小学館一世一代の後悔「おたんこナース」問題を考える
芦原妃名子先生が亡くなられた事件について、ゆくよは、いまだにいろいろ考えてしまいます。
今回、悲劇の原因は日テレと小学館が、芦原妃名子先生が映像化に際して出した条件を、うやむやに出来ると思ってしまったことではないかと思うのです。
日テレにも、そして小学館にも問題はあったのだと思います。
しかし日テレはともかく、小学館はなぜ自社が抱える作家を大切にしないような行動を取ったのか?
それを考える時、どうしても思い出してしまうのが「おたんこナース」&「ナースのお仕事」事件です。
「おたんこナース」とは、1995年より小学館の「ビッグコミックスピリッツ」に連載された、佐々木倫子さんの医療マンガ。
そして「ナースのお仕事」は、観月ありささん主演で1996年から始まったフジテレビの大ヒットドラマです。
実はこの、「ナースのお仕事」は、「おたんこナース」のドラマ化を佐々木先生に断られたフジテレビが、オリジナル脚本で製作したドラマと言われています。
内容自体が明らかなパクリというわけではないのですが、「おっちょこちょいのナースが繰り広げる医療コメディ」という設定は同じです。
この「ナースのお仕事」が映画化もされ、シーズン4まで続くロングヒットドラマになりました。
正直、この時小学館の上層部は「こんなことならせめてタイトルだけでも貸しておけばよかった!!!」と悔やんだに違いありません。
そうすれば確かに漫画本はもっと売れ、「おたんこナース」が四年で終了してしまうこともなかったかも。。。
営利企業として「二度と同じ過ちを踏むものか!」と思っても仕方がない部分はあります。
それゆえ、それ以降は「なるべく映像化には協力する」「内容が変わっていても、タイトルが売れれば漫画だってもっと売れるし、結果的には漫画家の利益にもなる」という方針になったのではないでしょうか。
ただ、ここで特筆しておきたいのは、当時の女性漫画家は、基本的にアニメ化、映像化を許諾しないのが普通、という時代背景があったことです。
佐々木倫子さんはもともと、白泉社の少女漫画雑誌「花とゆめ」で「動物のお医者さん」を連載し、大ヒットさせた漫画家さんでした。
その後、当時の女性漫画家にとって「さらなる出世」と言われていた青年誌への移籍となったのです。
とは言え、やはり女性漫画家は、女性漫画家。
それまで起きていた、少女漫画の映像化された作品の悲惨さ(「はいからさんが通る」「愛してナイト」「伊賀のカバ丸」「ヤヌスの鏡」など)を知っているからこそ、映像化は断るのが当たり前だったと思います。
昭和のおっさん映像制作者に、少女漫画家の繊細な絵や感性を理解することは、とうていムリだったのです。
それゆえ、当然のごとく断ったら、それが「設定だけパクられ、オリジナルの大ヒット作を作られてしまった」という結果になってしまった。
だからこそ小学館は、それ以降ドラマ化に対して、強く出るようになったのではないでしょうか。
しかし今回は、そんな利益追求によって、一人の作家が命を落とす事件になってしまいました。。。
とりあえず小学館が「編集部はちゃんと芦原先生のご意向を伝えた」と声明を出した以上、日テレもことの経緯をきっちり明確にして、ご遺族への補償を小学館とともにちゃんとすることが重要だと思います。