![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/71460374/rectangle_large_type_2_b614d8d6ef8e825422360aafaa55f57a.png?width=1200)
おかしな朝
いつもと同じ朝。
そのはずだった、いや、実際に普段となんら変わらない朝なのだ。
それなのに、この重くのしかかるような違和感はなんだろう。
一抹の不安を抱えつつ、会社へと向かう準備を始める。
準備の最中も、フルマラソンを完走した翌日のように足が重かった。
当然フルマラソンを走ったことはない。
一種のメタファーである。
そうこうしている内に準備が整ったため、ドアを開け、我が家にしばしの別れを告げる。
何度通ったかわからない駅までの道ではあるが、何故か少し寂しげな雰囲気を纏っているような気がする。
普段なら通勤するサラリーマンや学校へ向かう子どもたちで賑わっているはずなのだが…
閑散とした街の中、世界から取り残されたような気がして急に不安な気持ちになる。
そういえば、私は何故この街で生活しているのだろう?
高校卒業とともに地元を離れ、漠然と上京し、ありきたりな大学生活を終えて就職。
地元に帰るという選択肢もあったのだが、一度都会の便利さを味わってしまうと田舎には戻りにくいものである。
勤めているのは都内から少し離れた郊外、人の量もかなり減ったあたりではあるものの、電車に数十分揺られれば直ぐに街中に出ることができる。
ただ、会社勤めをしていれば自由に使える時間は休日に限られるし、その時間を使って都内に出向くほどの熱量も、もはや残っていない。
だからこそ、こんな風に物悲しい朝はどことない孤独感を感じるのである。
それにしても今日はやけに人が少ないな。
上り電車の朝7時なんて、通勤通学のゴールデンタイム、毎日がイベント会場である。
だが今日、そのイベント会場には普段の半分以下程度の人気しかない。
ふと、駅のホームから見える大型サイネージに目をやると、朝のニュースが放送されていた。
なるほど…
今朝から感じていた違和感がスッと腹落ちするのを感じた。
いや、気づいていたのだ。
認めたくなかっただけで。
サイネージの右上に表示された時刻は『9:35』。
始業時刻は午前9時。
今日私は、遅刻した。
#創作大賞2022 #遅刻 #サラリーマンの日常 #通勤中に書きました