フランスの薬局で驚いたことと日仏の医療制度の違い
前回の投稿「胃腸炎でフランスの病院に受診した話」の続きです。
フランスの薬局での薬の受け取り方と日本の薬剤師目線で感じたことを記載していきます。
フランスに渡航された際、この投稿がいざという時に参考になれば嬉しいです。
病院で処方箋をもらったら、薬局に薬をもらいに行くのは日本でも同じだと思います。
日曜日も営業している大型の薬局があったので(フランスで日曜日に営業しているお店はとても珍しいこと)、病院受診後に行ってきました。
まずは薬剤師がいるカウンター前の整理券を取って並びます。自分の番号が呼ばれたらそのブースに行って、処方箋を渡します。ここまではほぼ日本と同じ流れです。
その際フランスの保険証の提示を求められ、持っていない場合は全額支払うので、後で旅行保険会社に請求するための書類が欲しいことを伝えます。
薬剤師がその場で処方箋を確認しながら、後ろの棚から必要な薬を箱ごとピックアップします。まずここが日本と大きく違う点。
日本では患者さんに箱ごと、瓶ごと薬を渡すことは滅多にありません。日本では過剰調剤を防ぐ、飲み間違えを防ぐために必要な日数分を数えて、それぞれの用法ごとに薬袋に入れます。
薬袋(やくたいと読みます)には患者名、薬名、用法用量、日数、医療機関名、薬局名が印刷されています。
逆に言うと、日本の薬局では薬袋や薬の説明書を用意するためにまず処方箋をパソコンに入力する時間が必要となります。(事務さんがやってくれるところが多い)
かつ、日本では二重チェックが基本なので調剤する人、監査する人が必要となります。(小さな個人薬局などでは1人調剤することもありますが)
フランスの薬剤師は1人で全てを担当します。
衝撃的だったのは、用法用量を口頭で説明しながら、薬の箱に手書きで記入していたこと。もちろん薬袋や薬の説明書はなし。
アレルギー歴や別の薬を服用しているかの確認などもありませんでした。(そういえばDr,にも特に聞かれなかった。笑)
担当の薬剤師さんは私のフランス語がイマイチなので、英語で薬の説明をしてくれました。それも私の住む地域では珍しいことで、英語を話せる人はあまりいないので嬉しかったです。
黄色い箱のDolipraneとは、日本で言う「カロナール」と同じ成分です。正直お腹の痛みはほぼ無かったのに、自動的に処方されました。
病院で処方箋をもらった時点でパートナーに「この薬要らないって言おうか?」と相談したところ、「僕が使うかもしれないから貰っておいて」とのことで一応貰いました。(笑)
あと、一錠1000mgって日本に無いんですよね(200,300,500mgのみ)。痛みに対する上限量が1日4000mgなのですが、日本でこの量が処方されるのは癌に伴う痛みや相当辛い慢性疼痛くらいですかね。
私は1回500mgで十分ですが、パートナーは毎回1000mgを飲むそうです。4回飲んだらもう上限量です。さすが欧米量(笑)。
続いて、「整腸剤を処方してもらいたかったが、Dr,に処方してもらえなかった」ことを薬剤師に伝えたところ、良い薬があるよと薬局で購入できる薬を教えてくれました。フランスでは多くの種類の薬代が無料なので、整腸剤などは処方したくないDr,が多いようです。
14日分で1600円程度でした。少し高いけど、3種の混合乳酸菌だし良いか、と思い購入しました。日本のビオスリー錠と同じ感じですね。
支払いが済んだら、普通の紙袋に全ての薬をガサっと入れてくれて終わりです。(一番最初の画像参照)
処方箋を出してからの所要時間はおよそ8分程度。整腸剤の相談などなければ5分で終わっていたでしょう。
今回感じたことは、フランスでは全ての仕事の無駄を省いてシンプルにしているということ。
箱ごと調剤するのも薬袋、薬の説明書を用意しないのもかなり時短になります。かつ、仕事内容がシンプルなので2人で二重チェックする必要が無いと考えられているようです。
それには国の保険制度が大きく関わっていると考えます。
フランスの医療費の多くは国が負担しているので、人件費を少しでも省くため薬剤師の仕事量をコンパクトにしているのかなと思います。
それと同時に薬剤師がハーブの相談に乗ったりすることもあるようなので、日本の薬剤師よりも幅広い業務を行なっている可能性もあります。
日本の保険制度も国が多くを負担していますが、高齢化もあり国の医療費がどんどん膨れ上がっているのも確かです。
国の保険制度について考えると、もう少し日本の薬事法(薬に関する法律)も緩くなり、薬剤師の業務も簡略化されても良いのかな?と思うこともあります。人件費を抑えることにつながるかと。
一方、日本では諸外国と比べると確実に「患者中心」の医療が行われていると思います。患者にとっての利便性、安全性を一番に優先していると私は感じます。
病気になった時、専門医に患者自身が直接アクセス可能なのも日本ならではです。(例えば、紹介状無しで直接皮膚科に受診できたり)
日本の薬局については確認事項、準備することが多いため、待ち時間がどうしても長くなってしまうのは心苦しいですが、実際フランス流で高齢者は薬の飲み方を正しく理解できるのだろうか?と疑問を感じました🤔
また、いくら箱での調剤と言っても二重チェック無しでは調剤時の間違いも多くなりそう…と予想できます。
実際、後日別件で薬局を利用しましたが、2ヶ月処方のところ1ヶ月分のみ調剤されていました。(自分も家に帰ってから気が付きましたが…)結果的に2ヶ月間内服しなくても良くなったのでそのままにしました😅
ちなみにフランスの薬の箱の中には製薬会社作成の説明書が入っているため、薬について細かく知りたい人は帰宅後にじっくり読むことも可能です。
(日本の薬の箱にも添付文書と呼ばれる製薬会社作成の説明書が入っていますが、それは医療従事者向けなので患者さんには渡さないことになっています。)
今回はフランスの医療の仕組みを知り、日本の病院や薬局と比較できる良い機会となりました。
日本とフランス、それぞれ良い点悪い点があり一概にどちらが優れているとは言えませんが、今後も気づいたことを発信していけたらと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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