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映画備忘録:『13日の金曜日』シリーズ

【記事について】

・13日の金曜日に『13日の金曜日』シリーズをレビューしていく記事。13日の金曜日に更新。

『13日の金曜日』(Friday the 13th, 1980)


【概要】
・監督はショーン・S・カニンガム(Sean S. Cunningham, 1941-)。それ以前のキャリアとして、カニンガムは『鮮血の美学』(1972)の制作に参加している。この映画の監督は後に『エルム街の悪夢』(1984)を撮るウェス・クレイヴン(Wesley Earl Craven, 1939-2015)であり、スラッシャー映画関係者の「類は友を呼ぶ」ような縁には少し驚かされる。『鮮血の美学』については後日(ベースになったとされる)『処女の泉』と合わせて見ることにする。
・スラッシャー映画黄金期(1970-80年代)の代表作の一つであり、映画史に残る殺人鬼ジェイソンのルーツになった映画。ただし、本作の犯人はジェイソンの母親であり、ジェイソンは子供として死んだ設定になっているため、いわゆる殺人鬼ジェイソンは登場しない。ジェイソンが見たいという人はがっかりするかもしれないが、次作を理解するための必修科目なのでジェイソンが見たいならこれも見ておいた方がいい。
【殺人者のプロフィール】
・殺人者は二重人格の母親パメラ。キャンプ場スタッフの不注意で息子ジェイソンが溺死し、その復讐のためにキャンプ場で殺人とさまざまな営業妨害を行っていた。救いと復讐を求める息子の人格に支配されている様子。
【感想】
・グループを殺害するスラッシャー要素、肉体の損壊を見せつけるスプラッター要素、若者たちのセクシー要素などに頼りがちで、刺激に訴える向きがある。ただ、殺人者の個性の強さや殺人の手法の凄まじさはなく、割と素朴に事件が進むのでそこまでインパクトを感じない。この辺りは元料理人の一般人という犯人像と整合性を取っているようにも見えるが、別にリアリティを追求したいわけでもないようで、パメラが常人離れしたスキル(アーチェリーの使用や死体の投げ込み)を見せたり、アリスがマチェットでパメラの首を飛ばしたりと後半はスペクタクルなノリになっている。
【気に入った場面】
・弓矢で女子をビビらせる場面。非常識すぎて笑ってしまう上に、その弓矢スキルが活かされる場面はない。
・カップルがいちゃついてる二段ベッドの上の段に死体が置いてある場面。これはなかなかスリリングな絵面でよかった。

『13日の金曜日 PART 2』(Friday the 13th Part 2, 1981)

【概要】
・おすすめ。
・監督はスティーヴ・マイナー(Steve Miner, 1951-)。『13日の金曜日』や『鮮血の美学』で制作を補佐していた人物であり、今作から監督に抜擢された。前作のヒットを受けて僅か1年で制作・公開された。前作の監督のカニンガムは1982年公開の『誰かが見ている』の撮影に移っていたのかもしれないが、その辺りの事情はよくわからない。
・前作の生き残りアリスは冒頭10分で殺害される。その背景には、前作のヒット以降、アリスを演じたエイドリアン・キング(Adrienne King, 1960-)は熱狂的なファンにストーカーや家宅侵入の被害に遭うようになったという事情がある。キングに配慮する形でアリスは早々に命を落とし、キング本人はこれをもって俳優業を引退、声優に活動の場を移した。
【殺人者のプロフィール】
・前作で泳げずに死んだとされていたジェイソンは実は生存しており、大人になっている、という設定が加えられた。(上述の通り)ジェイソンは前作の生き残りのアリスを冒頭で殺害し、前作の舞台となったキャンプ場周辺で人が来るの待ち構えていた。
・片目にのぞき穴を開けたずた袋をかぶっている。シャツとズボンと革靴というスタイル。森で暮らしていた小屋もデザインされており、奥の部屋には前作で首を落とされた母親パメラの生首が安置されている。本作終盤で異形の顔面を隠していたことが明かされる。
【感想】
・前作より見せ方が上手く、かなり面白くなっている。スラッシャー映画としては、スプラッター要素が薄くなり、殺人鬼ホラー寄りになった作品。「ジェイソンは実は生きていて」という設定が無理のある後付けのようで不安に思っていたが、『13日の金曜日』=ジェイソンというイメージを確立するだけのクオリティがあって良い意味で裏切られた。
・冒頭から殺人シーン続きだが、傷口を露骨に見せつけるようなタイプの流血要素は少なくなっている。また、前作よりも殺人犯の映し方が上手く、アイスピックやピアノ線に始まり、前作で使われた矢やナイフよりも洗練されたさまざまな道具が登場する。
・裸を見せる場面や男女の絡みが多いのは前作譲り。ただし、今作の青年たちは確かに羽目は外しているが前作より知能指数が高くなっている印象を受ける。
【気に入った場面】
・オープニングタイトルで「FRIDAY THE 13TH」が爆破されて「PART2」が表示される場面。謎のB級感に「え、そういうノリなの!?」と不安になったけれど、ちゃんと撮られていてよかった。
扉を押さえながら窓へ手を伸ばしていたらジェイソンが先回りしてくるシーン。間の置き方といい、短いながら名場面だと思う
・ラストシーン。ドアのノックから結末まで。百聞は一見に如かずなので見てほしい

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