Mabuhay(マブハイ)! 知られざるバスケットボール大国
※この記事は2018年6月21日に別のサイトで掲載した記事を移行したものです。
バスケットボールが盛んな国というと、みなさんはどの国を思い浮かべるだろうか。おそらく大半の人の答えは発祥の地であり、NBAがある「アメリカ」だろう。もちろんこの認識は間違っていないが、実は世界にはアメリカ同様、いやそれ以上にバスケ愛にあふれている国が存在する。それもアジアに。意外と思われる方もいるだろうが、その答えはフィリピンである。筆者の初投稿となる本稿では、個人的に興味があるフィリピンのバスケット事情について、シェアさせていただきたい。
写真:筆者撮影
<圧倒的人気スポーツ>
フィリピンにおいてバスケットはダントツの人気No.1スポーツだ。テレビCMにはNBA選手が起用され、街中を歩けばNBA選手が出ている広告が目につくし、NBAのユニフォームを着て歩く人、ストリートバスケを楽しむ人々が目に入る。都市部であろうが、山奥の田舎であろうが、どこか空いているちょっとしたスペースさえあれば簡易なリングを作り、バスケを始める人たちがいる。そんな不思議な国がフィリピンなのだ。
そのような環境であるから当然、少年たちの憧れの的はバスケット選手である。NBAが大人気なのはもちろん、同国のプロリーグであるPBAもまた人気であり、PBAはNBAに次いで世界で最も古いプロリーグでもある。そして、そのPBA選手を中心に構成されるフィリピン代表チーム「Gilas Philipinas(ギラス・フィリピナス)」の動向は国民の大きな関心を集める。筆者は今年(2018年)2月に行われたFIBAワールドカップアジア予選(日本VSフィリピン)を現地マニラで観戦したが、2万人が収容可能なモール・オブ・アジアアリーナは満員御礼、圧倒的ホーム感と熱気・声援に包まれたアリーナの雰囲気はまさに圧巻だった。
写真:筆者撮影。2018/2/25 モール・オブ・アジアアリーナにて
また、プロだけでなく大学バスケットも非常に人気があり、UAAP、NCAA(米国のNCAAとは異なる)と呼ばれるリーグは毎年大きな注目を集める。とにかくこの国はバスケ、バスケなのだ。よく使われる例えだが、ブラジルにおけるサッカーがフィリピンにおけるバスケといえるだろう。
<人気の要因>
どうしてこの国にこれほどまでにバスケットが根付いたのだろうか。仮説の域を出ないが、次に挙げる3つの要因があると考えている。第1に、同国の歴史だ。フィリピンはかつてアメリカの植民地であった。そのため他のスポーツよりも早期にバスケットが導入され、学校体育の教育システムに組み込まれて浸透していったという経緯がある。これが最も大きな要因と考えられる。第2に、国民の経済的な事情があげられる。バスケットには高額な用具ほぼ必要ないため、経済的に豊かではない人々も気軽に始めやすい。ストリートバスケならばなおさらだ。近年、経済発展が目覚ましくも、1人あたりGDPが3,000ドル程度のフィリピンでは、スポーツにお金をかけられる人はまだ限られる状況だ。そして第3に、場所(スペース)の問題がある。同国では人々が密集して住んでいるため、とりわけ街中では野球やサッカー場のように広いスペースを確保するのが困難である。その点、バスケは街中の狭い空きスペースでも、簡易なゴールさえ作ればプレイ可能なので彼らの居住空間とマッチしているのだ。
※路上にてストリートバスケをしているフィリピン人たち。深夜でもドリブルの音が鳴り響く・・・。
以上が主な要因と考えられるが、さらに1つだけ主観と共に付け加えるならば、フィリピン人の国民性も影響しているように思う。陽気で盛り上がることが大好きなフィリピン人たちは、エンターテイメント性が高く、わかりやすいものを好む傾向にある。この点も親和性があるのだろう。これらの条件下のもとで、同国においてバスケットが爆発的に普及してきたものと考えられる。
<驚愕の数字>
少々前の調査結果にはなるが、Sponsorship Intelligence Reportによると、都市部居住のフィリピン人の約4割が何らかの形でのバスケ経験者、8割がバスケファンだという。これを全体にあてはめるのは乱暴だとは思うものの、フィリピンの人口は約1億人であるから、単純計算では実に8千万人程のバスケファンがいることになる。また、NBAの認識率は99%に上り、さらにNIKEのバスケット製品のマーケットとしても、米国・中国について世界で3番目だという。フィリピンの経済規模を考慮すると驚くべき結果というほかない。インフラ面やビジネス的な観点など、同国のバスケットにもまだまだ改善の余地があるものの、どこに行ってもバスケの話ができ、バスケをやる人がいる。筆者のような幼少期からバスケに親しんできた人間にはとても興味深い国であり、今後も同国のバスケットに注目していきたい。
※なお、タイトルのMabuhayはタガログ語で「万歳」、「乾杯」、「ようこそ」などの意で使われている言葉である。
参考)
http://www.pba.ph/
https://news.nike.com/news/inside-access-basketballs-deep-roots-in-the-philippines
https://www.philstar.com/sports/2016/03/22/1565867/why-filipinos-love-basketball
https://theculturetrip.com/asia/philippines/articles/why-is-the-philippines-obsessed-with-basketball/
https://en.wikipedia.org/wiki/Gilas_Pilipinas_program
http://www.crewtoo.com/crew-life/lifestyle/why-is-basketball-so-popular-in-the-philippines/
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