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「東京観光日誌」#22|新宿|SOMPO美術館

2月24日(木)晴れ。
今日は東新宿で健康診断を受けて、午後は休みを取ることにしている。せっかく新宿に来たのだ、取材しておきたいところがある。目的地は「SOMPO美術館」。

・ 「すずや新宿本店」貸切る

明治通りから靖国通りに入り、しばらく歩いて行くと歌舞伎町の前を通るので、ここでランチにしようと思っていた。健診だったため朝食は抜いていたから程よい空腹感がある。前もって行きたいところをチェックしておいたので迷わずに「すずや 新宿本店」(写真下)に入ることにした。ここはとんかつ専門店である。

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1954年創業のお店で、“まかない”から生まれた「とんかつ茶漬け」が看板メニューになっている。棟方志功や柳宗悦など民藝運動の著名人にも愛されたメニューということなので、ぜひ一度いただいてみたいと思っていた。

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SUZUYAビルに入ってエレベータで5階へ上がってみると・・あれ? 静かな雰囲気。12時を回ったところだったので入れるかどうか心配だったが・・どうやら貸し切りに近い状態だ。今日は多分ラッキーかも。
「お好きなところへどうぞ」との案内で窓際近くの席に座ることにした(写真下)。先客は向かいに若い女性一人だけ。

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棟方志功の作品がカバーになったメニュー(写真上)を開けようと思ったところ、店員さんがお水を持って来た。
「とんかつ茶漬けをお願いします」とメニューの1頁目にあることを確認して即注文する。

しばらくすると先客が去り、広い個室(?)が出来上がってしまった。こんな歌舞伎町一番街で何だか贅沢な話だ・・そして注文の品が運ばれた(写真下)。

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食べ方の説明を聞く必要はなかった。メニューにはしっかり書かれてあるし予習もしてある(写真下)。

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棟方志功風の漫画がおかしい。まさか棟方志功が描いたわけではないだろうと思うが・・この方法で食べてみよう。
まずはしじみのお味噌汁を検査で疲れた胃に流し込む。次にくたくたになったキャベツをご飯に乗せて一緒にいただく。とんかつにキャベツを乗せるというのはさすがに“まかない”っぽいが、全然いける。
そして、とんかつ。サクッと揚がったとんかつは注文時に選んだソース(定番醤油味)の味になっていて、それがキャベツと絡まりあって、えも言えぬテイストに仕上がっていた。
「なるほど、これは美味い!」
メニューには「ご飯、お味噌汁、キャベツ、お漬物はお替りいただけます」と書かれてあり、私はこの後もあるので控えないといけないが、食べられる人にとってはご飯なら何杯でもいけそうな味付けである。

とんかつを3切れ程度残して、私専属の店員さんに合図を送る。
すぐに柳先生が選んだ風の急須(写真下:右)と醤油味のたれ入れ(写真下:左)が運ばれて来た。たれはお茶だけで薄く感じましたらどうぞ、ということだ。

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とんかつを初めからトッピングしてしまうと油が多めに混ざってしまいそうだったので、キャベツだけご飯に乗せてお茶をかけ、とんかつを齧りながらいただいた(写真上)。
「合うな~これは癖になりそうだ」
お茶をぎ足し注ぎ足し、お新香もいただきながら元祖“味変”を楽しんで完食。税込1580円。クレジットカード払い。ここでもメルペイは使えない。

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・ SOMPO美術館と戦場

お店を出て「西武新宿駅」(写真上)の前を通り、そこから5分ぐらいのところに「SOMPO美術館」(写真下)があった。

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エントランスの方から見た本館(写真上)は、どことなくゾウさんのようにも見えなくもない。

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ここの美術館・・ゴッホの「ひまわり」が代名詞だもんな(写真上)。常設されているということなので、それも楽しみ。
本日は本館と読売新聞主催の公募コンクール「FACE展2022」の受賞作を観に来た。今回で10回目を迎えるというこの展覧会、きっとヤングパワーを感じるに違いない。
それともう一つ・・そろそろ来るだろう。ここに陣を張るのだ。

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エントランス(写真上)に入るとすぐに警備員さんからご挨拶をいただき、ロッカーの案内を受けた。先日行ったアーティゾン美術館と同様、ここもコイン入れなしの無料ロッカーだった。今はこれが主流になりつつあるのかな・・便利でいい。

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同じフロアのチケット売場(写真上)の方へ行き、スマホでQRコードを見せて入場。私はホームページの案内にあったチケットサービスで予め購入しておいた。今回は「アソビュー!」(公式電子チケット)を利用したが、他にも「ローソンチケット」や「e+(イープラス)」「チケットぴあ」といったところからも購入できるようになっている。

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「本展は出品作品の撮影が可能です。」と表示されていた(ただし「フラッシュ禁止」「動画撮影禁止」「記念撮影禁止」)。でも、よく見ると貼り紙になっているので、通常は禁止か展示内容によるか・・かも。
あれ? ここも「音声ガイド」が無料で使えるのか(写真下)・・やってみよう。

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ここは「Art Sticker」(写真上)というアプリをダウンロードし、それを使用するようになっている。チケット売場の人から「横のエレベータで5階の展示場に上がっていただき、4階3階と降りながら観ていくようになってます」と案内されたので、5階まで昇りながらアプリのダウンロードを試みたが、ネット環境が悪く接続ができなかった。再び戻ってチケット売場の人に尋ねると、館内には無料Wifiがあるという・・それを早く教えてほしかった。しかしそのインフォメーションは何故か1階の隅の方に掲示されていた。困る人がいると思うけど。

再び5階に展示場入口に戻ろうとしたその時・・来た。
すぐにお手洗いへ直行する。
毎年、胃の検査のためバリウムを飲むのだが、検査後に下剤を飲むと私の場合割と早く反応がくるのだ。それもあって健診後は休みを取るようにし、できるだけ早く帰宅するようにしていた。今回は取材を優先にし、安心して入れそうなお手洗いがある場所を選んでおいた。ここは正解だ。
平日だし人も少ない。お手洗いも清潔で各階の近いところにある。一旦用を足せばすぐに鑑賞できる状況となるので無駄がない。
完璧な空間だ・・と狭い個室の中で。🚽

さて、現場に戻り、展示場入口には「オーディエンス賞」投票用紙があって「あなたが一番良いと思う「FACE展」出品作品番号1から83番の内(1点)を記入し投票箱に入れて下さい。」と書かれていた。これはよく観ないといけない。
よし、やっと展示場に入る(写真下)。

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「音声ガイド」をセットし、入って正面に展示されていた本展グランプリ作品の新藤杏子の「Farewell」を鑑賞する。音声ガイドから声が流れてきた。

この作品のタイトル「Farewell」は長い別れという意味があります。これはオウィディウスという詩人の「変身物語」という作品から引用したものです。
ナルキッソスは、湖に映る自身の姿に見とれ続けた挙句、衰弱して死んでしまいます。その際にナルキッソスの「さようなら」という言葉を木霊のエコーが「さよなら」と返すのです。
ある朝、5歳になる息子がまるでナルシストのように鏡をうっとり見ていました。子供が鏡を見るのは自己認識の始まりで、自己と他者を認識するための最初の行為という説があります。
ナルキッソスの物語は悲恋と自己愛の話だと考えていましたが、自分自身を見つめ、一度は絶望し、その後次の段階に進む成長の中にある、精神的な死と、そこからの再生の物語のように感じました。

考えてみれば、昨今、今までの生活や価値観を変えていかなければならない様々なことがたくさんありました。
自己をみつめて、今までの価値観に別れを告げ、新しく思考を変化させて再生していかなければならないことがめまぐるしく起こっているように思えます。
それは、私たち自身がまるで、ナルキッソスのようではないか、と取り留めもなく考えを巡らせたことからこの作品を制作するに至りました。

          引用元:「声でめぐるFACE展2022」音声ガイドより

このように音声ガイドで作者のメッセージを聴くことができる。他に9点の作品に音声ガイドが提供されていた。

5階フロアだけ見渡した限り作品のサイズがどれも大きく力作揃いだ。そんな中でも私が気になった作品だけピックアップしてみよう。

・ 勝手に鑑賞会

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マツシタユキハの「1人で死にたくない」(写真上)。審査員特別賞(野口玲一審査員)。衝撃的なタイトル。よく見ると騒然とした中に秩序を感じる。

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飯島ひかるの「お花ランド」(写真上)。審査員特別賞(大島徹也審査員)。舞台を思わせる空間と彩色が楽しい。

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高橋洋平の「暗い瓦礫と栄光の瓦礫」(写真上)。審査員特別賞(藪前知子審査員)。廃棄され積み上がられた車が希薄だが・・妙に引っ掛かる。

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石神雄介の「星を見た日」(写真上)。優秀賞。親密な情景が時を経て記憶に残っていくんだろうな。

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米蒸千穂の「交差点に雨」(写真上)。入選。湿度感じる空間。どこか物憂い心象風景が淡々と描かれている。

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5階はこんな感じだ・・(写真上)。順路通りに4階へは階段で降りて行く(写真下)。

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つづけて桜井旭の「間の眺め」(写真上)。入選。ドローンで撮った写真から起こしたのか、こういう視点はちょっと現代的。

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倉田和夫の「BREAD・135」(写真上)。入選。パンの存在感がかっちりあって、個人的に一押しの作品。

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石橋暢之の「TOWER」(写真上)。入選。ボールペンで紙に描かれたこの作品、気持ちよく描き切っている。

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おかもとかおりの「叫び奪う夜」(写真上)。入選。アクリルで描いている作品なのだが、背景といいトタンの肌触りといい、タイトルも手伝ってか妙に物々しく何かが起こりそう。

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木俣創志の「降りてくる気配」(写真上)。入選。これもアクリルだが、光がまぶしく描かれている。何か降りてきそうな予感。

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大作の中に小品1点だけ。野片恵理子の「街のリズム」(写真上と下)。入選。この心意気が好き。

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前田大介の「雨だれ」(写真上)。入選。現在の私の状況を物語っているようでつい共感。和のテイストがいい。

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奥谷風香の「田んぼのリズム~稲刈りの季節~」(写真上)。入選。目に優しい今風でセンスの良い作品。

4階はこんな感じ(写真下)。

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ここで取り上げたのは完全に自分の好みの作品だ。こうやって観るのも楽しいという例・・あ、また来た・・再びお手洗い。

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ふ~なかなか大変だ。
では、最後のフロア3階へ降りよう。構造的には3~4階は同じようなスペースになっている。特に3階はシンプルな展示である(写真下)。

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中屋彰二の「白樺」(写真上)。入選。白樺のような画面肌になっていた。アクリルをバターのように塗り手繰たぐったこの作品の質感が面白い。

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佐藤英里子の「天国」(写真上)。入選。死んだらこんな色合いで迎え入れてくれると嬉しいと思った。

まだまだ良い作品があるので、展覧会に来て観てほしい。
しかし、公募展は楽しいと思った。自分も参加したいな~と少し気持ちが動いた。

・ 私の作品、収蔵品コーナーとひまわり

せっかくなので、私の学生の頃の最後の油絵作品を引っ張り出してみよう。「standing painting」(写真下)というタイトル。

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縦長のキャンバスを表と裏両面に張り、等身大の人物数人の正面と背面をキャンバスの正面と背面にリアルに描いた作品。背景は黒。それを立たせて裸電球を床面に配置し、その中を通って観るように仕上げてみた。
写真右側の中央に立っているのが若い頃の私だ。結構面白いと思ったのだが・・あまり受けはしなかったな。

最後に収蔵品コーナーを見て帰ろう。

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東郷青児の「超現実派の散歩」(写真上)。東郷の作品は遺族から約150点の寄贈を受けて本館で収蔵している。
ここの前身は1976年「東郷青児美術館」として開設し、以来いくつか館名を変えつつ、2020年「SOMPO美術館」となった。「SOMPO美術館」まで館名には東郷の名が必ず冠されるくらい縁が深い。

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グランマ・モーゼスの「夏」(写真上)。高齢になってから本格的な絵画制作を始めたことで有名なアメリカの国民的おばーちゃん画家。

さて、ラスボス・・ゴッホの「ひまわり」。ここは別格の取り扱いになっている。

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初めて対面した。1987年約53億円で落札して世界から注目を集めたこの作品。何だか札束がよぎってくる。
現在、“世界で一番高い絵画”をネット調べてみると・・レオナルド・ダ・ヴィンチの「サルバトール・ムンディ」という作品であるらしい。金額にして約4億5千万ドルで2017年に落札された。これを日本円で換算すると・・約520億円ということだ。桁が違う。
印象派で言えば、セザンヌの「カード遊びをする人々」が約2億5000万円で取引され(日本円で約263億円)これが筆頭。
そう見ると、この「ひまわり」は今では適正価格に落ち着いているのかもしれない。きっと、売却したら数倍になるかも。

では、最後にもう一度だけお手洗いに寄って帰ろうか。

🚽

SOMPO美術館
住所:東京都新宿区西新宿1-26-1
[開館時間]10:00~18:00
[休館日]月曜日(祝日・振替休日の場合は開館)/展示期間/年末年始
公式ページ:https://www.sompo-museum.org/

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