点
それでも生きてきて困ったことはほぼ皆無
どうせ携帯持ってるし
まあそんな事はどうでもいいんですけどね

東京に上京したての専門学生のころ葬儀屋でバイトしてた時の話なんですが、
葬儀屋って言っても葬儀系の派遣みたいな感じでなんでもやるんです
花屋に配属の日は祭壇を組んだり軽トラで配達に行ったり
寺の配属の日はクソ暑い中駐車場の警備をしたり
テント屋に配属の日はクソ重いテントを何十個も設置したり
あとはお焼香の案内係やお通夜の受付とか色んな事をやるバイトだった
個人的には結構楽しかったしとにかく時給が良くて3、4時間行くだけで7000円くらいもらえたし学生にとっては最高ー!!って感じ。

仕事内容は日によって違い超重労働な仕事から告別式に係員として行って何にもやる事がなくずっとタバコを吸いながらスマホゲームやってる日もあったりとギャンブル要素が強めだった。
もちろんチョー楽な方がいい。
そのバイトは指名制度もあって
配属先の会社さんから気に入ってもらえたら次から指名してもらえて時給も上がるんですよ
指名料ってやつですね
ホストとかキャバクラとかよくわからないけど少しだけイケメンになった気分だ
かと言って城咲仁並みにイケイケどんどんで働いてやる気はないので当然タバコを吸いながらスマホゲームをやってる場所がいいと思った。
でその現場でめっちゃ媚を売る事にした。

よく人は媚ばっか売ってるやつに嫌悪感を抱くだろう
売る側に悟られなければ勝ちなのでその駆け引きの面白さはホストのそれである
知らんけど。
まあ売るものがあるっていうのはとてもいい事だと思っているので、私は目的の為であれば喜んで魂も売る。
魂レボリューションなのだ
イメージしたらばアクション
そう、それがit’s my rule

といっても専門学生の若いにーちゃんがやるようなバイトでは無かったので「珍しいなお前、専門学生?あー上京して頑張ってんだな。次もうちこいよ」ってな具合で小日向文世さん似のおじさんによく指名を頂いた。
ハッピーハッピーハーピー
金井さん(配属先の会社のシャッチョさん)
あの時は本当にありがとうございました。
おかげで拾った栗とか食べずにすみました。
東京に栗とか落ちてねえか

それでも楽な仕事ばかりってわけではなく葬儀に携わるお仕事なので悲しい事もたくさんあります

どこかの会社の社長さんが自殺をしてしまったお葬式で、社員のみんなが「なんでだよぉ、早すぎるよ」ってご遺体に泣き崩れる、なんて事もありました
こうやって慕われている方でも色んな人生があるのだろう。
私が死ぬ時どれくらいの人が泣いてくれるんだろうか
もっと頑張っていい人間になろう。
栗拾ってる場合ではない

おくりびとのサポートをした事もありますし
ご遺体に直接触れる仕事もあった。

ご遺体は亡くなられてから冷蔵庫的なところに入っていて「今日は誰々さん棺桶に入れて霊柩車に乗せる作業やるから
チャチャっとやっちまおうぜ⭐︎
そしたら出前頼もうぜ」
なんて軽いノリで仕事をする
「あーご遺体大きいなぁ、これじゃ入んねーよ
XL持ってきて」
いやアパレルかい!!ってツッコんだこともありました。
意外に和気藹々と仕事する方がほとんどで
みんなで出前を食べながら「なんでそんなテンションで働いてんすか?」と聞いた時、「こういう悲しい仕事ばかりしてると気が滅入るだろ?だから楽しく幸せに働かなきゃなんねぇのさ」ってラーメン食いながら教えてくれたおじさんがいた
本当の言い方はこうだ
「こういう(ズズーーー)ハナヒイヒゴホハカリ(ウップ)ヒヘフトヒガヘヒフハホ?(クチャクチャ、ゴクッ)だから楽しく幸せに働かなきゃなんねぇのさ」
私は「あんた食いながら喋んなよきったねぇな」と思いながら
その時はなんだかなぁ〜って感じに思ってました。
今作家として誰かを楽しませる立場になった時「なるほどこういう事だったのね」となる事が多い
葬儀は楽しませる仕事では無いが、故人を惜しむという人生の一大イベントである
それを全力でサポートするのが葬儀に携わるお仕事なのだ

作家は一見華やかそうだけど基本地味な仕事の連続でしかも個人プレー、納期が次から次へとやってくる仕事
まじで病む。
あの時のあの言葉、まじで沁みる
京都で飲んだ一保堂くらい沁みる。
傷口に入る海水くらい滲みる。
ラーメンニキあざす

葬儀の仕事はもちろんどの現場でもスーツ
喪服というべきか
会社から支給された紺色のスーツは
ご遺族、参列者とスタッフの見分けがつくようになっている
なのでもしお葬式などで紺色のスーツがいたらそれはスタッフである
(違う場合もあるのでオナシャス)
専門を卒業するまで働いたので割とボロかったがなんとなく愛着が湧いていたので捨てれずにいた。
専門を卒業してフランスへ留学
(フランス編はまたいつか)
帰国後は特に次を決めてなかったので少し実家でだらけようと思ったが学生時代掛け持ちで働いていたカフェから「新店舗出すからとりあえず入って」と連絡がありすぐ上京する事にした
上京するにあたり帰国後の荷物と実家に置いていた荷物の仕分け作業
久しぶりにあのスーツがでてきた
「うぉー、忘れてたぜ、元気だったかい?」
などと声をかけながら広げると
左肩だけびっしりと黴が生えていたのだ
黴ッ!!!
この漢字読める人いますか?
読めない人は最初から出直しなさい。
さもなくばツタンカーメンになりますよっと。

黴の生えたスーツを見て咄嗟に「キモォ!!」などと声が出たがよくよく考えてみるとこのスーツ
葬儀の仕事の時のやつやん、あれれ?となり
私は霊感とかないしおばけ的なのも全く信じていないがこの時はさすがに恐ろしい気持ちになった
全体がカビてたら別にいいんよ
よくは無いけどいいんよ
左肩だけってなんやねん
超⭐︎絶⭐︎恐⭐︎怖
でも誰かの最後を見届ける素晴らしい仕事で呪われるワッキャねぇっしょ
そしたらラーメンニキは絶対呪われてるやんけ!!などと思いおもいっきり洗濯をしてそいつと共に上京した。

東京の街のスピードについていくのがやっとで
数年の時が経ったころ
クローゼットの奥にそのスーツを見つけた。
「懐かしーラーメンニキ元気かなぁ」などとヘラヘラしながら広げたスーツは
またしても左肩だけびっしり黴
「チョーキモいんですけど。」
その時はもうなんというか2度目なのでダルぅっていう気持ちのみで恐怖はなかった。
愛着とか皆無
2秒で捨てた。
スーツの左肩に乗り移った霊には申し訳ないが
伝えたい事は黴じゃなくて日本語でお願いします。まじで。
ちなみにずっとあってた金縛りもなくなった
これからは定期的にお祓いにでも行こう
そして楽しく働こう。
天津甘栗うんメェ!!!

そう思った話。

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